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  • 2015/06/23 掲載

大和ハウス 加藤恭滋 氏インタビュー:CCPMで効率倍増、独自のオムニチャネル化も

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大和ハウス工業の情報システム部では、現場と一緒に考え、問題を解決するIT組織を目指していたが、開発業務に入った途端、開発者の生産性やサービスレベルが落ちるという課題に直面した。そこで制約理論(TOC:Theory Of Constraints)に基づくプロジェクト管理手法「CCPM(Critical Chain Project Management)」にのっとって開発作業を行うチームを編成した。具体的な開発案件と情報システム部門の組織体制、今後目指すIT投資の方向性について、引き続き、大和ハウス工業 執行役員 情報システム部長の加藤恭滋氏に話を聞いた。
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(聞き手は編集部 松尾慎司)

photo
大和ハウス工業
執行役員 情報システム部長
加藤 恭滋 氏

削減額が、新たな取り組みにチャレンジするための予算

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──IT投資に対する費用対効果については、どのように評価されているのでしょうか。

加藤氏:大和ハウス工業では、まず中期経営計画の中で各事業部門が何をやりたいかが先決で、それを実現するためにITをどう活用するのか、そのためにお金はどれぐらい必要かという流れでIT予算が決まってきます。各事業部がIT予算を持っており、その予算の中で我々情報システム部が仕事をするという形です。

 それに対して、コミュニケーション基盤のような全社共通の仕組みの部分は、我々が予算を持っています。この領域では、システムや利用サービスの切り替え時に予算が増えない範囲内で、よりよいものに置き換えていくというスタンスを採っています。

 そして、今まで1億円かけていた仕組みが7,000万円で再現できたなら、差額の3,000万円が、我々情報システム部門が新たな取り組みにチャレンジする時の予算になるという考え方です。

 ただしこれまでにない取り組み、たとえばワークスタイルの変革などにチャレンジしようとする時には、費用が高くなってきます。その場合には生産性を高める、コストを落とす、売上を上げるといった目的を明確にした上で追加の予算取りを行い、取締役会の決議なり、社長の決済なりを仰ぎます。

 そこでは、定性的な効果だけではなく、定量的な効果を提示するように努めています。さらにセキュリティ対策など、リスクヘッジのための仕組みはなかなか定量化しづらいのですが、そのような場合は定量化できない理由を明確に示して予算を取ります。

 また費用対効果を明らかにする取り組みの一環として、我々はプログラム出荷後、長いもので半年、短くて3か月の稼働期間後に実施報告を行っています。自分たちの実現したかったことが本当に予定通り完結したのかどうかを確認するためのもので、万一完結していないのなら、このプロジェクトをまだ続けるのかどうかまでを判断します。

 なかなか事前に効果を明らかにしにくいといわれるIT投資ですが、見える化するための努力は必要だと思います。

開発者のマルチタスク状態を解消するために、TOCの管理手法を適用

──現在情報システム部門としては、どのような体制を敷かれているのでしょうか。

加藤氏:大和ハウス工業の情報システム部門には約150名のメンバーがいますが、役割としては大きく4つに分かれています。まず1つめが、新しいICTを業務にどう適用するか、あるいは現状をどう改善するかなどを考えて業務部門を支援する部隊、次に現場から依頼された開発案件を効率よく、高品質で作ってリリースしていく部隊、3つめがインフラやセキュリティを一定に担保する部隊、そして最後にCADを使った設計を行ったり、工場の生産のコントロールをしたりするなど、ものづくりの現場を支援する部隊です。

 またメディアテックという情報システム子会社があり、ここがグループ全体のネットワークやインフラをカバーする業務、PCなど情報端末の管理業務、エンドユーザーのリテラシーを上げるためのヘルプデスク業務などを担当しています。

──情報システム部長としてメンバーや情報システム子会社を統率していく上で、どのような点に留意されていますか。

加藤氏:私が情報システム部長に就任した2010年4月当時、情報システム部は社内から、何か頼んでもなかなかやってくれないし、何をやっているか分からない、その割に人はたくさんいるね、という見方をされていました。

 また社内でさまざまな改革に取り組んでいる中、その改革のスピードと情報システム部のスピードはまったく切り離されて見えました。そこで、まず私が部内に発信したメッセージは、“信頼される情報システム部になろう!”ということです。

 そのために必要となるのは、“現場の人と一緒に物事を考えて、一緒に問題を解決する”ことです。現場の人たちの知見だけでは実現できないことがあっても、我々が現場に出て行って、“ICTを使えば、こんなことまでできるんだ”という驚きを常に提供できるようにしようと考えたのです。

──そうした仕事への取り組み方は、どのように根付かせていったのでしょうか。

加藤氏:現場と一緒に考えて問題を解決すると言っても、特に開発者の人たちは開発業務に入ったら、それが彼らにとっての本業です。当然、開発作業に没頭したい。それがボトルネックになって、なかなか生産性が上がってこないという問題がありました。

 そこで我々は、エリヤフ・ゴールドラット氏の著書『ザ・ゴール』の中で記された制約理論(TOC:Theory Of Constraints)に基づき、CCPM(Critical Chain Project Management)というプロジェクト管理手法を採用しました。このTOCの中に“マルチタスクはやめよう”という考え方があります。

【次ページ】大和ハウスの考える「本当の意味でのオムニチャネル化」とは

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