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  • 2016/03/23 掲載

空港民営化のメリットとデメリットは?11空港の取り組みは「地方創生」につながるか

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2016年は「空港民営化元年」となりそうだ。4月から大阪府と兵庫県にある関西、伊丹両空港の運営権が民間の新会社に移るのをはじめ、7月には宮城県の仙台空港が民営化される。さらに、福岡県の福岡空港、香川県の高松空港も民営化へ向けた動きが続いているほか、政府は北海道にある国管理の4空港を一括して民営化したい考えだ。各地の空港を民間の力で地域拠点とするのが狙いだが、地方空港は赤字経営がほとんど。島根県立大総合政策学部の西藤真一准教授(交通政策論)は「民間の創意工夫が地域発展につながるメリットはあるが、今後は収益性に乏しい空港の維持、運営のあり方が課題になる」と指摘する。空港民営化は「地方創生」につながるのか。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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2018年春の民営化を目指している「高松空港」。なぜ民営化が相次ぐのか。

国交省は民間の柔軟な発想に期待

 国土交通省によると、空港民営化の枠組みは2013年施行の「民活空港運営法」に基づくもので、滑走路などの所有権を国に残し、運営権を民間会社に与えるコンセッション方式を取る。

コンセッション方式とは
施設の所有権を移転せず、民間事業者にインフラの事業運営に関する権利を長期間にわたって付与する方式のこと。2011年5月の改正PFI法では「公共施設等運営権」として規定された。
(出典:国土交通省)


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 従来、国管理の空港は着陸料など使用料を国がほぼ一律に決め、滑走路は国、空港ビルは地元自治体出資の第3セクター会社が所有してきた。しかし、民営化後は民間会社がこれらを一体で運営し、着陸料も自由に決める。

 国交省空港経営改革推進室は「空港ビルの物販収入などを使い、着陸料を下げるなどさまざまな工夫が可能になり、就航路線の拡大などが期待できる」と民営化の効果に期待する。施設の初期投資が必要ないことも民間が参入しやすい点だ。

 だが、地方空港の収支状況は決して明るいものではない。国が管理する空港の滑走路など空港本体の事業と空港ビル、駐車場といった関連事業を合わせた2014年度の営業損益で、黒字だったのは新千歳、羽田、小松、広島、松山の5空港だけ。

 外国人観光客の増加による増便で着陸料が伸びたほか、物販も好調だったが、老朽化や耐震対策、滑走路増設に向けた調査の費用がかさみ、福岡、熊本、宮崎、鹿児島の4空港が前年度の黒字から赤字に転落している。

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国内の主な空港の営業損益(2014年度、単位:百万円)
※営業損益は滑走路など空港本体事業と空港ビル、駐車場など関連事業の合計
(出典:国土交通省「空港別収支の試算結果(2014年度)」)




 滑走路と空港ビル、駐車場を一体運営することで重複したコストの削減は可能になる。しかし、国管理の空港で損益分岐点となるといわれる乗降客数は年間250~260万人。西藤准教授は「地域の航空需要が少ない空港で短期間に乗降客を増やすのは困難」とみている。それだけに、国交省は民間の柔軟な発想に期待しているわけだ。

4月に関空、伊丹、7月に仙台が移行

 空港民営化の先陣を切るのは、関西、伊丹の両空港。両空港を管理する新関西国際空港会社とオリックス、仏空港運営大手バンシ・エアポートのグループが2015年末、運営権売却の正式契約を結んだ。オリックス連合の新会社「関西エアポート」は4月から44年間、両空港を運営し、年490億円、計2兆円余りを新関空会社に支払う。

 新関空会社は国が100%出資しているが、海上空港である関空の整備費がかさんで1兆円を超す借金を抱えることから、2012年に伊丹と経営統合した。今回の民営化は巨額の借金解消も念頭に置いている。

 オリックスはホテルや商業施設の運営に関わっているため、関空内の商業サービス見直しを検討している。バンシは世界各国で空港を運営している点を生かし、新路線の開拓や格安航空会社の誘致を図る考えだ。

 仙台空港の運営権を手にしたのは、東急グループと豊田通商、前田建設工業などの企業グループが設立した「仙台国際空港」。7月から管制業務を除く空港全体の運営を始めるが、これに先立ち、2月から空港ビルの運営と物販、航空貨物の取扱業務を進めている。国に22億円を支払い、少なくとも30年間、経営を担う。運営期間は最長で65年まで延長できる。

 仙台国際空港は店舗の増設、格安航空会社用の搭乗施設新設などに総額340億円を投じる方針。東北6県や官民組織の東北観光推進機構と協力し、新たな旅行商品を開発、東北全体に波及効果を広げることも計画している。

 さらに、着陸料の大部分が乗客数で変動する仕組みを国内で初めて採用する。閑散期の着陸料を低く抑え、航空会社の新規路線を呼び込むのが目的だ。個別の金額は現在の中型機ボーイング767の約17.6万円より割安になる方向という。

 24時間化を含む運用時間の延長は格安航空会社誘致の鍵とされる。村井嘉浩宮城県知事は2月の県議会で一般質問に答え「事業者は運用時間の延長を必要としている。地元自治体や住民の理解を得なければならないが、県としてサポートしたい」と意欲を見せた。

【次ページ】なぜ空港民営化が相次いでいるのか

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