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2016年06月13日

パナソニックはなぜ「介護事業」に本気なのか 3年で拠点10倍の大胆目標のワケ

家電大手のパナソニックが「介護」を手がけているというと、イメージがわかないかもしれない。だが、2000年の介護保険制度発足より前、18年前の1998年に事業子会社を設立し、在宅介護、施設介護、介護用品・設備の開発・販売、介護ショップの運営などを行っている。4月1日には、4つの関連会社を統合して新会社「パナソニックエイジフリー」が発足。今後の売上目標は、2018年が750億円、2025年が2000億円で、倍々の高成長を期待して重点投資を始めている。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳


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パナソニックは介護事業に本気だ


介護関連事業を新会社に統合

 パナソニックの2016年3月期連結決算は、売上高は2.1%減ながら営業利益は8.8%増、税引前利益は19.0%増、当期純利益は7.7%増の増益決算。2期前と比較すると売上高営業利益率は3.9%から5.5%に、売上高最終利益率は1.5%から2.5%に改善し、利益を重視した構造改革の効果は着実に出ていた。

 2013年3月期までの連続最終赤字の傷あとは薄れつつあり、津賀一宏社長は「各事業部で利益貢献を明確な目標として取り組む」と話している。今期、パナソニックはあらためて攻めに出ていく。

 重点を置く戦略分野の軸は「住宅と自動車」で変わらないが、住宅関連分野の中でリフォームとともに今期は「介護」に先行投資する姿勢が、より鮮明になっている。

 今年3月31日に発表した2016年度の事業方針では、売上、利益成長をけん引する高成長事業にリソースを集中して積極的に先行投資する対象として、住宅部門ではリフォームと並んで「エイジフリー(介護事業)の拠点拡大」を挙げている。

 電機メーカーのパナソニックが介護の分野に取り組むと言えば、技術力を活かした介護用製品の開発がまず連想されるかもしれない。たとえば電動ケアベッド、ポータブルトイレ、高齢者にとって安全なユニットバス、バリアフリー住宅など。

 そんな「ケアプロダクツ」の開発、製造だけでなく、在宅介護サービスを提供したり、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け賃貸住宅(サ高住)のような施設を運営する「ライフサポート」や、介護用品の販売・レンタルや住宅リフォームの相談・受注窓口になる拠点店舗を運営する「リテールサポート」も、全国規模で展開している。そのように事業領域は幅広く、ほぼフルラインで介護に関わっている。

 「介護がわかる住まいの会社として、介護を必要とする方のくらしをトータルにサポートする」と、パナホームの実績をもとに「介護サービス」「介護用品」「住宅設備」「リフォーム」「住宅・介護施設」のすべてをトータルに提供できる点を、介護事業での自社の強みとして挙げている。

 現状では、在宅介護サービス拠点125ヵ所のうち6割近くの72ヵ所、施設・住宅28ヵ所のうち8割近い22ヵ所がパナソニックの「ホームグラウンド」とも言える近畿地方に集中しているため、中京圏や首都圏など近畿以外の地域での介護事業の知名度はあまり高くないが、そのあゆみは2000年の公的介護保険制度発足以前にさかのぼる。

 介護機器の開発は1997年、当時の松下電器産業本体に「エイジフリー事業推進部」が設立された頃から本格化した。1998年には同じく本体に「介護ショップ事業推進部」が設立され、1999年には直営ショップの事業会社が設立されている。在宅介護は1998年に関連会社が設立されてサービスが始まり、施設介護は1998年7月に大阪府に第1号の有料老人ホームが開所している。

 それら介護関連事業は、パナソニックの4つの関連会社がそれぞれ個別に担当していたが、2016年4月1日、パナソニックエコソリューションズ社(分社)の傘下で新会社「パナソニックエイジフリー」(和久定信社長/パナソニックが資本金5000万円を全額出資)1社に統合された。旧4社の事業は「ケアプロダクツ」「ライフサポート」「リテールサポート」の3事業部に改編されている。同社はパナソニックグループの重要な戦略事業会社として旧4社の経営資源を統合し、その組織が強化された。

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パナソニックエイジフリーのホームページ


拠点数を3年で10倍以上にする大胆な成長目標

 パナソニックは介護ビジネスについて、少子高齢化が急速に進む日本ではその役割はきわめて重要だと認識している。2015年時点で日本の高齢化率は26.8%で、介護保険の要介護認定を受けている人は約560万人だが、2025年には「団塊の世代」の大部分が75歳以上の後期高齢者になり、高齢化率は30.3%、要介護認定は約700万人になると推計されている。

 その時に備えて介護の分野を充実させることで、社会の要請に応え、社会に貢献できる。それが今、介護に注力しているベーシックな理由である。パナソニックエイジフリーの発足時の規模は、在宅介護サービスが125拠点、174事業所、介護施設・住宅が28拠点、介護ショップが118店舗となっている。

 中でも今後、重点的に投資して拠点の急拡大を図るのが、同社が「エイジフリー拠点」と呼んでいる介護施設・住宅分野。現状は近畿と関東のエリアだけだが、これを全国レベルに広げる。

 2018年度までの3年間で介護施設は介護付き有料老人ホーム3ヵ所から、ショートステイ施設を併設する「介護サービスセンター」も含めて200拠点にする。また、2014年に参入したサービス付き高齢者向け賃貸住宅(サ高住)は、「小規模・多機能」のコンセプトを推進しながら25ヵ所から150ヵ所に増やす。合計すると、拠点数は28ヵ所から350ヵ所へ、3年間で12.5倍にするという大胆な成長目標を立てている。

 在宅介護サービスの拠点数は2018年度までに125ヵ所から255ヵ所へ約2倍に増やす計画で、介護ショップ店舗を通じたリフォームの工事件数は、2014年度の年約3万件から2018年度は年約6万件へ倍増させる計画になっている。2018年度末には、全国津々浦々に「パナソニックのエイジフリー」の看板が立つことになりそうだ。

 統合前の旧4社の2014年度の売上高合計は約280億円だったが、パナソニックエイジフリー全体の売上高の数値目標は、今年度は370億円。3年後の2018年度は750億円、10年後の2025年度は2000億円で、それぞれ2014年度に比べると2.6倍、7.1倍と、年平均で前年比2倍以上のペース。パナソニックの事業全体を見渡しでも、向こう10年でこれだけ急速な成長を見込む分野はない。

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パナソニックの介護事業売上高(目標/億円)


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