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2016年06月23日

IBM Watson Summit 2016レポート

IBM Watsonが切り拓くコグニティブは、どんなビジネスチャンスをもたらすのか

膨大なデータに基づいて、複雑な事象を理解し、推論し、学習するシステムが、人間を支援する――。そんなコグニティブ時代の到来を象徴し、5月25〜26日にかけて「IBM Watson Summit 2016」が開催された。Day1のゼネラル・セッションでは、IBM Watsonをはじめコグニティブ・システムの活用に積極的に取り組む先進企業や組織の事例も数多く紹介された。もはやコグニティブは将来の夢ではなく、今すぐ効果を生み出す“現実解”として実用段階に達しているのである。

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IBM Watson Summit 2016には数多くの聴衆が押しかけた


DigitizationからDigitalizationへの移行にはインテリジェンスが必要

 コグニティブ・システムは、過去数十年にわたる機械学習や認知科学、自然言語処理、パターン認識、アナリティクスなどの研究成果を高度なレベルで融合したものと言われているが、具体的にこれまでのITと何が違うのだろうか。

 コグニティブ・システムが革新的なのは、テキスト、音声、画像などを人間のように理解し、推論すること。膨大な構造化データ、非構造化データを単に分析するだけにとどまらず、背後に隠れている“意味”や“理由”をも発見的にあぶり出し、自律的に学習を続けながらその精度を高めていく。そして、このコグニティブのコンセプトを実用的なシステムやサービスとして体現したのがIBM Watsonだ。

 今回のIBM Watson Summit 2016は、このIBM Watsonを中心にクラウドやセキュリティ、ハードウェアなどのテクノロジーを総合的にとらえ、「よりよい顧客体験」「意思決定の品質向上」「製品とサービス」「プロセスとオペレーション」「探求と発見の深化」の5つのテーマのもと、コグニティブ・システムが世の中にもたらすイノベーションと、その先に大きく広がっていく新たなビジネスチャンスを示唆した。

 「Watsonではじめるコグニティブ・ビジネスの時代」をメインタイトルに掲げるDay1ゼネラル・セッションのオープニングに登壇した日本IBM 代表取締役社長執行役員のポール与那嶺氏は、コグニティブを活用したビジネスならびに、それを実現するクラウド・インフラストラクチャーに注力していくIBMの戦略を紹介した。

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日本IBM 代表取締役社長執行役員 ポール与那嶺氏


 印象的だったのは、日本語訳では同じ「デジタル化」となる、“Digitization”と“Digitalization”という2つの言葉の違いに言及したことだ。

 Digitizationは既存の情報をデジタルフォーマットに変換するプロセスに過ぎない。これに対してDigitalizationは、ビジネスモデルの変革や新たな価値創造の源泉であり、今後の日本企業にとってもキャッチアップすべき目標となる。「DigitizationからDigitalizationへの移行にはインテリジェンスが必要であり、それを実現するものをIBMではコグニティブ・ソリューションズと呼んでいます」と与那嶺氏は説明する。

 IBM Watsonの日本語化が完了した今、日本企業もこのコグニティブのパワーをクラウド上ですぐに活用できる環境が整った。与那嶺氏は「ビジネスの世界で成果を出すためには多くのデータを集めることが何よりも重要で、学習にもある程度の時間が必要です。その意味でも、いち早く使い始めることが肝心です」と訴えた。

コグニティブ・ビジネスを加速させるエコシステムを拡大

 次に登壇した日本IBM 常務執行役員コグニティブ・ソリューション事業担当の松永達也氏、日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 コグニティブ・ビジネス事業室長 パートナーの中山裕之氏も、「IBM Watsonを活用したコグニティブ・ビジネスは将来の話ではありません。すでに実用段階に達した現実解なのです」と語る。

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日本IBM 常務執行役員コグニティブ・ソリューション事業担当の松永 達也 氏(右)と日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 コグニティブ・ビジネス事業室長 パートナー 中山 裕之 氏


