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2016年05月26日

東大 坂村健 教授が語るIoTの本質、「インダストリー4.0はオープンなカンバン方式だ」

これまでにもIoTと同じ考え方を意味するバズワードはいくつか登場した。ユビキタスコンピューティングしかり、M2Mしかり。その中でIoTという呼称が市民権を得たのは「モノをインターネットにつなぐというのではなく、インターネットのようにモノをつなぐということを明快にした呼び名だったからだ」と指摘するのが、東京大学大学院情報学環教授でユビキタス情報社会基盤研究センター長の坂村健氏だ。これからのIoTの可能性と取り組むべき課題について、坂村教授が語った。

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東京大学大学院情報学環教授
ユビキタス情報社会基盤研究センター長
坂村 健 氏



「オープン」がイノベーションを生む

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 「SAS FORUM JAPAN 2016」で登壇した坂村教授は、IoTの本質を「インターネットのようにモノをつなぐこと」だと説明する。

「IoTのI、すなわちインターネットが意味しているのは、だれでも、何にでも利用できるオープンなネットワークだということだ。この“オープンな”というところが非常に重要で、オープン性が世の中を変える。現在、オープンアーキテクチャやオープンソース、あるいはオープンデータなどさまざまな領域でオープンな世界がどんどん広がっている」

 それではなぜ、オープンが重要なのか。

「今、必要とされているイノベーションは、いわば進化論の世界。1000回チャレンジして3回しか成功しない。ゴールを設定してそれを解決するという予定調和のようなターゲティング型の戦略では決して生まれない。チャレンジの多さのみが、イノベーションへの道だ」

 そして今ではテクノロジの進歩がさまざまなチャレンジを容易にしている。資金や協力者もクラウドファウンディングやクラウドソーシングで集まるようになった。アイデアをすぐ形にして世の中に出せる時代になっている。

「こうしたものすべてを可能にしたのが、間違いなく“オープン性”だ。昔と違って何から何まで自分でやる必要はない。オープンが可能にするマッシュアップ、つまり連携は数多くある。たとえばグルメサイトを作ってお店のデータベースを作る時、地図ソフトまで自分で作る必要はなく、Google Mapなどを利用すればいい。それによって低コスト、短期間での効果を見込むことができる。オープン化がイノベーションを生む」

フィンランドと英国の対比でみるオープン化のメリット

 次に坂村教授は、オープンデータについて言及した。

「たとえばこの部屋の温度をAIを使って自動調整しようという時、すべてのライトをインターネットにつないで、それぞれがどれぐらいの発熱量かを把握することはできる。しかし、センサーから集めたデータだけで現実空間のすべてを分析することはできない。部屋の広さはどれぐらいか、天井までの高さは何メートルか、どんな構造になっているのか、といった周辺情報が必要不可欠だ。最近話題になっているビッグデータやAIはIoTと深い関わりがあるが、その時にオープンデータはIoTの非常に重要な要素の1つとなる」

 こうした観点から、現在では世界中で、色々なデータを積極的にオープン化しようという動きが盛んになっているという。

 たとえば2012年のロンドン五輪の際、ロンドン市交通局(TfL:Transport for London)が、地下鉄の位置情報をオープンにした。そこで鉄道マニアのハッカーが、電車が今どこを走っているのをライブで知ることができるスマホアプリ「Live Train Map」を作った。スマホで利用できるので、多くの人が恩恵を被ることができ、また交通渋滞をどう解決するかという都市問題の解決にも使われているという。

 一方、フィンランドの国鉄もTfLと同様の取り組みを行っていたが、こちらでは電車の位置情報をすべて自分たちで抱え込んでしまい、アプリ自体も自分たちで作成した。

「この2事例の対比は、オープンデータのメリットを非常に分かりやすく教えてくれるものだ。TfLのケースでは、データをオープンにしたことで、自分たちでは思い付かないようなアイデアを外部から獲得することができた。また、お金や時間をかけて、自分たちでアプリを作らなくても済んだ。一方、フィンランドの国鉄はデータをクローズドにしてしまったために、お金も、人員も、時間もすべて自分たちで工面する必要があった。TfLにおけるデータのオープン化は、元々はオリンピックのために始めた取り組みだったが、今ロンドンは積極的に市内の色々なデータを公開することで、さまざまなアプリを開発してもらうことを活発化している」

オープンデータの重要な要件は「機械可読であること」

 オープンデータへの取り組みは、元々は米国が始めたものだ。2007年12月に有識者によって開催されたオープン・ガバメントに関するワークショップでは「オープン・ガバメント・データ8原則」が発表された。

【オープン・ガバメント・データ8原則】
  1. 完全であること
  2. 一次データであること
  3. タイムリーであること
  4. アクセス可能であること
  5. 機械可読であること
  6. 非差別であること
  7. 非独占であること
  8. ライセンスフリーであること

「このうち非常に重要なのが5つめの“機械可読であること”で、最近では日本でも情報公開が叫ばれているが、情報をPDFなどで提供されても機械で処理することができない。コンピュータが理解できる形で公開されなければ、せっかくのオープンデータもなかなか活用が進まないということ」

 米国では2009年1月のオバマ大統領の就任時、オープン・ガバメントを政策的柱にする狙いで、政府が持っているデータを機械可読な形でオープンにするという取り組みを開始した。現在「DATA.GOV」上で、約16万件もの政府データが公開されているという。

「米国の動きにならい、イギリスやフランス、北欧の各国でも既に1〜10万項目の行政データをオープン化した。日本も、2013年のG8サミットで合意したオープンデータ憲章を受けて、政府データを公開することに積極的になっている」

【次ページ】インダストリー4.0でやろうとしていることはオープンなカンバン方式

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