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2016年04月18日

JR東日本 CIO 前川忠生 常務に聞く、IoTとAI活用による鉄道システムの未来

鉄道事業はもとより、鉄道以外の生活サービス事業などでも順調にビジネスを拡大している東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)。グループの中期経営計画である「グループ経営構想X」では、IoTをはじめとする最新IT技術の活用を掲げて積極的なIT投資を進めている。世界トップクラスの安全性や効率性を実現する鉄道運行システムを実現する一方で、人工知能(AI)活用やスマートフォンアプリ開発など、新しいテクノロジーへの投資も惜しまない同社の取り組みについて、常務執行役員 前川忠生 氏に話を伺った。

後編はこちら(この記事は前編です)
(聞き手は編集部 松尾慎司)

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JR東日本
常務執行役員
前川 忠生 氏


JR東日本のビジネスとIT部門の役割・体制

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──まず、貴社のビジネスの現状についてお聞かせください。

前川氏:日本は大都市に人口が集中し、都市が点在しています。そこで、都市間輸送を新幹線が担い、都市内輸送を大量輸送が可能な鉄道が担うという形で、比較的、鉄道事業を運営しやすかったといえます。

 しかし、モータリゼーションや航空機の普及により鉄道輸送のシェアが低下し、国鉄時代にそれが難しくなったため、分割民営化後は鉄道以外の事業もできるようになりました。現在も鉄道事業を中心にしていますが、今では売上の約1/3を生活サービス事業などが占めています。今のところ、グループ全体で鉄道を支えていく仕組みがうまくできてきたと考えています。

──2015年度第3四半期は、売上高が過去最高を更新されました。そのドライバーのひとつとなっているのは、鉄道に付随する各種のサービスが伸びたということでしょうか。

前川氏:そのとおりです。鉄道を安全・安定、かつ効率的に運営するという大前提の上に、生活サービスなどを充実することが重要だと考えています。鉄道という事業は、鉄道を利用される地域の方々、鉄道は利用されなくても駅ビルなどの施設を利用される方々、さらに海外から観光で来られた方々など、さまざまなお客さまのニーズに合う仕事をして、はじめて成り立つ業種だと考えています。それが今はうまくいっているのだと思います。

──IT部門の役割とその体制をお聞かせください。

前川氏:まずは、鉄道の安全・安定輸送をシステムでしっかりフォローすることが大前提です。また、最近はお客さまのニーズも多様化していますので、それに対応すること。そして3つ目が、経営の基盤を支えるシステムを、より充実していくことです。

 体制としては、総合企画本部内にあるシステム企画部が30〜40名で会社全体のITを見ています。同部はシステム戦略の策定や投資判断を行う「計画部門」、業務部門のシステム開発を支援する「管理部門」に加え、2015年4月に立ち上げたデータ分析を担当する「アナリシス・セキュリティセンター」から成り立っています。

 また、情報子会社のJR東日本情報システム(JEIS)には約1500名の社員が在籍し、システムの開発・運用を担当しています。さらに、各部門にシステム担当者を配置し、システム企画部と連携しています。

メンテナンス業務の効率化・高精度化を目的に、すでにIoTを本格的に活用

──攻めのIT投資という意味で、IoTへの取り組みについてお聞かせください。

前川氏:IoTについては、すでにメンテナンスで積極的に活用しています。鉄道事業というのは、メンテナンス業務がたくさんあります。車両、線路、橋、コンクリート高架、信号システム、電力設備など、さまざまな設備がありますので、それらをどう安全、安定、効率的にメンテナンスするかは永遠の課題なのです。

 たとえば、ある設備の管理をするためには、ものが歪んだり壊れたりする前の閾値を決めておき、その閾値になる前に、経験に基づいて修理・交換をするのです。

 しかし、このやり方には課題があります。それは、安全を最優先にするため早め早めの交換を行うことになり、どうしても非効率になってしまう点です。しかし、IoTを活用するとデータに基づいた傾向が分かるようになり、より適切な時期での交換が可能になるとともに、これまで経験のないような異常についても分かるようになる可能性があり、より安全かつ効率的にメンテナンスできるようになると考えています。

──いわゆる予防保全の分野ですね。センサーの導入などが大きな負荷になると思うのですが、どのぐらい浸透しているのでしょうか。

前川氏:実はかなりの部分で、すでにIoTを活用したシステム化は完了しています。たとえば、従来はホームドアが正常に動作しているかどうかは外観検査だけで確認していました。しかし、今はドアが開閉する際の電流値などのセンサー情報も取得しています。たとえば、電流値の上昇がみられた場合、何かしらの原因でドアの開閉に負荷がかっているのではないかと想定できます。

 テクノロジーの進展により、これまで欲しいと思っても取得できなかったデータを取得し、活用できるようになったのです。

【次ページ】複雑な列車運行を支える「世界一」の運行システム

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