 自然言語を理解するIBM Watsonは、たとえば銀行のコンタクトセンターなどでも導入が進んでいるが、そこでの顧客対応の正答率は90%以上に達している。他業界でもすでに多くの企業が動き始めており、「流通業の94%、ヘルスケアの95%、保険業の98%が、コグニティブへの投資を計画していいます」と松永氏は言う。

 もちろん日本企業も例外ではない。技術系人材サービス業界大手のフォーラムエンジニアリングでは、IBM Watsonを活用した人材マッチングシステム「Insight Matching」を4月1日にリリースし、エンジニアと求人企業の双方の満足度を高めるマッチング精度を約2倍向上した取り組みを紹介した。

 また、IBMではコグニティブ・ビジネスを加速させるIBM Watsonのエコシステムづくりにも注力している。

「グローバルではすでに400社を超えるパートナーが登録しており、そこに所属する8万人以上の技術者が、160を超える大学とも連携しながら、多様なソリューション開発に臨んでいます。このエコシステムからもたらされるイノベーションを、IBMとして積極的に支援していきます」(松永氏)

 ソフトバンクも、こうしたエコシステムづくりをIBMとともに進めている強力なプレイヤーの1社だ。特別講演に登壇した同社 代表取締役社長 兼 CEOの宮内謙氏は、全社員が最新ICTを活用して新たな価値を生み出す「スマート経営」を目指した取り組みを紹介した。

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ソフトバンク
代表取締役社長 兼 CEO
宮内 謙 氏


 IBM Watsonやタブレット、クラウド、ロボット(Pepper)の連携により、現在の仕事に費やしている時間や工数を半減する「half & twice」を全社的に推進していくというのが、そこで描いている構想であるという。

「決して社員を半分に削減したいという意味でありません。現在の仕事を半分の時間、半分の工数でできるようになれば、社員一人ひとりの生産性や創造性を2倍、4倍に高めることができます。2年前にはおぼろげだったこの思いが、今はかなり明確になってきました」(宮内氏)

 そして、このhalf & twiceの実現に向けてソフトバンクでは、「SoftBank BRAIN」と呼ばれるコグニティブ・システムの構築を進めている。これはIBM Watsonを活用することで、コンタクトセンターでの意思決定支援、ショップでの接客サポート、法人営業における提案アドバイスなど、あらゆる業務現場からの問い合わせに対して、正しい(または可能性の高い)回答を素早く行えるようにするものだ。「夏頃までに本格稼働に漕ぎつけたいと考えています」と宮内氏は意気込みを示す。

 また、ソフトバンクのパートナーに向けたハッカソンを開催したところ100社を超える企業が参加。「IBM Watsonを活用したリアルビジネスへの挑戦が始まっています」(宮内氏)。

自動車、保険、医療の領域に広がるIBM Watsonの活用事例

 続くパネルディスカッションには、コグニティブに先進的に取り組む富士重工業(スバル)、かんぽ生命保険、東京大学医科学研究所のキーマンが集結した。

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(左から)ナビゲーターの日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業 ビジネス・コンサルティング担当の池田 和明 氏、富士重工業(スバル) 取締役専務執行役員 武藤 直人 氏、かんぽ生命保険 執行役 廣中 恭明 氏、東京大学医科学研究所 教授 理学博士 ヒトゲノム解析センター長 宮野 悟 氏、日本アイ・ビー・エム 執行役員 ワトソン事業部長 吉崎 敏文 氏


 富士重工業 取締役専務執行役員の武藤直人氏は、27年前から開発に取り組み、現在では国内のほぼ100%のスバル車に搭載された運転支援技術「アイサイト」によって、人身事故率を61%減少できた事実を紹介。「残りの39%の事故をなくすべく、IBM Watsonを活用してさらに精度を高めていきます」と語った。

