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  • 2015/10/06 掲載

「ハッカソン」が大ブームの理由、企業が活用してイノベーションに結びつけるコツとは

NRIやシャープ、auらが続々と開催

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ここにきて急速に市民権を得ている「ハッカソン(hackathon)」。多様な人材が集まり、さまざまなアイデアを短期間で一気に実現する場になっている。従来は技術者が中心のイベントだったが、プロデューサーやデザイナーなども新たに参加しはじめ、ファッションや音楽まで幅広いジャンルで開催されるようになってきた。このハッカソンの持つパワーを企業が上手く取り入れ、新しいイノベーションを起こしていくためにはどうしたらよいのだろうか。野村総合研究所(NRI)の上野哲志氏が解説する。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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ハッカソンの様子。その場で、プロトタイプまで一気に作り上げてしまう
(Photo:Sebastiaan ter Burg/flickr)

今年の入って「ハッカソン」ブーム到来の理由

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 ハッカソンは、基本的に技術者が中心のイベントだが、最近ではソフトやハードといったモノづくり人材にとどまらず、プロデューサやデザイナーなども幅広く参加し、ファッションや音楽まで、幅広いジャンルで開催されている。上野氏の試算によると、今年に入って国内で58件もハッカソンが開催されており、技術オリエンテッドなものから、子育てなど生活に密着したテーマを設定したものまで、幅広く開催されている状況だ。

「たとえばシャープでは、お掃除ロボット“COCOROBO”の非公開情報を参加者に公開し、新サービスの創出を狙う“CoCreation Jam”を開催することで、成功を収めている。またハッカソンそのものでなく、その検討プロセスに着目し、番組化しているテレビ局もあるぐらいだ。検討の場で繰り広げられる人間ドラマが面白いので映像化しているそうだ」

 一方、海外に目を向けると、グローバルハッカソンの草分け的な存在として、NASAが主催する「International Space App Challenge」というイベントも有名だ。

「これは、NASAやJAXAが提供するオープンデータをベースに、世界をより良くするアプリやグッズを開発するというもの。世界77ヵ国のリージョンで同時運営され、各国でコンペにかけられる。日本チームはまだ最優秀賞は獲得していないが、優秀賞には入っている。日本の草の根エンジニアのレベルは、グローバルでもかなり高いと評判だ」

 実は、NRIも2013年以降、毎年ハッカソンを主催している。同社の場合は、技術的な課題でなく、社会性の高いテーマを持ち込み、課題解決のプロトタイプをつくってもらう形だ。「総務省と共同で、地域振興に利用し、現地のNPOに引き継ぐ形式の社会実装型ハッカソン“まちつむぎ”といった取り組みも行っている」(上野氏)という。

ハッカソンが流行る本当の理由と、日米間での本気度の違い

 では、なぜハッカソンがこうも日本で流行っているのだろうか。上野氏は「ハッカソンには、尊敬すべきGeekな技術者の存在が前提としてある。たとえば“Code for Japan”に代表されるシビテックの関係者が、各地でハッカソンの運営をサポートしている。彼らはヤフーやグーグルから飛び出して起業した方々が多い。企業の優秀な人材と交流し、それが伝搬しているようだ」と分析する。

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日本で開催される主要なハッカソン

 一方、昨今はビッグデータやウェアラブルなど、ITの進化が目覚ましく、デマンド側でも“イノベーション難民”という言葉があるぐらい、新しいアイデアに飢えており、何らかのチャレンジをしたいと考えているようだ。企業側もハッカソンから何か良いヒントを引き出したいという狙いがある。

「ハッカソンにはイノベーションだけでなく、ブランディング、人材発掘/育成といった目的もある。一概にハッカソンといっても目的は多様化しており、その成果によって仕立て方も異なってくるため、企業側もそれを見極めていくことが大切だ」

 これまでもハッカソンに類似するものとして、スタートアップやベンチャーを集めて互いをコネクトする「ネットワーキング」や、すでに完成したモノを競い合う「コンテスト」、アイデアと人を選抜して事業を育成していく「インキュベーション」などがあった。コンテスト形式では、三菱東京UFJ銀行の「Fintech Challenge 2015」も注目を集めた。


「これらに対し、ハッカソンのメリットになる点は、参加者にとってお手軽であること。何ら道具を持ち込まず、手ぶらでも気軽に参加できる。そしてプロセスのなかでアイデアを出し合いながら、新しいモノをつくれる。またハッカソンのなかで、参加者同士が化学反応を起こして、画期的な何かが生まれる可能性もある。そういう意味で、他のイベントと異なった位置づけになる。ただし、出てくるアウトプットについては必ずしも保証されないという点も留意する必要がある」

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イノベーション目的で見たハッカソンの位置づけ

 ちなみに日米ではハッカソンの考えもレベルも違うという。海外のハッカソンは、売り込みの場の要素が強いそうだ。

「シリコンバレーでは、スタートアップの腕ためしの場になっている。受ける側も、よいアイデアがあれば、本当に投資をするつもり。そのため企業家の参加が多い。賞金も高額で、1,000万円を超えるようなケースもある。しかし、結果の批評もかなり辛口だ。これは本気度の裏返しとも言える。起業意識に関する文化やエコシステムの存在が、日米のハッカソンの違いになっている」

 実際に日本では自己研鑽のためにハッカソンに参加する場合が多く、参加後に起業しようということはない。ただし参加の意義は大きく、いろいろな気づきがあるようだ。

「大企業で外部の人々と触れ合える機会がなく、創発的な仕事をしていない技術者にとっては、相当なモチベーションを植え付けられるため、人材育成の場としては最高だろう」

【次ページ】「ハッカソン」のパワーを企業に取り入れる方法とは

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