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  • 2016/07/08 掲載

ドローンの次は「飛行船」「気球」がくる理由

先行するセコムは実戦投入済み

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期待の急成長市場、ドローン。そこに割って入れる可能性を秘めているのが「飛行船」あるいは「気球」である。100年前の遺物と言うなかれ。現代のハイテクで進化を遂げており、セコムは「飛行船」をドローンとの併用で東京マラソンにも実戦投入した。飛行時間の長さ、機材をより多く積めること、落ちても安全なことが回転翼型ドローンに対抗できるメリット。これらを武器に、「飛行船」や「気球」はドローンと一緒に急成長市場でテイクオフできるのか。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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飛行船には可能性がある


ドローン市場は2020年までに少なくとも5倍以上に急成長

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 いま、近未来の急成長市場として熱い注目を集めているのが、回転翼がついて空を飛ぶ無人の飛行体「ドローン」だ。昨年、ネット通販の「アマゾン・ドットコム」がアメリカで商品の配達に利用する計画を発表して一躍話題になった。日本でも農業用、測量用などですでに商業利用が始まっており、さまざまな分野で実用化に向けて実験が行われている。

 そのドローンの国内の市場規模については、「2030年に約1,000億円」(日経BPクリーンテック研究所)、「2024年に2,271億円」(シード・プランニング)、「2020年に1,138億円」(インプレス総研)など、さまざまな将来見通しが発表されている。数字は違えども、いずれも短い期間での急成長を予想している。たとえば今年2016年から東京五輪が開催される2020年までの4年間で、シード・プランニングは11.3倍、インプレス総研は5.7倍になると試算している。

 やや控えめなインプレス総研のレポートは、2016年は199億円で2015年の104億円から91%増と約2倍になる見込みで、2年後の2018年に2.9倍の578億円、2020年に5.7倍の1,138億円になるという見通し。

 成長率は、ドローンの機体それ自体は今後4年で4.8倍、バッテリーやメンテナンス、人材育成、ドローン保険のような周辺サービスは4.2倍だが、ドローンを利用したサービスは6.9倍になるという予測。航空測量、農薬散布など農業用、建設現場や工場のプラントで使われる整備・点検用だけでなく、災害救援、警備、配達、空撮画像を楽しむエンタメなど、さまざまな用途が考えられている。

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日本国内のドローンビジネス市場規模の将来見通し(単位:億円)
(出典:インプレス総研推定)


 アメリカでは連邦航空局(FAA)が「2020年に700万台になる」という予測を発表している。FAAは2015年末から民間のドローンユーザーの登録受付を始めているが、2016年は台数ベースで娯楽用が190万台、商用が60万台と見積もっている。これが2020年には娯楽用が2.2倍の430万台、商用が4.5倍の270万台に急増するとみている。2020年の商用の内訳は産業調査42%、不動産・航空写真22%、農業19%、保険15%、政府部門2%となっている。

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アメリカのドローンビジネス市場規模の将来見通し(上)とその内訳(下)
(出典:アメリカ連邦航空局(FAA)の推定)


 フロスト&サリバンの分析・予測によると、全世界でドローン自体を製造・販売するプラットフォーム市場は2020年までに60億ドル以上の規模に成長し、ドローンを利用してサービスを提供するサービス市場は2020年代前半にプラットフォーム市場を上回る。

 しかし、ドローンに対してはさまざまな懸念の声がある。まず挙がるのが、テロリストが爆弾を搭載したドローンを飛ばし重要施設に体当たりさせる「特攻」をかけるなど、犯罪に利用される危険性。それ以外では「プライバシーの侵害」と並んで「墜落」の危険がよく挙がる。

 電動なので燃料に引火する心配はなくても、ヘリコプターのような回転翼がついているので「落ちたら物を壊したり、人を傷つけるのではないか」という恐れ。2015年は首相官邸の屋上に落ちたり、長野市の善光寺で法要中のお坊さんの列の中に落ちたりしたが、幸いケガ人は出なかった。

 それを背景に、日本では2015年12月、改正航空法が施行されて人口密集地、空港周辺での飛行や夜間飛行が原則的に禁止され、今年4月には政府施設や原発周辺の飛行を禁止する「ドローン規制法」が施行された。オペレーターの講習や免許制、機体の登録制、保険の強制加入も検討されている。もっとも関連業界は「ルールや規制があるほうがドローンの正しい発展に寄与する」と歓迎ムードだ。

ドローンの活用で先行するセコムが「飛行船」に目をつけた理由

 ドローンを以前から研究し、実用機を開発した企業にセコムがある。民間防犯用として世界初の自律型小型飛行監視ロボット「セコムドローン」、新サービス「セコム・ドローン検知システム」を自前で開発・商品化し、改正航空法の施行に伴う承認を取得して、昨年12月からサービスを開始している。

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「セコムドローン」の利用イメージ
(出典:セコム報道発表資料)


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セコムドローン
 オンライン・セキュリティシステムと組み合わせたセコムドローンは「空飛ぶ監視カメラ」。侵入者や侵入車両があれば自律飛行で飛び、最適な方向から撮影した画像をセコムの「セキュアデータセンター」に送信。それが全国約3000ヵ所の緊急発進拠点からの迅速・的確な防犯対応につながる。

 セコムドローンに取り入れられている技術は、画像認識技術、センシング技術、人物追跡技術、飛行ロボット技術、情報セキュリティ技術、空間情報技術、ビッグデータ解析など。そんなITの利活用が評価され、セコムは6月9日に発表された経済産業省、東京証券取引所選定の2016年度の「攻めのIT経営銘柄」に初めて選ばれた。

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「東京マラソン2016」で導入されたセコム飛行船
 セコムドローンは回転翼型だが、それと別に2014年12月、民間防犯用として日本初の自律型飛行船「セコム飛行船」を発表している。ドローンと同じように上空から地上を俯瞰し、迅速で的確な防犯・防災対応に役立てるというもの。



 サイズは全長19.8m、最大径5.65m。航続時間は2時間以上。複数台の高精細カメラ、熱画像カメラ、指向性スピーカー、集音マイク、サーチライトなどの機材を搭載している。利用する技術は画像認識技術、センシング技術、飛行ロボット技術など、ドローンとほぼ同じだ。

【次ページ】飛行船は決して100年前の遺物ではない

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