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  • 2016/05/13 掲載

LITALICO×Rails Girls×Lingvist対談:教育系スタートアップが起こすイノベーション

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テクノロジーの進化を背景に「教育」のイノベーションが起きている。社会のグローバル化が進む中で、求められる人材も変わり、マニュアル型の人材ではなく、社会的価値を生み出す人材を輩出せねばならない。LITALICO 代表取締役社長 長谷川 敦弥氏と、Rails Girls 共同設立者 リンダ・リウカス氏、Lingvist Inc. CEO&共同創業者 マイト・ミュンテル氏ら人材育成分野で活躍するスタートアップが、教育に求められるイノベーションについて語った。

さまざまな教育支援サービスを提供する「LITALICO」

 LITALICO 代表取締役社長 長谷川 敦弥氏と、Rails Girls 共同設立者 リンダ・リウカス氏、Lingvist Inc. CEO&共同創業者 マイト・ミュンテル氏は、「新経済サミット2016」で行われたパネルディスカッションに登壇した。

 長谷川氏は、2009年にLITALICOの代表取締役社長に就任した。「障がいのない社会をつくる」というビジョンを掲げ、障がいのある人々に向けた就労支援サービスや、発達障がいのある子どもを中心とした教育サービスなどを展開している。

 「子どもの頃からADHD(注意欠如多動性障がい)の傾向が強かった」と自らについて語る長谷川氏は、就労支援ビジネスを続ける中で「精神疾患にならない社会づくりが必要」と感じるようになったという。

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LITALICO 代表取締役社長 長谷川 敦弥氏

「精神を病む人の多くは、幼い頃から『勉強がわからなかった』などの失敗体験が重なり、自己肯定感を低め、精神を病んでいる。私は、本当の障がいとは、その人にあった教育がなかったことではないかと考える。個性をなくし、みんなを同じにしようという教育から、一人ひとりにあった教育作りに取り組みたい」(長谷川氏)

フィンランド発のワークショップ「Rails Girls」

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Rails Girls 共同設立者 リンダ・リウカス氏

 フィンランド生まれのリンダ氏は、世界270都市で女性へのプログラミング教育を行う非営利団体、Rails Girlsの共同設立者だ。13歳でプログラミングに興味を持ち、作家、イラストレーター、プログラマー、また教育者として活動している。また、Kickstarterから38万米ドルもの資金を集め、大反響を得た絵本「Hello Ruby」の執筆者でもある。

 現在は、テクノロジーの可能性、ストーリーテリング(読み聞かせ)やインスピレーションをテーマとした講演を世界中で行い、これらが社会やビジネス、キャリア、あるいは個々の人生に与える影響について語っている。

「『Hello Ruby』では、すべてがコンピューター化している世の中を、ルビーという6歳の女の子を主人公に描いている。子どもたちに教えることは、プログラミング言語自体ではなく、コンピューターはよりよい世界を構築するための道具だということだ」(リンダ氏)

 「フィンランドはテクノロジーの歴史を持ち、世界有数の教育水準を誇る。さらに、ムーミン発祥の地として知られる物語を語る民族だ」と語るリンダ氏は、人の世界観、価値観は、子どものときの記憶で決まる。次世代のために物語を語っていきたいと語った。

素粒子物理学を応用して外国語学習する方法を提供する「Lingvist」

 マイト氏は、原子物理学者であり起業家だ。2008年に理論物理学博士号を取得し、過去にスイスの欧州原子核研究機構(CERN)の実験部門に9年間所属していた。ヒッグス粒子を発見したチームのメンバーでもある。

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Lingvist Inc. CEO&共同創業者 マイト・ミュンテル氏

 同氏は素粒子物理学のアルゴリズムを応用し、「外国語を従来の10倍早く習得できる学習方法」を着想し、2013年、共同創業者とともにLingvistを立ち上げた。

 2015年11月には、楽天主導のシリーズAラウンドで800万ドルの資金を調達し、次世代の言語学習ソフトを開発中である。マイト氏は、「数学的・統計学的な手法を用いて言語学習を10倍速くすることを目標としている」と語る。

「コンピューター化する世界」で教育はどう変わるか

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 パネルディスカッションのモデレーターを務めたのは、東京大学公共政策大学院 教授 慶應義塾大学政策メディア研究科兼総合政策学部教授で文部科学大臣補佐官の鈴木 寛氏である。

 鈴木氏は、デジタルテクノロジーの推進とグローバライゼーションを踏まえ、子どもたちにどういう学力を身につけさせるべきか、もう一度再定義するべき時期に来ていると語った。そこで、今、教育の世界に何が起きようとしているかがディスカッションのテーマとなった。

 Lingvistの教育メソッドのパフォーマンスの高さについて問われたマイト氏は、以下のように語った。

「我々は3つのことに取り組んでいる。1つは、スマホやコンピューターで学習する際に、頻繁にインタラクションがあり、学習プロセスを通じて、何百万ものデータポイントを収集している。2つ目は、得られたデータポイントから、人の記憶をマッピングし、細かいレベルで学習プロセスを分析している。そして、3つ目は、データサイエンスだ。言語そのものを分析することで、言語の中で最も重要な学習ポイントを知り、学習プロセスの中で、次に何を教えることが効果的かを推測している。これで学習効果を高めることが可能だ」(マイト氏)

 鈴木氏は「教育には徹底したカスタマイズが必要で、学習効果の最適化にはICT技術が必要だ。しかし、日本は標準化がまだ重要視されている」と語る。これに対し、長谷川氏は、「日本は教育分野に参入するプレイヤーがまだ少ない」と現状を語る。

「日本では民間事業者がプログラミング教育を行い、AIを活用した学習効果の最適化やVRの活用に取り組んでいる。ドワンゴの『N高』(ネットを通じた通信制高校)も注目を集めたばかりだ。一方で、公教育の進化が進まないという問題を感じている」(長谷川氏)

 また、「新しいテクノロジーに基づく教育イノベーションを世の中に広めていくことについて、日頃考えていることは何か」と問われたリンダ氏は、以下のように語った。

「根底にあるのは、デジタル化、あらゆるモノがコンピューター化される世界で、将来に向け、どのように子どもたちを育てるかということだ。プログラミングスキルも必要だが、技術だけでなく、価値観、思考、よりよい問題解決ができるスキルが求められる。たとえば、子どもは色んなデジタルデバイスを使っているが、私は、コンテンツを消費する道具としてではなく、それで何が創造できるかを教えている。そうした取り組みを通じて、子どもに、世界はまだまだ創造の余地があること、テクノロジーは問題解決の道具であること、そして、子ども自身が内部にその能力を持っていることを教えたいと思っている」(リンダ氏)

【次ページ】「エデュケーションからラーニングへ」のシフトに挑戦

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