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  • 2016/10/07 掲載

ハウステンボス 澤田社長「将来の三ツ星・四ツ星ホテルは『ロボットホテル』になる」

ロボットはビジネスをどう変える?(3)

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ハウステンボス 代表取締役社長、エイチ・アイ・エス 代表取締役会長を務める澤田 秀雄氏に、ロボットへの取り組みを聞いた前回。今回は、「変なホテル」の1年間の具体的な成果と、さらなる改善点、新規ロボットの導入、世界展開などについて聞いた。もはやハウステンボス(以下、HTB)は単なるアミューズメントパークというよりも、ロボットの民間実証フィールドにもなっており、その成果を運用ノウハウごと世界で展開しようという壮大な計画があるようだ。澤田氏は、この世界展開にも大きな自信を見せている。HTBの試みは、サービスロボットのビジネスが、本当にグローバルなものに発展するための試金石になりそうだ。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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「ロボットホテル」は世界を席巻するのか


ロボットの導入で30人弱の従業員が1年で9人に

──「変なホテル」(詳細は前編を参照)については、この1年でかなりの成果があったとお聞きしています。詳しく教えていただけますか?

澤田氏:大きな成果がありました。1年前は30人弱の従業員がいたのですが、16人、12人と減り、この6月には10人まで減りました。今月から9人体制になります。さらに半年後(2017年3月)には、6人まで減らします。この6人は朝昼晩のシフト勤務と、休みを含めての人数ですから、実質的には1人か2人で済んでしまいます。

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「変なホテル」の1年間の成果。ロボットの導入により、人件費の大幅な削減に成功。従業員数は30名から9名へ(2016年9月現在「)

 ただし掃除については、いまもロボットで全部できていません。ロボットで9割ぐらい掃除をやらせ、残り1割は人間が補う必要があります。ゼロになりませんが、それでも5人強の人手が1人で済むようになります。現在、導入中の清掃ロボットも9割以上カバーします。少しだけ人間がチェックしてあげれば、これで99%になります。

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シャープとアマノが開発した業務用清掃ロボットを導入。シャープ独自のセンシング技術や走行制御アルゴリズムを採用している

──たぶんロボットを導入していく中で、やり残しがある部分はありますよね。

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ハウステンボス
代表取締役社長 兼
エイチ・アイ・エス
代表取締役会長
澤田 秀雄氏
澤田氏:ロボットで精度を上げるほうが良いのですが、それが無理ならば人が対応したほうが早いです。1割ぐらいの話ですから、そこは運用でカバーする。すべてをロボットにやらそうとするから、いつまでも導入が進まないのです。皆さんは運用が上手くない。完全に人の代わりをするロボットが登場するのは、まだ10年以上は先の話でしょう。しかし、この部分はロボットでやらせ、ここだけ人間がやると言うように分担すれば、それでほぼ対応できます。

──「変なホテル」では、ベッドメイクや水回りなどの掃除も、ロボットでやらせようとお聞きしたのですが?

澤田氏:トイレや風呂場など、水回りをロボットで掃除できるように開発を進めています。これも端から端まで100%ピカピカにすることはできませんが、まあ9割ぐらいロボットでやって、あとは人がサーっと拭き掃除をすればよいだけのことです。それで10分の時間が1分に短縮できればOKです。

──これらのロボットも、先ごろ立ち上げたロボット会社「ハピロボカンパニー」で開発しているのですね。

澤田氏:そうです。建設費を除いて、最もコストがかかるのが人件費と光熱費です。中でもフロントと掃除にお金がかかっていました。これらをロボットに変え、さらに生産性を上げました。芝刈りロボットも導入しましたが、バッテリがなくなったら、自分で充電器に戻ってくれて、健気ですよね(笑)。寒かろうが、暑かろうが、よく働いてくれて、本当にかわいい奴ですよ。窓拭きロボットも一生懸命に掃除をしています。開業時は6種類82台だったロボットが、16種類182台まで増えました。

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スウェーデン発のハスクバーナ・ゼノアのロボット芝刈機「Automower 330X」。GPSシステムを搭載し、ガーデンを自動清掃できる
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この7月に導入したばかりの窓拭きロボット。外側よりも、内側の窓のほうが人の手で指紋が付きやすいのだという


電子台帳や音声入力、指紋認証を駆使! 顔認証も実験中

──「変なホテル」は1年が経ち、いろいろなことが見えてきたと思います。何か変わった点はありますか?

澤田氏:最初はフロントで日本語しか喋らなかったロボットを、日英韓中4か国語に対応させ、人員削減のためにチェックイン方法も変えました。宿泊カードを電子台帳にしたり、音声入力システムを導入したのです。パスポートでの認証も、いまシステムを構築中で、年内にできると思います。

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フロントシステムのロボットは3台に。日・英韓中の4か国語に対応し、パスポートによるチェックインシステムも構築中だ

 顔認証はフロント登録ではなく、部屋の前での登録と開錠方式にしました。またスマホから自分の顔を登録し、フロントでロボットがお客様を認識するシステムの実験もスタートします。ただし顔認証は、光の具合によって、たまに誤認識することがあります。そこで、どういう認証方式が良いのかを確認する実験を行います。私の感覚では指紋認証のほうが誤認識しないため、よいような気がします。指紋でもドアは開きますし、顔認証にこだわる必要はありません。すでにHTBでは会員向けに指紋認証で決済ができるようになっています。

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顔認証はフロント登録をせず、部屋前の登録と開錠方式に変更し、待ち時間を短縮。将来は指紋認証にする可能性もあるという

──そうなると指紋認証で、ホテルのチェックインから部屋の出入り、決済までを一元的に管理できてしまうわけですね。

【次ページ】 100棟を目標に「変なホテル」を世界展開、「秘境」目指しエネルギー分野へも投資

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