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  • 2015/07/03 掲載

テラモーターズの徳重 徹氏が語る、アジアで戦うためのマインドセット

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今の日本は世界的なベンチャー企業が育ちにくいと言われる。そんな中、次のソニー、ホンダを目指し、製造業のメガベンチャーとなることを目指しているのが、電動バイクを手掛けるテラモーターズだ。2010年に設立して国内トップシェアを獲得、現在、ベトナム、フィリピン、インドに現地法人を構える同社の代表取締役である徳重 徹氏が、「アジア経営者ビジネスサミット2015」に登壇し、「リスクをチャンスに変える」アジア戦略のためのマインドセットや、事業にかける熱い思いを語った。

アジアに進出する日本企業に足りないのは「蛮勇」の精神だ

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テラモーターズ 代表取締役
徳重 徹氏
 かつて世界市場を席巻した日本企業の元気がなくなったと言われて久しい。代わりに台頭してきたのがサムソンやLGやハイアールといったアジア各国の企業だ。アジアにチャレンジする経営者が自らプレゼンテーションする「スペシャルセッション2 アジアへチャレンジ」に登壇したテラモーターズ 代表取締役の徳重 徹氏は、この3年間でのアジア各国の渡航回数が延べ148回にのぼる、文字通りアジア飛び回るベンチャー経営者の一人だ。

 「月に3週間をアジアで、1週間を東京で過ごすという生活を、ここ2年くらい続けている」と語る徳重氏は、アジアの感覚と日本の感覚がどんどん乖離していると感じるという。

「日本に帰ってくると、『これからはアジアだ』『グローバル人材が足りない』などという声が聞かれます。一方で、アジアが経済成長を果たす中、日本は伸び悩んでいる現状があります。それはなぜか。私は『蛮勇』という言葉に集約されるのではないかと思います」(徳重氏)

 「蛮勇」とは、自らの非力を承知の上で、構わず立ち向かう向こう見ずな勇気という意味だが、徳重氏は、アジアに進出していく際に大事なマインドセットは「蛮勇」、すなわちリスクを承知で攻めていく覚悟と行動力だと説く。

「日本のビジネスマンは、成熟市場といういわば『無菌状態』の中で成果を出すことが求められています。これは、ビジネス環境の変化が激しく、リスクの大きいアジアの成長市場で成果を出すこととはまったく別なのです」(徳重氏)

 これが上述したような「感覚の乖離」の正体であり、アジア進出を考える企業は、アジアで戦える人材の育成、ビジネス環境の整備、ビジネスの進め方を考えていく必要がある。徳重氏は、日本のビジネスマンは本質的に優秀であり、「『蛮勇』の精神を持てばアジアの企業に絶対に勝てる」と断言する。

アジアでのビジネスには、経営者が実際に現地に行って感じる「現場感覚」が大事

 テラモーターズは、2010年に設立された電動バイク、電動3輪・電動シニアカーの開発、設計、販売等を手掛けるベンチャー企業だ。国内の電動バイク市場でトップシェアを獲得し、現在、ベトナム、フィリピン、インドに現地法人を設立している。

 徳重氏によれば、ベンチャーにもかかわらず製造業を手掛け、大手のメーカーと競合する事業領域で、かつ設立当初から世界市場にチャレンジするという「ビジネスの常識から考えれば相当クレージーな」取り組みに挑戦した理由は、「スケーラビリティのある市場で戦う」点にある。

「日本ではスクーターはコモディティ化した乗り物です。しかし、アジアの新興国では、モバイル端末と並んでバイクは先端的な商品です。そこに日本企業がクリエイティブでイノベーティブな商品を出すところに価値があります。また、市場の規模の大きさ、一気に横展開できるスケーラビリティにも魅力がありました」(徳重氏)

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2輪車が主体のベトナムの通勤風景。電動バイクの先進的でユニークなフォルムは、ホーチミンでも注目を集めそうだ

 しかし、本格的にアジアでビジネスを進めるようになってから、徳重氏は、協調性や技術力、潤沢な資金といった日本企業の現地での評価の高さを強く感じる一方、意思決定のスピードが遅く、何を考えているか分からないといったマイナス評価を感じることもあるという。

「先日も、インドである企業の重役と商談したのですが、相手には、『お前は一人で来たのか』と驚かれました。彼らのイメージでは、日本企業との商談は、5人も6人もずらずらと現れて、意思決定のスピードが遅く、プロセスも見えないのです」(徳重氏)

 さらに、徳重氏は、ビジネスを進める上で、リサーチも大事だが、経営者が実際に目で見てつかむ「肌感覚」が大事だと訴える。

「バングラデシュに進出を検討したときの話です。ご存じの通り、バングラデシュはアジア最貧国の一つで、電力が不安定な上に雨が多い、電動バイクにはマッチしない国だと言われてきました。しかし、実際に行ってみたら、オート3輪は全部電動で、バングラデシュには電動3輪車が約30万台走っていることが分かったのです。30万台というのは、日本におけるアシスト自転車が約40万台ですから、相当の台数です」(徳重氏)

 訪問の結果、人口が多く、交通基盤が脆弱で、かつガソリン車よりもコストが安いという点から実は電動車が普及していることが分かり、車体の品質やメンテ能力なども勘案して、少々割高でも日本の会社として質の高いメンテナンスを提供すれば、十分ビジネスとして可能性があると判断するに至ったというのだ。

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