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  • 2016/05/17 掲載

アプリケーション開発を劇的に変える「HTAP」と「マイクロサービス」とは?ガートナーが解説

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デジタルビジネスは「アプリケーションの本質」を変えつつあるようだ。多くのエンドポイントが存在するようになり、瞬間的なビジネスモーメントをその場で捕捉しなければ、ビジネスチャンスはすぐに消えてなくなってしまうからだ。デジタルビジネスの時代のアプリケーション開発で注目するべき、HTAP、マイクロサービス、PaaS、コンテナなどのテクノロジーについて、ガートナーリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストのアン・トーマス氏が解説した。
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継続的なエクスペリエンスを提供するアプリケーションは、3つの要素で構成される

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 「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション&アーキテクチャサミット2016」で登壇したトーマス氏は、はじめにユーザーがアプリケーションにどんな期待をしているのかについて説明した。

「ユーザーはアプリケーションに対して、“継続的なエクスペリエンス”を提供してくれることを期待している。たとえば、色々な場所から、PCやスマートフォンなど複数のチャネルを利用してアプリケーションにアクセスできたり、ユーザーの効率や生産性を上げるための要素として他人と協調できる機能が組み込まれていることも必要だ。さらには、コンテキストを理解した上で、ユーザーからの要求に対応していくことも求められている」

 アプリケーションが継続的なエクスペリエンスを提供するためには、まずユーザーがチャネル間をシームレスに行き来できる環境を提供する必要がある。また業務中に他のメンバーとチャットできるとか、プレゼンスが確認できるなど、統合されたコラボレーション機能も必要だ。またユーザーの他のチャネルでの行動を記憶しておき、コンテキストを理解した上で対応すること、さらには外部のセンサやビーコンなどともつながって、ユーザーの現在地の周辺情報に応答することも求められる。

 それではこうした機能を、どのように実現させていけばいいのか。

「ユーザーに継続的なエクスペリエンスを提供するアプリケーションは、アプリ、API、サービスという3つの要素によって構成される」

 ここでいうアプリとは、あるアプリケーションにおける固有のユーザーエクスペリエンス(UX)を提供するもので、ユーザー個々に最適化され、特定の目的に適合し、かつシンプルさにフォーカスが当てられたものだ。これに対してアプリケーションは、ユーザーインタフェース/ロジック/データを有する1つの大きなシステムで、複雑でユーザーのあらゆるニーズに対応し、特定目的の効率性を追求したものではなく、完全性にフォーカスしたものだ。

「特定の機能を提供するさまざまなアプリが、クロスチャネルのステートフルな固有のUXを提供するバックエンドのサービスと対話をする。そしてこれらをつなぐのがAPIだ。ユーザーに継続的なエクスペリエンスを提供するアプリケーションには、こうしたメッシュ型のアプリ&サービス・アーキテクチャが求められることになる」

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クロスチャネルのステートフルなエクスペリエンス
(出典:ガートナー)


リリースモデルの「継続的デリバリ」、実装モデルの「HTAP&マイクロサービス」

 次にアプリケーションをどうやってデリバリしていくかだが、ここで考えるべきは、いかに早くアプリケーションを市場に投入するかということだ。

 現在、何らかのアイデアが生まれてからアプリケーションが開発され、本番環境に投入されるまでにかかる時間は、恐らく数か月単位だ。たとえばこれを数週間でデプロイできれば、企業競争力は大いに高まる。

「これにはアジャイル開発、およびDevOpsという方法がある。アジャイル型の開発を行っていれば、ビジネスユーザーと開発者とのコラボレーションを促進することができ、開発者はビジネス側が求めているアプリケーションを迅速に展開することができる。DevOpsはそのステップをもう一歩前進させるもので、単にアプリケーションを開発するのではなく、運用部門からのフィードバックも開発プロセスに取り入れてしまおうという考え方だ。これによってより精度の高いアプリケーションを、より速くデリバリできるようになる」

 さらにもう一歩、進んだデリバリ方法が「継続的デリバリ」だ。

「継続的デリバリは、開発からデリバリまでを完全に自動化されたパイプラインとするものだ。開発者がコミットのボタンを押すだけで、書いたコードからアプリケーションの構築、テスト、パッケージが自動的に行われ、独自のコンポーネントとして、本番環境にデプロイされていく。この継続的なデリバリがうまくできていれば、システムはこれまで以上に安全かつ効率的なものになっていくだろう」

 続いてトーマス氏は、アプリケーションの実装モデルとして、ハイブリッド型トランザクション/アナリティカル処理(HTAP)とマイクロサービスの2つを紹介した。

「HTAPは、インメモリコンピューティングをベースとして、トランザクションの処理とアナリティクスの処理を同じデータを使って同時に行うことを可能にするものだ。これによりトランザクションの処理を行いつつ、何か問題が起こっている時には、リアルタイムにそれを感知し、分析することができるようになる」

 またマイクロサービスは、アプリケーションの統合化された状況を分割するもので、アプリケーションの中の複数の機能をそれぞれ独立して導入、もしくは拡張できるようにするものだ。各機能は、準備が整い次第、順次リリースすることが可能となる。

「HTAPアプリケーションは、マイクロサービスで実装される。小さなコードが複数生成され、それらがイベントを受け取る、あるいは分析を行うという処理を個別に実行する。各マイクロサービスは自律的に動き、集中型のコントロールを必要としない。ただしHTAPは、今のエンタープライズアーキテクチャやガバナンス、あるいはデータ管理システムに破壊的な影響を与えるものだ。これが主流になるまでには、あと5年から10年はかかるだろう」

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ハイブリッド型トランザクション/アナリティカル処理(HTAP) とマイクロサービスが新しいアーキテクチャを構成
(出典:ガートナー)


【次ページ】マイクロサービスのデプロイに有効となるのが、PaaSとコンテナ

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