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  • 2015/11/25 掲載

Fintechで日本を観光立国へ! 地方のモバイル決済事例に学ぶインバウンド対策

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日本に訪れる外国人観光客のインバウンド需要に対応するためにはさまざまな課題がある。そのうちの一つが、モバイル決済の普及だ。Fintechの代表企業とも呼ばれ、モバイル決済サービスを提供しているSquare(以下、スクエア)は、日本の観光業に対してモバイル決済の観点から支援をしている。長野県庁、北海道でホテル経営とスキー場を運営しているキロロアソシエイツ、京都府で茶道体験サービスを提供するカメリアの事例を紹介しよう。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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(写真左から)スクエア 掛谷 悟史氏、経済産業省 津脇 慈子氏、長野県庁 芹沢 隆史氏、キロロアソシエイツ 中野 隆史氏、茶道体験カメリア 森 温子氏

長野県、北海道、京都府におけるインバウンド需要の現状

 今年に入って、日本の外国人観光客が50%近く増えている――。そう語ったのは、TOWN SQUARE TOKYO 2015」のパネルディスカッションでモデレーターを務めたスクエア 掛谷 悟史氏だ。

 この変化がビジネスにどう影響を与えているのか。パネルディスカッションに登壇した長野県庁の芹沢 隆史氏、北海道でホテル経営とスキー場を運営しているキロロアソシエイツ 中野 隆史氏、京都府で茶道体験サービスを提供するカメリア 森 温子氏はそれぞれ次のように語る。

「JRによれば、今夏の長野駅への降車数は全体として13%伸びたといい、外国人の数が増えているようだ。県の統計では、昨年の外国人訪問者数は過去最高の46万人になっている」(芹沢氏)

「まだキロロアソシエイツまでは影響が波及していないが、小樽や札幌ではホテルは満室になっているようだ」(中野氏)

「カメリアでは、昨年3月から1年間で約2500名の外国人の方が体験された。今年はすでに5000名を超えている。お客様の99%は外国人だ。閑散期と呼ばれる期間でも、多くのお客さまが来るようになった。京都もホテル不足になっている」(森氏)

観光立国になるための課題は、語学とネット環境

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 外国人観光客が増える日本だが、こうしたインバウンド需要にどう対応していくべきなのか。モデレーターの掛谷氏は各パネラーにビジネス上の課題について問いかけた。

 森氏の答えは“語学力向上とWi-Fi環境の充実”だ。

「カメリアでは英語上級者を雇っているが、日本をより深く知ってもらうには語学力の底上げが必要だ。通信環境の整備については、Wi-Fiで地図をみたりするときに必要。空港でモバイルWi-Fiを借りる人もいるが、まだ不足だと感じる」(森氏)

 一方で中野氏は、“海外から日本で働きたいという声に対応できない”点を課題に挙げた。

「スキーの外国人インストラクターを揃えたいが、36カ月の実務が必要という縛りがあって、うまくいかない。免税手続きも、まだ時間がかかるので、スピーディに回転しなければならない。たとえ決済が早くできても、手続きでボトルネックになってはダメで、それが課題だと思う」

 一方、国や地方自治体側では観光客を呼び込むための施策はあるのだろうか? 掛谷氏は、芹沢氏と経済産業省 津脇 慈子氏に問うた。

 芹沢氏は「情報の入手にはネットへの接続が重要だが、特に無線LAN環境は地方で課題になっている。日中に体験したことを、宿からSNSで発信したいということもある。雪が珍しい東南アジアの観光客が、仲間に情報を流してくれることで、口コミで観光客を呼び込める。そこで長野県では、約2000もの宿を対象に、Wi-Fi整備の補助を進めている。免税店の支払い関係も、現金がなくても買い物ができるようモバイル決済導入を進めている」と語る。

 津脇氏は「観光庁の調査では、フリーWi-Fiの需要が一番高い。次が情報と決済だ。情報関係では、現状の把握とフリーチケットなどを入手したいという声が多い。決済関係ではキャッシュレス化が遅れているのに、ATMは海外のキャッシュカードに対応していない金融機関が多いという課題もある。まだ先の話になるが、レシートの電子化も検討している」と説明する。

 日本は「おもてなし」というユニークな特徴があるが、決済と情報がネックになっている。そこで経済産業省では、ITとビッグデータという観点からの次のような解決策を検討している。

「例えば、個々の訪日外国人に共通IDを持ってもらい、プラットフォームによってサービス事業者間でシームレスな活用をしてもらうという計画がある。クレジットカードから電子マネーまで、個別に行っていたことを共通プラットフォームで提供し、各種サービスを受けられるようにしたい。サービス事業者は、移動ログも含めたマーケティングなどを受け通り、お客様の心をとらえる先回りのサービスをしていただく。来年度から実証実験も行っていく予定だ」(津脇氏)

【次ページ】長野の小さな村で、ひと冬6500万円のモバイル決済取引

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