 すでに複雑な交通環境や悪路など200万kmを超える走行データを蓄積しており、これらのデータをコグニティブ・システムに取り込んで解析・学習し、予測の領域を拡大することで、2020年までに車線変更も行える自動運転が実現する見通しだ。

 かんぽ生命保険 執行役の廣中恭明氏は、難易度の高い支払い審査業務にコグニティブ・システムを活用し、効率化・迅速化を図っていく取り組みを紹介した。

 同社に寄せられる請求件数は年間200万件に達しており、そのうちシステムで機械的に処理できるのは半数にも満たないという。残りの請求については必然的に人による審査が行われるのだが、それには約款のほか医学や法学に関する知識も必要で、習得するのは10年程度の経験を要する。

 現在、約2000人の担当者がこの業務あたっているが、平均すると1人あたり1日で処理できるのは5件程度に過ぎず、経験の浅い担当者でもベテランと同等の判断を行える体制づくりが課題となっていたのである。

「IBM Watsonに200万件のデータを学習させることで、システム自体が請求内容を理解し、調査ポイントを推定し、過去の類似事例と判断材料を提示するというアドバイスを行っており、現在その正答率は9割まで向上しています」(廣中氏)

 そして、ゲノム解析による病気の解明を目指したコグニティブ・システム活用に言及したのが、東京大学医科学研究所 教授 ヒトゲノム解析センター長の宮野悟氏である。

 宮野氏によると、たとえばがん治療を目的としたゲノム解析では、約30億個という膨大な情報(塩基配列)を読み解かなければならないのだが、スーパーコンピューターの進化によって、約250万個の変異の候補を見つけ出すところまでは、行えるようになった。

 とはいえ、その中から患者個人のがんの原因となっている特定の遺伝子を絞り込むことは、もはや人智・人力を超えた世界となる。「IBM Watsonを使えば、それが可能となるのです」と宮野氏は語る。

 すでにデジタル化され、クラウド上の知識ベースに登録されている2400万件以上の生命科学に関する論文を読み込んで学習することで、最終的に標的となるがん遺伝子の候補を数個にまで絞り込むと共に、それに合わせた治療薬の提案を行うのである。

「実際に東京大学医科学研究所の附属病院では、血液および消化器がんについて、昨年よりIBM Watsonを活用して、この臨床シークエンスの検証を開始しました」(宮野氏)

IBMのコグニティブ・コンサルタントがビジネス変革を手厚くサポート

 パネルディスカッションのナビゲーターを務めた日本IBM 執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業 ビジネス・コンサルティング担当の池田和明氏は、「コグニティブ・システムは、もはや特定の領域だけで使われる特殊なテクノロジーではありません。社会の幅広い領域での適用が進み、私たちの生活やビジネス、組織のあり方を大きく変えようとしています。実用化はすでに当たり前となり、普及段階に入っています」と総括。さらに、「世界で2,000人、日本で300人いるコグニティブ・コンサルタントが、皆さまの取り組みを支援します」と語った。

 もちろん、そうしたサポートの対象は伝統的な大手企業ばかりではない。ゼネラル・セッションのクロージングに登壇した日本IBM IBM BlueHub事業開発担当の大山健司氏は、パートナー企業と協力してベンチャー企業を支援しているインキュベーション・プログラム「IBM BlueHub」の3期目を迎えるにあたり、「コグニティブをテーマに、本日よりスタートアップ企業を募集します」と表明した。

 そして、ふたたび登壇した松永氏は、「新しい開発スタイルでブロックチェーンなどのイノベーションを加速する『IBM Garage』を東京に新設」、「ゼンリンとの協業による高度地図ソリューションとIBM Watsonの連携および技術検証」「対話型ロボットの開発を実現する共通基盤の提供」といった3つの新しい取り組みを発表。「これからもIBMはグローバル一丸となって、多様なコグニティブ・ソリューションズをハイブリッド・クラウド環境に向けて提供し、ビジネスの変革を促進していきます」と語り、Day1ゼネラル・セッションを締め括った。

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