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2016年03月22日

臨床検査機器のシスメックス、大躍進の裏に「ICT」と「自動化」あり

医薬品や医療機器の大手メーカーの陰に隠れて見かけは地味だが、日本が世界でもトップの技術力を有し、グローバルな成長性もあるのが「臨床検査機器/試薬/診断薬」の業界である。その国内トップ企業のシスメックスの業績は、直近5年間で売上高が2.0倍、営業利益、最終利益が2.8倍という高成長ぶり。臨床検査機器の測定の正確性、精密性、信頼性を確保する上で、ハードウェアとともにソフトウェアも重要で、同社ではそれをキーテクノロジーの一つに位置づけている。さらに、収益性の高いビジネスモデルを構築する上でも、ICTは非常に大きな役割を果たしている。キーワードは、IT業界と同じく「自動化」だ。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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シスメックスの成長を支えているのはICTだ

※写真はイメージ


臨床検査でも市場性が大きい分野で世界のトップシェア持つ

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 病気になればもちろんのこと、病気にならなくても健康診断や人間ドックの精密検査で受けるのが、血液検査や尿検査のような臨床検査。がんなどの病気が早期発見できることもある。その検体検査用の機器や検査用試薬、診断薬などを製造している国内最大手のメーカーが、シスメックス(本社:神戸市中央区)である。

 1968年、東亜特殊電機(現・TOA)から東亜医用電子として独立。1995年に大証に上場し、1998年、「Sysmex(シスメックス)」のブランド名をそのまま社名とした。

 シスメックスは財務的にはかなりの優良企業で、2015年3月期末には貸借対照表(バランスシート)から長短の借入金がなくなって有利子負債がゼロになった。その時点でのROE(自己資本利益率)は16.95%。自己資本比率は2015年12月末時点で71.6%で、「製造業では理想的」とされる70%を上回っている。

 業績も大きな成長性を示している。会社発表の2016年3月期の業績見通しを5期前の2011年3月期と比較すると、売上高は1246億円から2520億円へ2.0倍、営業利益は182億円から520億円へ2.8倍、当期利益(最終利益)は114億円から330億円へ2.8倍と、大きく伸びている。2016年3月期で16期連続増収、15期連続営業増益、15期連続実質増配は確実な情勢だ。

 2016年3月期を初年度とする3ヵ年の「新・中期経営計画」によると、2年後の2018年3月期の業績目標は、売上高が2016年3月期の19.0%増の3000億円、営業利益が21.1%増の630億円で、ROEの目標は18.0%となっている。

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シスメックスの通期業績の推移(単位:億円)


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(クリックで拡大)

シスメックスの地域別売上シェアと事業別売上シェア(2015年4〜12月期 単位:%)

 売上ベース(2015年4〜12月期)では日本国内の比率が15.3%しかないグローバル企業で、地域別では米州(南北アメリカ)23.5%とEMEA(ヨーロッパ)27.8%を合わせると51.3%と半分以上を占め、中国も26.1%と大きい。

 中国は前年同期比で40.0%も伸びている最大の成長市場で、シスメックスでは人口が多い上に高齢化が急速に進んでいるので、今後、経済成長が鈍化してもそれに影響されることなく医療関連市場の高成長は続くとみている。

 事業分野別の売上比率(2015年4〜12月期)をみると、血球計数検査(ヘマトロジー)と尿検査が最大の主力分野で72.4%を占める。それに次ぐのが血液凝固測定、免疫検査、生化学検査で20.5%。そのうち血球計数検査(ヘマトロジー)と尿検査(尿沈渣)は2位のダナハー(米国)に差をつけて世界トップシェアを占めている。血液凝固測定も、製品の相互供給契約を結んでいるドイツのシーメンスヘルスケアを合わせると世界のトップシェアの位置にある。

 血球計数検査も尿検査も血液凝固測定も、世界中どこの病院に行っても診断のために頻繁に実施されている臨床検査で、市場性は非常に大きい。その市場に対してシスメックスは基本的に、検査機器(ハードウェア、ソフトウェア)とともに検査用の試薬、診断薬も供給している。

 シスメックスは医療機器メーカーであり、診断用医薬品メーカーでもある。昨年は米国で試薬工場の拡張に着手し、今年2月にはエーザイと認知症診断薬の開発について提携を結んだ。

【次ページ】臨床検査の信頼性を支えるソフトウェア技術の力

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