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2016年09月23日

シンフォニーマーケティング 庭山一郎社長が解説

MAの次はこれ!アカウント・ベースド・マーケティング(ABM)とはいったい何か

ここ最近、BtoBマーケティングの世界で注目を集めているのが「アカウント・ベースド・マーケティング(ABM:Account Based Marketing)」だ。概念そのものは決して新しくはないが、米大手企業では2013年ぐらいから取り組みを開始し、いずれも大きな成果を上げているという。さらにここに来て、マーケティング・オートメーション(MA)ベンダーの一部もABMへの対応を謳いはじめた。MAとABMはどう違うのか。なぜ、ABMを導入すると売上が向上するのか。さらにABMを実現するにはどんなツールが必要なのか。本稿で徹底解説する。

執筆:中村仁美、企画・構成:編集部 松尾慎司

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ABMは決して新しい概念ではないが、とにかく成果が出るのが特徴だ


 最近、マーケティングの世界でABMというキーワードが注目を集めている。ABMにはまだ確固たる定義があるわけではないが、米ITSMAによれば、以下のように説明されている。

Account Based Marketing provides a vital strategy for companies that want to create sustainable growth and profitability within their most important client accounts. ABM focuses explicitly on individual client accounts and their needs. More importantly, it is a collaborative approach that engages sales, marketing, delivery, and key executives toward achieving the client’s business goals. All of these attributes contribute to the success of ABM in practice.

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは、企業が持つ重要なクライアントにとって、持続的な成長および収益をもたらすための活力ある戦略を提供するものだ。ABMでは、各クライアントとそのニーズに明確に焦点を当てていく。もっとも重要なことは、クライアントのビジネス目標の達成に向け、セールス、マーケティング、デリバリの担当者、および主となる役員が協力してアプローチを行うことである。

 より端的に表現したのが、BtoBマーケティングを手がけるシンフォニーマーケティングの庭山一郎社長による定義だ。

ABMとは、顧客・見込み客データを統合し、マーケティングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントからの売上げ最大化を目指す戦略的マーケティングのこと。


ABMはなぜ生まれたのか?MAとは何が違うのか

 ここ数年、日本のデジタルマーケティング分野では「マーケティングオートメーション(MA)」が注目を集めていた。MAとは、主にマーケティングの各プロセスを自動化するためのソフトウェア/サービスのこと。メール配信やセミナー管理、Webアクセス履歴、登録フォーム、リード管理、スコアリングなどの機能が搭載されている。庭山社長は「マーケティングをひと言で言うと『売れる仕組み作り』のこと。昨今はMAツールが流行り言葉になっているが、基本的にはBtoBに適したツール」と説明する。

 MAでは顧客や見込み顧客に対して、最適なコンテンツを最適な方法で届けることができるため、デマンドジェネレーションを期待した導入が進んだ。デマンドジェネレーションとは、見込み案件の創出のこと。リードジェネレーション(見込み客の獲得)、リードナーチャリング(見込み客の育成)、リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)という、有望見込み客を営業部門へと渡すための一連のマーケティング活動全般を意味する言葉である。

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シンフォニーマーケティング
代表取締役
庭山 一郎 氏

 デマンドジェネレーションという言葉が米国で流行り始めたのは「今から16年前の2000年ぐらいから」(庭山社長)。その発端は、今はオラクルに買収されたEloqua(エロクア:現在のOracle Marketing Automation)というMA製品が登場したことによる。これがきっかけで、米国で急速に普及が進み、大手企業ではデマンドセンターという組織も作られた。

 しかしMAを活用し、有望見込み客(リード)を渡しても、なかなか営業が追わない問題が発生。「無視率(営業によるリードの不使用率)が多いことが問題として顕在化してきた」と庭山社長は説明する。

 米国では日本とは異なり、トップ企業のほとんどにマーケティング部門が存在し、同部門のメンバーにはマーケティングROI(mROI)が求められる。つまり営業のリード無視率を下げなければ、部門トップのCMOはその責務を負わされることになるわけだ。こうした中、「無視率の解決策を模索する中で登場したのがADRとABMだ」(庭山社長)。

 ADR(Account Development Representative)とは、リードを営業や販売代理店に配分する役割を担う組織を営業側に設置することで解決しようというもの。「サッカーにたとえるとトップ下。そこにボールを集めてキラーパスを出し、シュート(営業)を決めてもらおうという方法で、企業によってはBDR(Business Development Representative)、SDR(Sales Development Representative)と呼ばれることもある」(庭山社長)。

 そしてもう一つの方向性が、今回のテーマでもあるABMである。ABMでは、MAのように「人単位」ではなく、アカウントベース、つまり企業単位でマーケティングを考えるというものだ。企業単位であることの重要性は後述するとして、「新しい概念として登場したように見えるが、デマンドジェネレーションの問題を解決するための概念であり、デマンドジェネレーションの別物というより、それをベースにした進化形と言える」と庭山社長は説明する。

