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  • 2016/04/08 掲載

実践企業4社が登壇、「オープンイノベーション」を成功に導くコツとは?(2/2)

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自社が推進してきたビジネスがオープンイノベーションだった

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寺田倉庫株式会社
minikuraグループ
minikuraチーム
サブリーダー
井上 智亜 氏
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日本電気株式会社
事業イノベーション戦略本部
ビジネスモデルイノベーション室
室長
中島 大輔氏
 先の2社とは異なり、寺田倉庫は「より手頃で利用しやすいサービスを作るために取り組んで来たことがオープンイノベーションだった」と井上氏は振り返りました。

 それが同社の「minikura」というサービスです。minikuraは月額保管料250円、預け入れ送料無料の倉庫サービス。最大の特徴は「預けた段ボールの中味が見え、Webで管理できること」。通常の倉庫サービスでは絶対に中を開けることはないのですが、「敢えてその領域に踏み込んだ」ことで生まれたサービスです。そのほかにも衣類であればクリーニングをしたり、思いでのアルバムやフィルムはデータ化したり、またそのままヤフオク!に出品できるという機能を持っています。

 このようなサービスを展開していたところ、外部企業から「独自サービスとしてカスタマイズできないか」という相談をいくつか受けたとのこと。そこでminikuraの機能をAPI化して「minikura API」として解放しました。

 バンダイとの協業で実現したフィギュアを預かるサービス「魂ガレージ」もその実績の一つです。また昨年はエアークローゼットというスタートアップと業務提携し、月額制で何着でも好みに合った服が専用ボックスで届く「airCloset」という新しいサービスも実現させました。

 井上氏は「もちろんリスクはあります。しかし新しい世界を見るには、それをある程度、寛容することもポイントだ」と語りました。

 NECでも、2012年にビジネスイノベーション統括ユニットを設置し、オープンイノベーションや教育、制度へのアプローチも含め、これら全体を「事業創造エコシステム」として俯瞰しながら、事業開発活動の量、質、スピードの強化に向けて取り組んでいるところです。

 2015年度はワークショップや教育の場に5000人規模の社員が参加。「共通の認識が持て、組織の枠を超えた議論がしやすくなった」と中島氏は語ります。また外部連携など、社内外の対話の活性化も進んでいます。とはいえ、現在は「道半ば」。「まずはリファレンスとなる新しい事業を創出すること。そしてこれからも社内の文化を変えるための適切な努力を継続・加速し、技術的な強みを「価値・貢献」として社会やお客様にお届けしていくための活動を強化していきたい」と語りました。

経営トップのコミットと実行に力点を置くことが成功のポイント

 オープンイノベーションを進める上でカギを握るのが経営トップです。各社、どんな社長かという西口氏の問いに対して、寺田倉庫の井上氏は「何事も『良いと思うことなら速くやれ。ダメなら辞めれば良い』ということを常に言ってくれます。また適材適所の人事戦略も積極的に取り組んでいますので、何事も進めやすいです」と回答。

 ソフトバンクの加藤氏は「成果に対する要求が厳しいですが、スケールが大きいことを言ってくれるので頑張れます」、森永製菓の金丸氏は「チャレンジしろと常に言ってくれるのがありがたいです」、NECの中島氏は「繰り返しメッセージを発信し、時には議論の場を自らファシリテートするなど、社内の変革に向けた「本気」が伝わります」と回答。いずれの企業も社長がイノベーションに積極的に取り組んでいました。

 また社風についても質問が及びました。minikuraという画期的なサービスを実現した寺田倉庫も「当初、担当役員は逆風だらけだった」と井上氏は振り返ります。今ではイノベータ企業というイメージが定着しているソフトバンクは、「ボーダフォンを買収し、ホワイトプランを打ち出した頃から、今のようなイノベータ気質が生まれました」と加藤氏。また森永製菓の金丸氏は「新領域創造事業部が見ているMorinaga Acceleratorの事業は『出島』的な扱いとなっており、何か新しいことを始める際でもスピードを持って実施できるのが特徴。これをもっと社内の風土に取り入れていきたい。実際、社内も徐々にイレギュラー案に対する抗体ができ、取り掛かるスピードもあがってきた」と語りました。またNECの中島氏は、ここ1~2年、経営トップが中心となり、関連スタッフと現場が共に取り組んできたことで、「徐々にではあるが着実に意識や文化が変化してきている」と答えました。

 アイデアソンや社内公募制度の効果についても言及。金丸氏は「アイデアソンを実施しても楽しかったねで終わり、最終的に不完全燃焼になる人もいます。だからこそ当社もMorinaga Acceleratorに変えました。企業内企業として社長になるつもりで提案するような仕組みが必要ではないでしょうか」と回答しました。

 加藤氏も「個人的な意見としては、同じ人が複数出したアイデアを通過させるような会議は、事業化する気が無いと思うので、あまり意味が無いと思います。SoftBank Innovation Programは外部との連携が前提です。例えば『美容業界を変えて欲しい』など異業種からの困りごとを解決するようなプログラムは意味があります。minikuraの『魂ガレージ』はすごく面白いオープンイノベーションだと思いました」と語りました。

 それを受けて井上氏は、「minikuraAPIのおかげで、外の企業からお声がかかるようになり、そこで企業にどのような課題があるのか説明してくれるので、世の中が見えるようになりました」と外部と連携することのメリットを訴えました。

 金丸氏も学童保育の施設に同社の菓子を提供するサービスを推進する際、自社だけでは難しく、「外部の専門家を組むことでスムーズに実行できた上、新しい発見もできました」と成果を強調しました。

 最後に西口氏は「オープンイノベーションをかけ声で終わらせないための条件として、4社に共通していたことが2点あります。第一がトップのコミットメント。第二がアイデアよりは実行することに力点を置いているということです。この2点が必須の条件だと感じました」とまとめ、同イベントを締めました。
(取材・文=中村仁美)

セミナーにいらっしゃった皆さまからのご感想
大変質の高い有意義な時間でした。早速社内の企画に活かしたいと思います。
大変参考になりました。今後も期待しています。
大変良いヒントをいただきました。是非また参加したいです。
すべてのセッションで大変参考になりました。
もっと先進の取り組み事例などを紹介してほしいです。
もう少し時間をかけてゆっくり聞きたかったです。
これからもWISDOM主催のセミナーを続けてほしいと思います。

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