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  • 2015/06/24 掲載

ウーバー並みに躍進するダイムラーのカーシェア、トヨタに迫られる大変革

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クルマの存在意義が大きく変わり始めている。自ら購入・所有するという形から、サービスとして利用する「MaaS(Mobility as a Service)」への変革だ。この動きを創り上げたのが「Uber(ウーバー)」や「Zipcar(ジップカー)」だが、BMWやダイムラーといった欧州の大手自動車メーカーもそれを上回る勢いで追随している。中でもダイムラー子会社のmoovel社を通じて手がけるサービス「car2go」の利用者は、100万人にまで急成長を遂げた(Uberは2014年12月末で200万人といわれる)。次世代モビリティのビジネスモデル、そして自動車メーカー各社の取り組み、カーシェア市場の最新動向などを、フロスト&サリバン 自動車・交通運輸部門のモビリティチームを指揮するマーティン・ブリッグス氏が解説する。

フリージャーナリスト 小山 健治

フリージャーナリスト 小山 健治

1961年生まれ。システムエンジニア、編集プロダクションでのディレクターを経て、1994年よりフリーランスのジャーナリスト、コピーライター。企業情報システム、BI、ビッグデータ、IT関連マーケティング、ストレージなどの分野を中心に活動中。著書に、「図解 情報・コンピュータ業界」(東洋経済新報社)、「One to One:インターネット時代の超マーケティング」(IDL)、「CRMからCREへ」(日本能率協会マジメントセンター)などがある。

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car2goはカナダのバンクーバーでもサービスを開始している
(Photo by VIVA Vancouver

“ストーリー”のもとで発展を遂げてきた自動車

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フロスト&サリバンで自動車・交通運輸部門のモビリティチームを指揮するマーティン・ブリッグス氏
 “メガトレンド”のひとつとして注目が集まっているのが、次世代のモビリティ(交通手段)を形成していく新たなビジネスモデルだ。現代のモビリティを「サービス」としてとらえたとき、特に都市部においては慢性的なリソース不足、需要過多の状況が続いている。加えて、そこに顕在化してきたのが、先進国を中心とした高齢化問題である。

 これまでのモビリティは、そのサービスを受ける人が、自ら運転免許を取得し、自動車を購入・所有し、運転するという“ストーリー”のもとで発展を遂げてきた。しかし、高齢化とともに多くの人はこのライフサイクルからリタイヤせざるを得なくなる。

 また、人々のライフスタイルや価値観も大きく変遷しており、自ら自動車を所有したり、ドライブしたりすることに対して、以前ほど大きな渇望は持たなくなっている。日本で叫ばれている「若者のクルマ離れ」はその象徴的な現象だ。

 モビリティサービスそのものを、道路ネットワークや駐車場といった社会インフラの最適化、サービスの供給者と受給者の新たな関係づくりといった観点から、ビジネスモデルを再構築することが必要な時代を迎えていると言える。

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モビリティ市場には今、数多くのプレイヤーがひしめき合っている
(出典:フロスト&サリバン)


 フロスト&サリバンのインダストリープリンシパルとして、自動車・交通運輸部門のモビリティチームを指揮するマーティン・ブリッグス氏が、2025年に向けた産業・ビジネスの未来を提示するカンファレンス「GIL 2015:Japan」に登壇して語った示唆は、「プライベートなビークル(乗り物)から、ドアツードアのモビリティへのパラダイムシフトが起こる」というものである。

MaaS(Mobility as a Service)という新たなビジネスチャンス

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 ブリッグス氏が言う「ドアツードアのモビリティ」の実現を支えるのは、無数の車載センサーを活用したIoTによって自動車を制御する「コネクテッドカー」や「自律走行車(ロボットカー)」といったテクノロジーの進化だ。

 これにより、人間のドライバーが搭乗せずとも高い安全性を確保し、「必要なときに、自分のすぐ近くまで来てくれる」というオンデマンドな自動車利用が可能となる。

 これはカーシェアリングの発展形・進化形として見ることができるし、あるいは新しいタイプのタクシー基盤のアプリケーションとしても見ることができるだろう。

 ブリッグス氏は「そこにMaaS(Mobility as a Service)とも呼ぶべき、新たなサービスのビジネスチャンスが生まれてくる」と説くのである。

 このサービスは自動車の車両本体のみならず、道路や駐車場などのインフラからスマートフォンやウェアラブルデバイスといった端末までをまたいだ、複合的なソリューションとして展開されていく可能性が高いだけに、そこに多くのプロバイダーが参入する余地が生まれるわけだ。

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モビリティの持つ可能性
(出典:フロスト&サリバン)


 ブリッグス氏は、物件を宿泊施設として登録、営業できる民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」を例にとり、「車両を直接保有しないプロバイダーも、何らかのプラットフォームを提供することで、十分に利益を上げられる」と語る。

 自動車業界、公共交通機関、物流、旅行、情報サービス、あるいは自治体といったステークホルダーから、さまざまなビジネスモデルが提示されると予想される。

 ただ、一方でブリッグス氏は、「それらはおそらく、ある一定の方向に収れんしていくことになる。この変革を機に、業界の再編や統合も進んでいくだろう」とも予想する。

 たとえば、道路上の車両から位置(緯度・経度)や走行状態などのデータをリアルタイムで収集し、各地の道路の流れ具合や渋滞状況をセンターで分析。結果を各車にフィードバックするプローブ・カーサービスが世界各国で実用化されている。

 これは、市場でのライバル関係を越えて、さまざまな自動車メーカーやカーナビメーカー、行政機関などのステークホルダーが連携したことによって実現したサービスに他ならない。

 さらに、アップルやグーグルといったITベンダーの間には、その巨大なエコシステムの中に、スマートデバイスと化したコネクテッドカーを組み込み、新たなモビリティサービスのビジネスモデルで覇権を握ろうとする思惑も見え隠れする。

【次ページ】すでに大躍進を遂げた欧州自動車メーカーの一方で…

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