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  • 2016/07/29 掲載

いまさら聞けない「ポケモンGO」の基本、遊び方からビジネスモデルまで

#ポケモノミクス に笑うのは誰か

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米国において公開4日で売上14億円を記録し、空前のヒット作となったゲームアプリ「ポケモンGO」。日本でもリリースから3日間でのインストール数は1000万を突破しており、ポケモンGOの成功は疑いようがなく思えます。しかし、このヒットは長続きするのでしょうか。そして、ポケモン生みの親である任天堂の収益につながるのでしょうか。ポケモンGOの遊び方やビジネスモデル、さらには開発会社である「Niantic(ナイアンティック)」、キャラクターグッズの販売やプロデュースを手掛ける「株式会社ポケモン」といった利害関係者など、ポケモンGOの基礎知識を解説します。

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うとともに、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」を運営。

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空前の大ヒットとなった「ポケモンGO」の基礎知識


そもそも、ポケモンって何? いまさら聞けない基礎知識

 ポケモンGOを紹介する前に、そもそも「ポケモン」とは何でしょうか。ポケモンが初めて世の中に出たのは今から約20年前、ゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター赤/緑」が発売された1996年2月27日のことです。

 物語の中に存在する不思議な生き物である「ポケットモンスター(ポケモン)」を捕獲、育成し、プレイヤー同士が通信してポケモンで対戦できるというロールプレイングゲームとして誕生したのがはじまりです。このゲームが大ヒットし、ゲーム本編作品としてはこれまでに7つのバージョンの続編タイトルが発売されているほか、アニメや漫画、カードゲームなど、さまざまな形でコンテンツ化されています。

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ゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター 赤」のパッケージ(写真左)。2016年2月27日には、後継ハードであるニンテンドー3DSで遊べるソフトバーチャルコンソールのパッケージ(写真右)もリリースされている。

 そんなポケモンが、あたかも現実に存在しているように見えるーー。20年前、ゲームボーイで遊んでいた頃には想像もつかないようなことを起こしたのが、スマートフォン向けゲームアプリのポケモンGOです。2016年7月から世界各国で公開が始まっており、米国と英国で7月6日に、日本では7月22日にリリースされました。

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ポケモンGOの画面
 ポケモンGOが持つ最大の特徴は、実際の風景に仮想のキャラクターを重ねて表示する「AR(拡張現実)」の技術が導入されている点です。ポケモンGOがインストールされたモバイルデバイスを持ったプレイヤーは、ゲーム起動中に特定の地点に近づくとポケモンに遭遇します。画面をスワイプして投げられる「モンスターボール」を使うとポケモンをゲットすることができ、ゲットしたポケモンは育てて強化したり、他のプレイヤーと対戦したりできます。

 GPSとGoogleマップのデータを用いることで現実の地図とゲーム内の地図が同期されており、駅や図書館、寺社仏閣や観光地といった現実世界の場所やモニュメントは「ポケストップ」となって画面上に表示されます。プレイヤーは、その近くを訪問するとゲームに必要な道具が入手できます。

 ポケモンGOは、ユーザーを外出させ、現実世界での人との交わりを促進することを目指している点で、射幸心を煽る最近の携帯ゲームとは設計思想が大きく異なります。実世界とポケモンの世界が混ざり合うことで、スマホ画面を通じて現実世界を新たな視点で見られるようになるのです。事実、ポケモンがいるかのような世界観に惹かれ、WebサイトやSNS上では多くの人々が街中に集まる様子が取り上げられています。

ポケモンGOの収益化を支える「スポンサード・ロケーション」とは

 米国のiOSユーザーだけで1日あたり160万ドルを売り上げていると言われるポケモンGOですが、そのビジネスモデルにも注目が集まっています。主な収益源はアプリ内課金です。基本的な機能は全て無料で楽しめますが、ゲームを有利に進めるアイテムが購入できるというものです。

