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2016年04月18日

アリババの成長事業「農村タオバオ」とは何か?中国版地方創生の鍵は小さな起業家たち

2016年3月には年間取引額が51兆円を超え、米ウォルマートに肉薄し世界一の流通企業になろうとしているアリババ。2014年11月にスタートした「農村タオバオ」という事業は、人口が多いもののネット普及率の低い地域に、売り手と買い手両方のサービスを行う店舗を設け、農村地域の経済活動を活発にするものです。新たな雇用の受け皿ともなるため、人口流出に悩む地方自治体にとっては地方創生の切り札として期待されています。成長戦略のひとつとして農村地域での取引増加を掲げるアリババの「中国版地方創生」の取り組みを紹介します。

執筆:佐藤 隆之

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日本の地方創生実現へ、アリババから学ぶべきもの


「Eコマース配送拠点」+「地元のコンビニ」=「農村タオバオ」

 中国には、農村地域が果てしなく広がっています。その国土の広大さから、中国は物流ネットワークを構築するのが難しく、農村地域では商品の選択肢が乏しく、偽物が多いといった問題が存在します。そのため、これまで高品質な商品・サービスを手に入れるには、遠方の都市まで出向く必要があり、消費者に負担を強いてきました。

 それならばインターネットやEコマースを使えばいい、と思うかもしれませんが、中国のネット普及率は30%と決して高くなく、高齢者の中にはIT機器が苦手な人もいます。合計6億人を超えると言われる農村地域では貧困が減少したものの、若年層が都市部へ流出する傾向が強いため、都市部との経済格差が開く一方です。この農村地域での経済活動を助けるための事業が、アリババの立ち上げる「農村タオバオ」です。

 農村タオバオはEコマースのサービス拠点として機能します。買いたいものがある場合は、自身のPCや、サービス拠点にあるPCでスタッフの支援を受けながら、ネット通販を行います。注文した商品はアリババの物流網に乗って、サービス拠点に届けられ、商品が受け取れます。

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農村タオバオのWebサイト


 また、地域特産物などの商品を売りたいときにも農村タオバオは力を発揮します。アリババのプラットフォームに商品を掲載すれば、受注・配送・代金受け取りまで簡単に行えるのです。

 農村タオバオのビジネスモデルはフランチャイズモデルです。地元の若者がサービス拠点の「店長」となって、アリババが提供するノウハウや物流ネットワークを活用します。店長は小さな起業家となって自分の事業を拡大する責任を負います。アリババは買いたい人と売りたい人をつなげるプラットフォームとしての側面が強いため、サービス拠点を立ち上げるにあたっても大量の在庫を抱える必要がなく、少ないリスクで農村タオバオを始められるのが特徴です。

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(クリックで拡大)

アリババの展開する「農村タオバオ」の仕組み

(作成:高橋 博伸)


 農村タオバオは地元の若者を「店長」として雇用するため、雇用対策として政府からの支援を受けています。実際、中国の国家発展改革委員会はアリババと提携し、生産量が減っている製造業などでの余剰人員に対する受け皿として考えているようです。

 農村タオバオは開始から1年を過ぎて、既に1万4000拠点が設置されています。全国21省以上に展開され、地方自治体が資金援助しているケースもあります。2016年中に4万、2019年までに10万もの拠点を設置する計画です。物販だけでなく、投資商品や都市部での病院予約など高度なサービスへの拡大計画も報じられました。アリババは単なる一企業ではなく、地方創生のインフラになったと言えるでしょう。

「農村タオバオ」と「越境EC」で世界一の流通業を目指すアリババ

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 中国の電子商取引プラットフォームとして拡大するアリババですが、いまや世界的な巨大企業の仲間入りを果たしています。2014年にニューヨーク証券取引所に上場し、時価総額は25兆円を超えました。これはフェイスブックやアマゾンさえも凌駕します。日本のEコマースを牽引する楽天が時価総額1兆7000億円だったのと比べると、その規模に驚かされるでしょう。

 アリババは商品を売りたい人と買いたい人をマッチングするサービスを展開していますが、B2B向けのサービスでは中国国内で4000万以上のユーザーを、「越境EC」として拡大が見込まれる国際間取引は240の国と地域から1400万以上のユーザーを集めました。他にも、個間取引マーケットプレイス「タオバオワン」やEコマースサイト「Tモール」などを運営しています。

 2016年3月には年間取引額が51兆円を超えました。世界最大の小売業であるウォルマートの売上高54兆円に、取引額が肉薄するレベルに達しています。アリババは中国国内では既に独占的な地位を築きました。B2Bでは44%、B2Cでは39.9%のシェアを獲得し、追随する企業はほとんどありません。「農村タオバオ」や「越境EC」を中心に、2020年に102兆円を目指す計画をアリババCEOは発表しています。

 アリババの発展は創業者ジャック・マーの手腕によるところが大きいと言われています。アジア一の富豪に選ばれた経験もあるこの実業家は中国ヤフー買収やソフトバンク取締役就任などで日本でも有名になりました。大学入試に3度失敗し、ケンタッキーフライドチキンの店舗スタッフにも不採用になったという逸話を残しながら、起業家としては類まれな才能を発揮してきました。

【次ページ】地方創生の鍵を握るのは農村タオバオの小さな起業家たち

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