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2016年05月29日

漫画と経営学用語で学ぶリーダーシップ(後編)

「キングダム」を「PM理論」で分析、プロジェクトにおけるリーダーシップの本質

中国古代史を描く漫画の「キングダム」。この作品は、「複雑化、高度化したプロジェクトを成功させるためのリーダーシップのあり方」が大きなテーマとなっている。そこで提示されるのが、プロジェクトの成功をおさめるために「知略」の力と「本能」の力、どちらが必要なのか、という問いである。これを考えるにあたっては、MBA経営学用語のひとつ「PM理論」が大きなヒントになる。

執筆:人材・組織コラムニスト 後藤洋平

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経営学用語「PM理論」で人気漫画「キングダム」の魅力を分析する


「PM理論」の観点で、キングダムの魅力を読み解く

 PM理論とは、三隅二不二が1966年に提唱したマネージャーの資質についての理論である。リーダーシップは、(1)目標設定や計画立案やメンバーへの指示などにより目標を達成する能力「P:Performance」と、(2)メンバー間の人間関係を良好に保ち集団のまとまりを維持する集団維持能力「M:Maintenance」の2つの能力要素で構成される、とする考え方である。

 「PM理論」においては、2つの能力の大小によって、4つのリーダーシップのタイプ(PM型、Pm型、pM型、pm型)に分類する。これらの価値は同列というわけではなく、PとMが共に高い状態(PM型)のリーダーシップが一番望ましいと考えられている。

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PM理論とは


 キングダムの世界で提示される「知略」の力と呼ばれるのは、まさしく目標設定、計画立案といったPの力であり、「本能」の力はMに該当する。

 「本能」の力が「集団維持」だとするのは、一見すると、少しずれた印象があるかもしれない。が、プロジェクトを成功させるのは結局のところ、そこに参加する人の意思の力であり、これこそが、セオリーの存在しない最大の難事なのである。

 キングダムの世界で、「本能型武将」の極みとして描かれる「麃公将軍」という人物がいる。歴史上、実在した人物だ。

 作品中、彼は戦争を「大炎」と見立てて、その場の状況に応じて「戦局に火をつける」戦い方をする武将として描かれる。戦争理論はまったく無視、無謀な突撃を繰り返して無能なように思えるが、いつの間にか戦局をひっくり返して自軍を勝利に導き、士卒からは絶大な信頼を寄せられている。

 現代の現実社会に読み替えると、これはまさしくチーム・メンバーの「心に火をつける」マネージャーのことなのだ。

「どうしても、どうにもならないとき」を打破する力とは

連載一覧
 ちなみに、「PM理論」では、PとMが共に高い状態(PM型)が最上とされるが、キングダムという作品においても、“知略”と“本能”は、両方を兼ね備えよということが語られている。秦の王騎、趙の李牧、魏の廉頗など、各国の第一人者として描かれる武将はみなこれらの資質を併せ持った人物として描かれている。

 すなわち、ことの本質とは、“知略”対“本能”としてどちらかに優劣をつけることではなく、戦略を立案し実行する力、チームのハートに火をつけて、力を発揮させる力、この両面の力をバランスよく、高いレベルで身につけよ、ということである。

 「PM型マネージャー」の面目躍如たる業務シーンがあるとすれば、それは、チームが苦境にある時に、リーダー自身が戦場に飛び出してそれを打開する局面であろう。

 目標金額に対して、どうしても受注金額があとわずか足りない時。プロジェクト最大の鍵を握る顧客の意向が180度逆転してしまった時。開発していた商品が、土壇場で不具合が多発しリリース予定が遅延しそうになった時。

 プロジェクトには、「どうしても、どうにもならないとき」が必ずやってくる。「PM型」のプロジェクトリーダーが時として発揮するのが、「膠着した戦局を動かす突破力」である。


「どうやら将軍ってな二種類いるみてェだ
戦場内で自らも駒となる将軍と
敵味方から注目され 一人で戦局を動かしちまう将軍
同じ将軍でもその二つの間には 大きな“差”がある」

(『キングダム 二十一巻 第218話 「壁隊」』より)

 ここでいう「戦局を動かす力」とは、個人の武勇の力、すなわち「現場における実行力」によって構成される。

 キングダムの世界でこれが描かれるシーンは、「一騎打ち」や「将軍自らが手勢を率いての突撃」である。ここぞという戦機を見極めて、相手方の勢いを大きく削ぐ一手を繰り出す。その際には、しばしばこちら側にも相応のリスクが生じる。名将は、それを勘定に入れたうえでの行動を実行し、必ず成果を収める。

 高いレベルでこれらの力を持ち、それを統合的に発揮できる武将こそが、「天下の大将軍」の資格を持つ、ということをこの作品は語っているのである。

【次ページ】キングダムでは語られない組織拡大の秘訣とは

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