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  • 2016/10/06 掲載

豊洲だけじゃない! 「土壌汚染」は全国に90万カ所以上ある

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東京都江東区の豊洲新市場の土壌汚染に注目が集まる中、今年に入って全国各地で同様の汚染が相次いで明るみに出ている。多くが工場や大学、病院の跡地で、過去に漏れ出した有害物質が土壌を汚染したとみられる。人口減少時代を迎え、コンパクトシティ実現に向けた地方自治体の再開発が今後、進みそうな見通しだが、元日本環境学会長の畑明郎元大阪市立大大学院経営学研究科教授(環境政策論)は「見つかったのは氷山の一角。土壌汚染の恐れがある場所は全国に90万カ所以上ある」と指摘する。いつどこで土壌汚染が見つかっても不思議でないのが日本の実情だ。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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敷地内から六価クロム化合物が検出されたグラビア製版会社=香川県高松市木太町
(写真:筆者撮影)

姫路の卸売市場移転予定地で基準値上回るベンゼンとヒ素

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 兵庫県姫路市では1月、市中央卸売市場の移転場所となる出光興産兵庫製油所跡地(約11万2,000平方メートル)から、土壌汚染対策法の基準値を上回るベンゼンとヒ素が出光興産の調査で検出されたことが明らかになった。土壌中のベンゼン濃度は基準の最大30倍、ヒ素は最大5.4倍。地下水からも基準値を超すベンゼンが見つかっている。

 市はあらためて敷地内147カ所でボーリング調査するとともに、土壌汚染対策の有識者で構成する専門家会議(座長・平田健正放送大学和歌山学習センター所長)を急きょ立ち上げ、対応協議に入った。

 市の調査では、約30年前に埋め立てられた地層の2カ所で基準を超すベンゼンを検出したが、専門家会議は飛散や流出防止の対策をすれば、安全性を確保できると判断している。

 この土地は埋め立て地で、1987年から出光興産が所有している。製油所が敷地内に建設されたことはないが、隣接地に設けられており、閉鎖された2003年以後、製油所跡地で出た土砂が置かれていたという。

 市は2017年3月までに敷地内全域を調査したうえで、汚染土壌の除去や地下水の浄化に取り掛かる方針。新市場の設計も並行して進め、当初の計画通り2021年度の移転開設を目指すことにしている。

 姫路市中央卸売市場は「近く敷地内全域の調査に入る。専門家会議の指示に従い、安全性を確保したうえで、新しい市場を建設したい」と語った。

 香川県高松市では3月、日本たばこ産業の倉庫跡地から基準値の最大38倍の鉛や15倍のヒ素、4倍のフッ素が検出されていたことが分かった。地下水からも最大2倍を超すフッ素が見つかっている。

 現場は海面を埋め立てて造成された工場用地で、日本たばこ産業の前身・日本専売公社が1950年に取得し、葉タバコ倉庫として利用してきた。それ以前には鉄工所があったが、汚染源については分かっていない。

 さらに、市内にあるグラビア製版会社の敷地から基準値の最大5.6倍の六価クロム化合物も検出している。この会社で製品の表面保護に使用していたものが漏出した可能性があるという。

 高松市環境指導課は「両事業所の周囲に住民の飲料用井戸はなく、地下水汚染も確認されていない。住民に直ちに影響はない」と述べた。

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2016年に問題になった主な土壌汚染

大阪では10年前のアメニティパーク土壌汚染が再燃

 大阪府大阪市北区では10年以上前に大問題になった大阪アメニティパークの土壌汚染問題に再び火がついている。

 南側に隣接する大阪市立北稜中学校の敷地から環境基準を超すセレンやヒ素が検出され、除去工事を余儀なくされたとして、大阪市が三菱マテリアルに対して4,000万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こし、7月から審理が始まったからだ。

 大阪アメニティパークは三菱マテリアルの前身である旧三菱金属の大阪製錬所跡約5ヘクタールの再開発で生まれた。旧淀川沿いのウォーターフロントという恵まれた立地を生かし、ホテル、商業、オフィスビルやマンションを1996年から順次開業した。

 しかし、地下水から下水道基準を超えるヒ素、セレンが検出され、敷地内土壌もヒ素、セレン、鉛などで高濃度汚染していることが分かった。さらに、マンション地下駐車場の壁に付着した水あかから法定基準の22倍に及ぶヒ素とセレンが検出されたほか、隣接する毛馬桜之宮公園から環境基準の最大2.7倍に当たる鉛が見つかるなど深刻な影響も明るみに出た。

 大阪府警は土壌汚染を隠ぺいしたまま、重要事項として購入者に説明せずにマンションを販売したとして、関連会社の役員らを宅建業法違反の疑いで書類送検。国土交通省は土地所有者の三菱マテリアルや土壌汚染対策工事施工者の大林組などを宅建業法違反で業務停止とする行政処分を下した。

 このときと同じような土壌汚染が今度は北稜中学校の校舎建て替え工事で見つかったわけで、大阪市教委総務課は「現在係争中の裁判で市の主張を訴えていきたい」としている。

【次ページ】日本の土壌汚染対策は後回しにされてきた

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