 具体的な違いは下図の通り。「ABMに取り組むと、営業が追いかけたいリードだけが提供されることになり、無視率が大幅に削減できる」(庭山社長)。

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従来からあるデマンドジェネレーションとABMの違い

(出典:Engagioの資料などをもとに編集部作成)


ABMなら米国、日本、それぞれのまったく異なる課題に対応できる

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 マーケティング先進国の米国において、MAによってリードの「無視率」が高くなった背景には、米国ならではの事情もある。これまで米国ではトップダウンで意思決定されることがほとんどだったため、営業も部門のトップであるCxOにしか会わないという手法を採用していた。したがって、リーダーやマネジメントクラスのリストを渡しても、無視されてしまっていた。しかし、「米国でも意思決定のダウンサイジングが進み、CxOにだけ会うという営業手法ではうまくいかなくなってきた。そこで無視率の低減、これまでの営業手法を見直すことができる手法としてABMに期待が集まってきた」と庭山社長は説明する。

 一方、日本におけるMAは、「メール配信ができる環境が整ってきたというステージが多く、無視率の改善というところまでは至っていない」(庭山社長)。

 では日本ではABMは無用かといえばそうではない。日本特有の課題、「縦糸しかなく、横糸がないことだ」と庭山社長は指摘する。多くの日本企業では事業部制を採用しており、事業部ごとに製品の開発、製造、販売、サポートはもちろん、展示会の開催までも完結していることが多い。この事業部制の最大の欠点は、隣の事業部が何をしているのかが見えにくいことだ。

「たとえば自分たちがずっとアプローチしたいと思っていた顧客が、実は隣の事業部の得意先だったということがある」

 つまり顧客を点でとらえがちで、面でとらえてこなかったのである。顧客を点でしか捉えられていないと、さまざまなビジネスの機会損失が生まれる。たとえばシステムインテグレータであれば、せっかく、常駐して情報システム部との関係を築いているのに、アプリケーションの導入決定権がある業務部門担当者と関係を築けていなかったばかりに、アプリケーション部分を他の会社に取られてしまうということが起こってしまうというわけだ。

ABM導入のメリットとは?ABMで組織はどう変わるのか

 こうした問題を解決できるのがABMだ。ABMなら顧客企業を企業全体、点ではなく面で捉えるアプローチができるようになり、かつ分厚い組織の壁も壊すことができる可能性がある。つまり、さまざまなコンタクトポイントで収集された顧客・見込み客データを統合し、定義されたターゲットアカウントにフォーカスすることができるからである。

 ABMがもたらす企業変革はそれだけではない。

 まず顧客ターゲットの設定方法が変わる。MAでは基本的に「個人の行動とその属性」でターゲティングする。たとえば、ある人が数千万円もする汎用機のサイトを何度も訪れ、クリックしたとしよう。その人の役職は取締役だが、オフコンの導入にはまったくの無関係。しかし、個人的な興味から何度もそのサイトを訪れていれば、リスティングされてしまうことになる。営業が電話をかけてアポが取れ、売り込みに行ってもに数千万のオフコンはおそらく売れない。このようにMAの場合は、本来ターゲットではないものもリスティングしてしまうことがある。

 一方、ABMであれば、人単位ではなく「アカウント(企業)単位」で見る。つまり、人ではなく、企業単位で導入を検討しているのかどうかを明らかにしようとする。そのため、営業が「ここなら行きたい」という企業がリスティングされやすくなり、MQL(Marketing Qualified Lead)の無視率の低減、コンバージョン率の大幅な向上が図れる。

 またアカウント単位にすることで、売る製品も変えることができる。たとえば300万円の複合機を主力製品としている会社で、5万円の新製品を作ったとしよう。新製品を売れと言われても、営業の立場で考えると、どちらが売りたいかというと売上(営業成績)につながる300万円の複合機である。しかもそれが成熟度の高い手離れの良いものならなおさらだ。

 しかし5万円の新製品が300拠点に一斉に入る可能性があるという情報があれば、営業はどのような行動をとるだろう。単純計算すると、1,500万円の売り上げが期待できる。おそらく営業は5万円の新製品でも積極的に売るようになるだろう。

 実は新製品が売れないのは、営業が売りたいと思う条件に合致していないからなのだ。しかし、アカウントをベースとすれば、営業が売りたいという条件に合致しない製品でも、売れるようにすることができる場合がある。このように販売製品の多様化、クロスセルが可能になるため、ABMは既存顧客の売り上げを最大化することができる戦略として期待されているのだ。

 さらにABMでは全社のみならず、販売代理店などの情報とリソースを動員・連携するため、シナジーのある提案ができるようになる。したがって顧客との深く密接な関係を築けるようになる。

【次ページ】ABM関連製品、導入事例

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