 一般的な携帯ゲームは、一部の熱心なユーザーによるアプリ課金で、その収益のほとんどを稼ぐという構造になっています。しかし、ポケモンGOの場合、収益の手段はアプリ課金にとどまりません。今後、収益源として導入が見込まれているビジネスモデルのひとつが、「スポンサード・ロケーション」という仕組みです。

 レストランや小売店などの実店舗へ集客したい企業から対価を得て、ポケモンGOのゲーム内で「この店舗に来ればアイテムが獲得できる」キャンペーンを実施するのです。グーグルの広告が「クリックあたり単価」で広告収入を得るのと同様に、実店舗での「訪問あたり単価」で収益を上げるというビジネスモデルです。

 国内において、最初にスポンサード・ロケーションの対象となった企業が日本マクドナルド(以下、マクドナルド)です。現在、国内マクドナルドの約2900店舗が、ポケモンGO内の特別な場所である「ジム」や「ポケストップ」として登録されています。

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プレイヤーがマクドナルドの店舗に近づくと、ポケモンGOを起動したスマホ画面上で店舗のある場所がポケストップとして表示される。画面をタップすると、モンスターボールやキズぐすりなどの道具がもらえる

 さらに、ポケモンGOは前述の機能のほか、トレーディングカードと同じように、獲得したモンスターを他プレイヤーと交換できる機能など、今後の機能拡張も期待されています。さらに、ゲームに熱中するあまり起こる「歩きスマホ」を防ぐため、モバイル端末と連携して基本的な機能を代替するウェアラブルデバイス「ポケモンGO Plus」の開発も進められており、今後も新たなビジネスモデルを模索しているところです。

ポケモン生みの親の任天堂、開発会社のナイアンティックの関係性

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 任天堂はこのポケモンGOを開発するにあたって、外部のパートナーと共同開発する方法を選びました。そのパートナーとなったのは、米Niantic社(ナイアンティック)です。ナイアンティックは2010年にグーグルから独立する形で設立されたベンチャー企業で、2012年には位置情報サービスを使った携帯ゲームIngress(イングレス)を公開しました。

 イングレスは、現実とゲーム内の地図が連動するというポケモンGOと同じ仕組みを持っており、700万人を超えるユーザーを獲得したヒット作です。ナイアンティックの創業者ジョン・ハンケ氏は、地球全体を俯瞰できるGoogle Earthを開発した経歴で知られ、Googleマップを始めとした位置情報サービスを統括する部門責任者を務めていました。グーグルからAlphabetへの持ち株会社移行を契機にゲーム事業は独立の道を選んだと言われています。

 ナイアンティックはグーグルと任天堂から出資を受け、ポケモンGOの開発を進めてきました。2015年にはポケットモンスター関連の商品企画・販売を手掛ける任天堂の子会社「株式会社ポケモン」と、任天堂本社、そしてGoogleから2000万ドルを調達しています。

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ポケモンGOで任天堂は儲けられるのか?

 ポケモンGOのビジネスモデルを考える上で、この資本構成は重要なポイントになります。ポケモンGOの売り上げ自体は、開発元および販売元であるナイアンティックにもたらされるのです。

 ポケモンGOのライセンス条件は公開されていませんが、あるアナリストの分析によると、iOS上でポケモンGOが課金を得るごとに、30%はアプリストアを持つAppleへ、30%は開発元のナイアンティック、30%は株式会社ポケモン、そして10%は任天堂に分配されると見られています。

 このポケモンGOの大ヒットによって最も喜んでいるのは、確立したプラットフォームによって労せずに収益を上げたアップルかもしれません。任天堂が得られるのは、ポケモンGOの部分的な収益のほかに、ナイアンティックが株式公開(IPO)した際の資産利得や、32%の株を保有する株式会社ポケモンからの配当によって得られる収益なのです。

【次ページ】苦境の中で打ち出していた任天堂の戦略

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