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2016年04月05日

日医工、沢井製薬、東和薬品などが採用

オーソライズド・ジェネリック(AG)は、ジェネリック医薬品業界の「救世主」となるか

4月1日の診療報酬改定で、ジェネリック医薬品は医療機関や薬局でその使用をさらに奨励されながら、薬価は再び切り下げられた。厚生労働省はメーカーに対し「仏」と「鬼」の二つの顔を使い分けて「コモディティ化」を進めている。だが、売上が増えても儲からない「利益なき繁忙」を強いられ、苦しみそうなジェネリック医薬品メーカーも手をこまねいているわけではない。日医工、沢井製薬、東和薬品などのジェネリック大手は、海外進出、海外調達、「AG(オーソライズド・ジェネリック)」、垂直統合などあの手この手で、健保行政にしたたかに対抗している。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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健保行政は、医薬品業界に対して仏と鬼の二つの顔を持つ


厚生労働省は「仏の顔」と「鬼の顔」を使い分ける

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 昭和の時代、「コメ、国鉄、健保」は国の「3K赤字」と呼ばれた。今ではコメの食管制度は廃止され、国鉄はJR各社に分割・民営化されたが、健保(健康保険)は生き残っている。

 コメの値段もJR運賃も国が決める「統制価格」ではなくなったが、保険診療の診療報酬は診断や治療や検査や入院のような本体部分も薬代の薬価部分も、事細かく決められる統制価格のまま。

 本体部分は厚生労働大臣の諮問機関の中央社会保険医療協議会(中医協)が「診療報酬点数表」を示して決め、薬価部分は厚生労働省が「薬価基準」を示して決める。どちらも2年に1度、同時に改定されるが、2016年はその改定年で、新年度入りの4月1日から実施された。

 国の統制価格の診療報酬は、医療機関にも医薬品メーカーにも医療機器メーカーにも、その経営にとって大きなインパクトを持っている。過去には、診療報酬や薬価の改定後にあっけなくつぶされたビジネスや企業も、決してまれではない。

 自由診療が基本で「オバマケア」は付加部分にすぎないアメリカと違い、保険診療が基本で自由診療は付加部分にすぎない日本のヘルスケアビジネスの歴史は、「国民の健康に奉仕する」という美名の陰で、絶えず健保行政を握る厚生労働省の顔色をうかがい、その動向に一喜一憂しながら歩んできたと言ってもいい。

 その厚生労働省は「健保財政の健全化」を大義名分に「仏の顔」と「鬼の顔」を巧妙に使い分ける。健康保険料を支払う国民の立場なら頼りになる金庫番かもしれないが、医療機関も含めヘルスケアビジネスを経営する立場では、二つの顔の使い分けで、まるで真綿で首を絞められるようにコントロールされ、ガイドラインで敷かれたレールの上を走らされる。近年、それが如実にあらわれているいい例が、「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」をとりまく状況だろう。

 ジェネリック医薬品メーカーにまず見せた「仏の顔」はカッコ付きの「バラ色の未来」だった。厚生労働省が2013年4月に出した「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」では、医薬品全体の数量シェアに占めるジェネリック医薬品の比率を2018年までに60%とする数値目標が定められ、後に「2016年度末までに60%以上」「2020年度末までに80%以上」と改められた(第7回経済財政諮問会議)。

 ジェネリック医薬品の数量シェアは、アメリカ91%、ドイツ82%、英国73%、フランス62%に対して、日本は40%にすぎなかったから(2010年/日本ジェネリック製薬協会調べ)、見かけ上はシェアが短期間に倍増する急成長市場に見えた。これにまず飛びついたのが、好材料を見つけ出してテーマ化してはもてはやす兜町で、ジェネリック医薬品関連銘柄の株価が急騰した。

殺虫剤や農薬をつくるように医薬品をつくれ

 だが、厚生労働省のこの数値目標は「数量シェア」である点に巧妙な罠が隠れている。「金額シェア」とは書いていないのだ。それどころか、ジェネリック医薬品の利用が順調に進めば2020年に1.3兆円の医療費削減効果が見込めるとも書いている。

 つまり、2020年に現在約10兆円の医療用医薬品市場の80%の8兆円の市場に成長するわけではないのだ。薄利多売で全然儲からない「利益なき繁忙」でも、数さえ出れば数量シェア80%は達成される。だがそんな未来はジェネリック医薬品業界にとって決してバラ色ではなく、むしろ灰色に近い。

 そんな危惧は2014年の診療報酬改定で現実化した。新規薬価収載のジェネリック医薬品の薬価は同種の先発薬の何%程度かという目安を、それまでの70%から60%に切り下げられた。2016年度ではさらに50%まで切り下げられている。

 それでいて、診療報酬改定で医療機関には「後発医薬品使用体制加算」、院内薬局や調剤薬局には「後発医薬品調剤体制加算」の点数を、2014年度に続いて2016年度も増やしている。他にも包括払い方式(DPC)対象病院の評価項目など、ジェネリック奨励策は盛り沢山だ。

 つまり、医療機関や薬局にはインセンティブをつけて「ジェネリック医薬品をどんどん使え、使え」とけしかける一方、ジェネリック医薬品の薬価は切り下げてそのメーカーの利益は抑える。これで「利益なき繁忙」にならないはずがない。厚生労働省は「鬼の顔」を見せたのだ。

 厚生労働省には以前から、ジェネリック医薬品に限らず医薬品の薬価の「適正化」によって「コモディティ化」を促進したいという基本路線がある。コモディティ化とは医薬品を特別扱いせず、言ってみれば殺虫剤や農薬などと同じ「化学品」にする流れ。その政策があからさまに数字に出てきているのが診療報酬で、1998年以来10回あった改定では、本体部分はプラスが7回、マイナスが2回、据え置きが1回だったが、薬価部分は一貫してマイナス改定が続いている。まるで厚生労働省は、製薬業界は健保財政の最大の敵とみなしているかのようだ。

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診療報酬の改定率の推移(2年ごと/単位:%)

(※2014年度には消費増税分を含む)


 だが、研究開発に多額の投資を行う新薬メーカーは、画期的な新薬を開発して製品もライセンスも世界的に売れて、それにより「適正な利益」を確保しながら研究開発にいっそう邁進してもらいたい。そうでなければノーベル賞を狙えるようなトップ人材が日本に育たず、「世界に冠たるハイテク国家ニッポン」の名がすたる。

 健保財政のために世界のトップを目指す創薬を犠牲にしたくない。だから、医薬品のコモディティ化は先発薬よりもジェネリック医薬品のほうにより強く期待され、そのメーカーは「殺虫剤や農薬をつくるように医薬品をつくれ」という役割が担わされているのである。

【次ページ】オーソライズド・ジェネリック(AG)とは?

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