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  • 2015/09/02 掲載

アンゾフの成長マトリックスとは何か? 「経営戦略の父」が考案した成長戦略の基本

事例や図解でフレームワーク解説

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「売上が伸びない」「お客さまが自社サービスに飽きはじめている」「事業をどうにかして拡大できないか」――市場の変化に伴い販売戦略を変えることは経営に常に求められることです。求められていることは理解しつつも、次にどこへ進むべきか、その”一歩”をどこに定めるべきかを決断することは非常に難しいものです。そんな時に役立つのが今回紹介するフレームワーク、「アンゾフの成長マトリックス」です。(2017年12月13日一部修正)

起業家教育インストラクター 武村 司

起業家教育インストラクター 武村 司

カウフマン財団認定起業家育成プログラムインストラクター。米国私立大学院にて組織開発学修士(MA in HROD)を取得、サーティフィケート・プログラムにてエグゼクティブ・コーチングを専攻。卒業後日本へ帰国し、人材教育会社に就職。企業向け研修や海外研修の日本向けローカライゼーション業務に携わる。同社退職後、外資系製薬会社でのe-learning業務、非営利団体の組織変革など、組織開発関連業務に幅広く従事する。


アンゾフの成長マトリックスとは
アンゾフの成長マトリックスとは、イゴール・アンゾフ(1918-2002)氏によって提唱された、事業の成長・拡大を図る際に用いられるマトリックスのこと。事業の成長を「製品」と「市場」の2軸におき、その2軸をさらに「既存」と「新規」に分けて表した企業の成長戦略をシンプルに表現しており、「アンゾフのマトリックス」や「製品・市場マトリックス」などとも呼ばれる。
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アンゾフの成長マトリックス
(出典: Ansoff, I. (1957). Strategies for Diversification, Harvard Business Review, Vol. 35 Issue 5, Sep-Oct 1957, pp. 113-124より作成)


マトリックスが示す4つの成長の可能性

連載一覧
 このマトリックスでは、企業が現在と将来に必要になる製品やそのエンゲージメントの領域を表しています。既存製品を今の市場でさらに販売し続けていくべきか、もしくは新しい市場に出るべきかなど、成長戦略の方向性(製品・市場戦略のコンビネーション)を考慮する際に役立ちます。

 このマトリックスを考案したアンゾフは、近代の経営戦略の父と呼ばれており、『競争優位の戦略(Competitive Advantage)』の著者であるマイケル・ポーター氏や『コア・コンピタンス経営(Core Competence)』の著者であるゲイリー・ハメル氏にも影響を与えたとも言われています。

 アンゾフは企業の成長戦略に関する著書をいくつか世に送り出していますが、中でも有名な書籍が1965年に出版された『企業戦略論(corporate strategy)』です。この書籍はハーバード・ビジネス・レビューに掲載された『多角化戦略(Strategies for Diversification)』がもとになっており、アンゾフはこの論文で、企業には基本的に4つの成長の可能性があると述べています。

 今の市場で製品をさらに販売する「市場浸透」、新しい市場で既存の製品を販売する「市場開拓」、新しい製品を開発し、既存の市場で販売する「製品開発」、そして新しい製品・サービスをまったく進出したことのない市場で提供する「多角化」です。

4つの成長
市場浸透既存の市場×既存の製品
市場開拓新規の市場×既存の製品
製品開発既存の市場×新規の製品
多角化新規の市場×新規の製品
(出典:Ansoff, H. I. (1957). Strategies for diversification. Harvard Business Review, 35 (5), pp. 113-124より作成)

 使用される用語に多少表現の差はありますが、この4つの成長の可能性をマトリックスにしたものが、通称「アンゾフの成長マトリックス」と呼ばれており、論文に掲載されていたマトリックスを簡略化した上記図のようなものが現在一般的に広まっています。

 また、「アンゾフの多角化戦略」などの名称で、この4つ目の多角化戦略を中心として本マトリックスが紹介される場合もあります(同論文ではこの4つ目の項目の説明が主となっています)。

世界No.1の収益を誇るレンタカー企業の成長戦略

 では早速、本マトリックスをある企業の事例をもとにひもといていきましょう。その企業とは、日本国内ではまだあまり知られていませんが、レンタカー会社として世界No.1の収益を誇る「エンタープライズ・ホールディングス(以下、エンタープライズ社)」です。エンタープライズUK社の情報をもとに、同社が自社の成長戦略を「市場開発」、「製品開発」と「多角化」において成長した取り組みを紹介します。

市場浸透:既存の市場×既存の製品

 これは既存の市場・製品戦略から離れることなく、既に製品(サービス)を購入している顧客に対して、既存の製品をそのまま販売し、売り上げを拡大するという戦略です。競合他社が増えるにつれて、販売数の拡大も難しくなるため、営業人数の増員や製品の価格改定、広告戦略の実施やロイヤリティーの強い顧客をさらに生み出す仕組みを作ったり、製品サイズの変更、製品のライフサイクル縮小など、販売数を増加させることで現市場での製品販売をより浸透させます。

<エンタープライズ社の場合>
1957年、ジャック・テイーラー氏が米国のセントルイス市でレンタカー会社のエンタープライズ社を起業しました。当初、リース用として保有していた車は7台のみでした。

【次ページ】事例からアンゾフの成長マトリックスを理解する

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