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  • 2016/05/09 掲載

小売業界の世界ランキング:アマゾンはいつウォルマートを追い抜くのか

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世界の小売業界をリードしているのは、米国のウォルマート・ストアーズやコストコホールセール、フランスのカルフールといった欧米の超大型総合小売店チェーンだ。日用品の低価格販売を武器に、市場を総取りする戦略で成長した。日本では圧倒的なイオンやセブン&アイ・ホールディングスは、まだトップ10圏外だが、積極的なM&Aをテコに、先行する欧米勢の背中を追う。一方、Eコマースの普及に伴って、アマゾン・ドット・コムも存在感を増している。ビッグプレイヤーが入り乱れる小売業界の世界的な現状とは。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

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小売業界をリードするのは欧米勢だ

世界初の小売店は百貨店

 百貨店、専門店、スーパー、ホームセンター、コンビニエンスストア、100円ショップ――私たちの身の回りには、さまざまな業態の小売店がある。有史以来、物々交換のマーケット(市場)に始まって今日に至るまで、洋服店、靴店、魚屋、酒屋、薬局といった業種別の専門店は連綿と続いている。だが、現在の小売業における最大の特徴は、「総合小売店」が主役として君臨していることだと言えよう。

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世界で初めて総合食品店チェーン「A&P」を築いた米国のThe Great Atlantic & Pacific Tea Company。
(写真:Cynthia Closkey/flickr

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世界初の食品スーパー「キング・カレン」は現存している
 世界初の総合小売店は百貨店(デパートメントストア)である。百貨店第1号店は1852年、フランス・パリで開業した「ボン・マルシェ」だと言われている。さまざまな売場をあたかもマーケットのように大きな店舗の中に集め、定価販売、大量仕入れによる薄利多売といった画期的な販売方式を導入した。

 当時、欧米では産業革命による大量生産体制が確立されつつあり、それに呼応した大量販売システムによって、“流通革命”を起こしたのが百貨店だった(なお、産業革命の本場、英国では1844年、近代小売業の元祖とも言われるロッチデール生活協同組合が発足している)。

 百貨店に取って代わって小売業界で覇を唱えたのがスーパーだ。20世紀になって、米国で急速に発達した。1859年には、世界で初めて総合食品店チェーンを築いた米国の「A&P(The Great Atlantic & Pacific Tea Company)」が誕生(その後、2015年に2度目の破産法申請)。

 1930年には、世界初の食品スーパーと言われる「キング・カレン」もニューヨークで創業した。スーパーには、主に衣食住をフルラインで揃えた総合スーパー(国によって定義や名称は異なる)と、食料品がメーンの食品スーパーがあるが、とりわけ、百貨店を凌ぐ成長を遂げたのが総合スーパーだ。

忘れてはいけないセルフサービス方式とチェーンストアモデル

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 総合スーパーの大きな特徴としては、日用品の拡充、セルフサービス方式という点が挙げられる。食料品、実用衣料、生活雑貨といった日用品は、市場のパイが大きく、購買頻度も高いのである。

 セルフサービス方式では商品をカテゴリーごとに棚に陳列、顧客が欲しい商品を自由に手に取り、レジで精算する。それよって、顧客の購買行動はスムーズになり、店舗スタッフの数も抑えられた。経費が安くなった分を売価に還元したので、日用品の価格競争力では、対面販売の百貨店や旧来型の専門店を圧倒したのだ。

 もう一つ、総合スーパーの成長の原動力となったのが「チェーンストア」の展開である。日用品の商圏は狭いため、店舗の分散配置が必要だった。第二次世界大戦後の物流革命によって、長距離・高速・大量輸送が可能になったことも背景にある。

 総合スーパーは、商品を物流拠点に集荷し、店舗に配送するシステムを構築。効率的な一括仕入れとバイイングパワーの行使によって、調達原価を引き下げることに成功した。さらに、店舗は売場の標準化や販売への集中によって、運営を効率化することができた。

 一方、顧客にとっても、チェーンならどの店舗でも同じサービスを受けられるというメリットがあり、ストアブランドの信用が高まったのである。なお、チェーン化は、総合スーパーに限らず、ほかの業態もこぞって取り入れている。たとえば、世界市場を席巻している専門店は、例外なくチェーンストアとして発展している。

欧米では超大型総合小売店が覇権を握る

 日本では、百貨店業界の苦境、ダイエーを筆頭とする総合スーパーの凋落などによって、「総合小売店の斜陽」がまことしやかに囁かれている。

 しかし、小売業の世界的なトレンドから見れば、必ずしもそうとは断言できない。欧米の小売業界では、複数のカテゴリーキラーを包摂したような「ハイパーマーケット」=“メガ総合スーパー”や「ウェアハウスクラブ(会員制倉庫型店舗)」といった超大型総合店が、主導権を握っているからだ。

 日本でも、イオンのように、グループの総合スーパーや大型専門店のみならず、多数のテナントを集積した巨大ショッピングモールを開発、集客力をひたすら追求する小売業も出現している。

 総合小売店は、ワンストップ・ショッピングの利便性による集客力の高さが強み。「クロスマーチャンダイジング」を仕掛けるなど、カテゴリー同士のシナジーも追求できる。カードの顧客情報を活用して、ライフスタイル提案のような囲い込み型のマーケティング、新規ビジネスの創出などにも乗り出している。

小売業界では米国勢が金・銀・銅を独占

 売上高による小売業界のグローバルランキングは以下の通り。消費先進国である欧米の総合小売店が、一大勢力を築いていることがわかるだろう。

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小売業界の世界ランキング2016

 とりわけ、上位3社はすべて米国勢で、オリンピックなら金・銀・銅メダルを独占と言ったところだ。また、リーマン・ショック後の世界的な不況の影響もあって、低価格志向の小売店の伸長が目立っている。

 第1位はウォルマート・ストアーズである。1962年に米国中南部のアーカンソー州で、サム・ウォルトンが創業。「スーパーセンター」と呼ばれるハイパーマーケットを主力業態として展開する。メーカーとの直接取引、ITを活用した需要予測・自動発注などによるきわめて効率的、かつローコストの物流システムによって、「エブリデー・ロープライス」を実現、たちまち顧客の支持を集めた。

【次ページ】アマゾンはいつウォルマートを追い抜くのか

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