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  • 2015/06/22 掲載

「役所の会議室文化を打破したい」 豊島区、ワークスタイル変革への挑戦

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5月7日、東京都豊島区は新しい庁舎を南池袋2丁目にオープンさせた。それと呼応する形で今、取り組んでいるのが、職員のワークスタイル変革だ。たとえば同区の職員は、自治体としては珍しく、1人ずつに固定電話が用意されていない。「Microsoft CityNextソリューションフォーラム 2015」に登壇した豊島区役所CISO(政策経営部情報管理課長)の高橋邦夫氏が、豊島区のワークスタイル変革プロジェクトの全貌について語った。

物理的な移転だけでなく、最新技術を駆使してサービス向上

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豊島区の新庁舎
 池袋を中心とし、13平方キロと比較的小規模ながら人口は28万人前後で、人口密度は日本1位となる豊島区。一定の安定基盤を持ちながらも、子育て世代の流出増が絶えず、若い世帯を中心としたまちの成長ビジョンを描きづらいという課題を持っている。

 子育て世代、若い世帯の定住に乏しい、将来の不安材料となるこの課題にどう挑戦するか。豊島区では、物理的な庁舎移転だけでなく、最新技術を駆使したサービスの向上で、区民に積極的に働きかけている。

 今回建設された新庁舎のデザイン監修は、世界的に有名な建築家の隈研吾氏。1階には職員用エントランスや住民用エントランス、2階は商業施設やホール、3階から10階までを庁舎施設とし、11階以上が分譲マンションとする。庁舎部分には地域環境に配慮した吹抜けを利用し建物全体の空気循環を促し、冷暖房費の削減につなげる。住宅部分は、2億円を超える最上階の部屋が即日完売、他の住戸もわずか2日で予約完了となった。

 そんな新庁舎に、他の地方自治体からの視察が相次いだ。その理由は建設費の捻出方法。分譲マンション売却資金と、前庁舎跡地を定期借地権で民間企業へ貸し付けたことから、新庁舎建設に伴う区の一般財源からの支出はなく、全国で初めての民間施設を併用する本庁舎プロジェクトを見事成功に導いた。

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「移設プロジェクトが始動した当時、なぜこの財政が厳しい時代に庁舎を新築移転させるのかという区民からの反対批判も相次ぎました。しかし、役所にとっては防災システムの強化は必須事項でもあり、安全安心な庁舎を確立し、災害時の情報発信となる拠点とする必要がありました」

 保安管理のために群衆行動解析技術導入し、区内50箇所(区内小中学校屋上、主要な国道交差点、東武西武の屋上)に高所カメラを設置した。

 東日本大震災のとき、池袋駅周辺でも通勤通学の方による帰宅困難者で溢れかえったが、当時は区としての有効な情報収集を行えなかった。その反省を踏まえて、この群衆行動解析カメラをもって市民生活の安全と安定に取り組むことができるようになったと狙いを語る。

「3・11のときは、現地に行くと群衆にのまれて、何も活動が行えなくなる経験をしました。群衆行動解析カメラであれば、プライバシーに配慮しながら、たとえば何か問題が起きて、人が動かなくなった場合には、アラートで知らせてくれるので、迅速な行政対応が可能になります」

 さらに、総合窓口サービスでは、通常業務としての証明書の届け出、申請の受付、証書の交付、税金の納付などを一括受付することはもちろん、新庁舎では総合窓口を土日も行う、345日開場(年末年始、祝日は含まず)を開始し、他の自治体との差異化を図っている。

 福祉では、総合受付フロアに、障害者ゾーン、高齢者ゾーン、子育て支援ゾーンとエリア分けし、専門の職員が入れ替わり対応するワンストップシステムを展開した。

ワークスタイルを一変させた狙いとは

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豊島区役所
CISO(政策経営部情報管理課長)
高橋 邦夫 氏
 今回の庁舎移転プロジェクトは、職員の仕事への意識改革を問われる起点にもなった。高橋氏は「新しい行政業務はどうあるべきかを検討し、最新技術を導入することでワークスタイルを一変させた」という。

 まず、庁舎全体に来客向け無料のWi-Fiスポット(TOSHIMA Free Wi-Fi)を兼ねた無線LAN環境を整備。そのアクセスポイント数は、8エリアに50台にも及ぶ。職員はノートパソコンやタブレットを所持し、どこにいても自在にファイルサーバ、メール、スケジュールにアクセスし、仕事ができるようになった。このモバイルワークで、ペーパーレス対応も活発化し、さまざまな資料は電子情報として共有化し、会議などでも紙面化率は大幅に下がったという。

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モバイルワークを実現
(出典:豊島区)


 またマイクロソフト社のLyncを導入。Lyncでは、在席管理、インスタントメッセージ、IP電話、ウェブ会議などが提供されるが、「職員全体のコミュニケーションスキルが飛躍的に変化した」。

「どこにいても仕事ができ、人とコミュニケーションがとれる環境は、業務における時間短縮や作業手間の無駄を排除し、チャットやウェブ会議の有効性を明らかにしました。それに伴い、全国の自治体では珍しくアナログ固定電話は、災害障害用として各課1台にまで減少させ、モバイルワークの利点をフル活用した体制となりました」

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コミュニケーションの統合
(出典:豊島区)



【次ページ】豊島区の今後の展望

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