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2016年07月22日

プロ棋士に勝ったDeepMindのAIは「眼科医」になろうとしている

2016年3月、グーグル子会社のGoogle DeepMind(以下、DeepMind)が開発した人工知能(AI)ソフトが囲碁の世界チャンピオンであるイ・セドルと対戦し、4勝1敗で勝ち越しました。「AIが人間の知性を超えた」と騒ぐ一方で、「たかがゲーム」と見る人もいるでしょう。しかし、囲碁の次にDeepMindが挑戦するプロジェクトはなんと眼科医。大量に蓄積された眼科検診データを分析し、糖尿病や加齢黄斑変性などに起因する失明因子の理解を助け、早期発見と治療方法の確立に貢献する目的です。AI技術の医療分野への応用で、より大きな社会的インパクトが期待されています。

執筆:佐藤 隆之


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DeepMindのAIは医療分野でどのように応用されるのか


囲碁ソフトのAIから失明を防ぐ眼科医へ

 DeepMindが開発したAIソフト「AlphaGo(アルファ碁)」が囲碁の世界チャンピオンを圧倒した裏で、より社会的なインパクトの大きいプロジェクトが進んでいました。2016年4月、同社はロンドンで最も大きな病院グループの一つであるロイヤルフリー病院などと提携し、目の検査方法にAI技術を適用する研究を発表したのです。

 イギリスでは、36万人もの人々が盲目、または部分的に視力を失っています。失明の原因となる加齢黄斑変性などの影響により、2050年には失明する人の数は2倍になるとの調査もあります。日本でも、成人の失明原因の第1位になっている糖尿病網膜症は症状の進行スピードが速く、かつ、症状が悪化するまで本人も病気に気づかないという問題があります。

 DeepMindのAIは、提携病院の眼科で計測された患者の眼球運動データ(アイスキャン)を分析します。分析結果は医者が患者の疾患を理解することを助け、病気の早期発見や処置の改善に役立てられます。アイスキャン分析の精度が向上すれば、98%の失明が防げる可能性もあるとの予測があり、大きな効果が期待されています。

DeepMindが取り組む眼科検診データ分析とは

 AlphaGoの場合は、過去に行われた囲碁の棋譜を大量に読み込ませ、囲碁の勝ち方を学習していきました。学習の過程では、AI同士で「練習試合」を行い、より勝利に結びつきやすい打ち方を見出していったのが特徴です。眼科データの場合でも、同様の手法がとられます。これまでに計測された眼球運動データを大量に読み込み、精度の高い診断方法を準備し、さらに、新たなデータが送られてきた際に、正しい診断を行うことを狙います。

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(クリックで拡大)

DeepMindが取り組む眼科検診データ分析


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DeepMind
共同創業者
ムスタファ・シュリーマン氏

 DeepMindの共同創業者ムスタファ・シュリーマンは、医療の分野には最新技術の活用の余地が大きいと指摘しており、事実同社は、眼科検診データの研究以前から医療分野への進出を進めていました。

 具体的には、Streamsと呼ばれるモバイルアプリを開発し、患者の血液検査の結果などから急性腎障害(AKI)の診断を助ける仕組みを提供しています。AKIは、イギリスでは緊急搬送の2割を占め、毎年4万人の死者を出しているとの調査があります。早期診断と初期治療によって25%は防止できるとされるため、Streamsは大きな期待が寄せられました。

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