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2016年04月22日

JR東日本 CIO 前川常務に聞く、JRE POINT導入による電子マネー事業戦略とIT投資のROI

メンテナンスにIoTを活用し、スマホアプリの開発や現場でのタブレット活用も積極的に推進している東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)。今や本業以上に、不動産賃貸や駅ナカ物販事業などを伸ばす同社にとって、電子マネーの「Suica」は大きな原動力になっている。後編では、JR東日本 CIO 前川忠生氏にSuica事業戦略からIT投資に対する考え方、IT部門でのリーダーシップ、そしてSNSやドローン技術の活用、さらには鉄道事業の将来展望まで話を伺った。

前編はこちら
(聞き手は編集部 松尾慎司)

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JR東日本
常務執行役員
前川 忠生 氏


JRE POINTが導入され、さらに強化・推進される電子マネー戦略

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──電子マネーのSuicaの現状と今後の展開についてお聞かせください。

前川氏:Suicaは当社エリアのみならず、相互利用の推進によって、他の鉄道会社もバスも共通で利用できます。そのSuicaで小銭を持たずにお買い物ができる電子マネー事業は発展性があると考え、早くから積極的に取り組んできました。2020年度までに交通系電子マネーの1日の最高利用件数800万件の達成をめざし、さらなる加盟店拡大と利用促進により、今後も発展・継続させていきたいと考えています。

──2016年2月からは、アトレやボックスヒルなどの駅ビルで「JRE POINT」が導入されました。また、近い将来、SuicaポイントもJRE POINTと共通化される計画ですが、その狙いをお聞かせください。

前川氏:JR東日本グループのサービスを使っていただければ、グループ全体でお返しできるような仕組みが必要だと考えました。駅ビルを使っていただくお客さま、Suica電子マネーを使っていただくお客さまは、どちらもJR東日本グループのサービスを使っていただいているお客さまですので、ポイントも共通化したほうが間違いなく便利になると思います。

 ただ、我々は鉄道という公共性の高い事業をやらせていただいていますので、あまり自社のことだけを主張するのはよいこととは思っていません。そのため、さまざまな企業と相互連携を図ることも必要だと考えています。

──公共性という意味では、たとえば運行情報をオープンデータとして公開すれば、外部のエンジニアによって新しいサービスも生まれてくるのではないでしょうか。

前川氏:そうですね。これからは、そうした動きも活発化すると思います。ただ、難しいのは、オープンデータの基礎データを誰が入力するのかということです。データが膨大ですので、入力するのにも相応の手間とコストがかかるのです。誰がその役割を担うか、また公開することで効果がありそうか、きちんと決められれば、我々も公開に向けて検討が進むと考えています。公開することでお客さまの利便性が高まるのであれば、オープンにするメリットは大きいと思います。

自由度の高い現場の技術開発、予算を決めたら細かいことは言わない

──IT部門にとっては、基幹系などの守りのITも重要な業務です。そこはどういった考え方で取り組まれているのでしょうか。また、ITにおける投資対効果をどう見ているのかもお聞かせください。

前川氏:基幹システムについてはシステム企画部がしっかりとグリップし、JR東日本情報システム(JEIS)がシステムを開発・運用しています。基幹系システムの投資についてはシステム企画部で集約し、指標も作り、開発コストもきちんと管理し、投資対効果を確認の上、判断しています。また、他社のシステム開発も参考にしながら、他社に負けないように効率化も図っています。

 一方、現場での技術開発については、ある一定の金額を決めたら、あまり細かいことは言わない方針です。といっても、無駄遣いをしている現場は1つもありません。やはり、国鉄時代に会社がつぶれましたので、そういうDNAが残っているのだと思います。「変なことをしたら会社はつぶれるのだ」ということを、全員、身にしみて知っているのだと思います。

──攻めのIT投資は大胆に行って、現場でイノベーションを起こしてほしいということですね。それが実を結び、現在の好業績に結びついているということでしょうか。

前川氏:新幹線を作るとき「そんなものはいらない」という意見もたくさんありました。しかし、もしも今、新幹線がなくて、東京−大阪間を時速100キロ程度の列車しか走っていなかったら、多くの人は移動をためらうでしょう。ですから、日本の国の発展は新幹線のおかげという面があると考えています。

 新幹線のコンセプトで素晴らしかったのは、実は最先端の技術を使わなかったことです。各分野のすでに確立された技術を集め、何回も試運転を繰り返して新幹線を作ったのです。そういうDNAが弊社の中にはあります。

 我々も、会社として世の中の動向を見て最先端技術を取り入れていかなければと思っていますが、鉄道業が難しいのは、最先端の技術ではなくて、ある程度、信頼性が確立された技術を集約しなければならないところなのです。ただ、鉄道周辺のサービス分野に関しては、もっと踏み込んでもよいだろうと考えて取り組んでいます。

──売上の約1/3が鉄道以外の生活サービス事業等になっているので、それだけ踏み込める領域が増えていて、またそれが御社の成長のエンジンにもなっているということですね。鉄道事業でいえば、競合は航空業界なのでしょうか?

前川氏:必ずしも競合というわけではありません。最近はお互いに役割分担しましょうという話し合いも持っています。もちろん、国内の都市間輸送では競合しますが、たとえば海外のお客さまには飛行機で空港まで来ていただいて、そのあと鉄道を安く使っていただけるようなパッケージ化も始めています。2020年を見据えて、飛行機会社と鉄道会社、さらにホテルなどが一緒になって海外でパッケージを販売するといった取り組みは、今後さらに可能性が広がると思います。

【次ページ】SNSやドローン活用、どこにIT投資を振り向けていくのか

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