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2016年10月25日

NVIDIAジェンスン・ファンCEOが説く、なぜAIやディープラーニングにGPUが必要なのか

AIの世界は、もはやSFではない。GPUを使ったディープラーニングは、AI革命をもたらすコンピューティングモデルのブレークスルーとなる。そう熱く語るのは、NVIDIAの年次イベント「GTC 2016」に登壇した、NVIDIAのCEO ジェンスン・ファン氏だ。同氏は基調講演において、NVIDIAのGPUディープラーニングが、ロボットや製造業、自動運転など、あらゆる分野で威力を発揮することを示した。

執筆:フリーライター 井上 猛雄

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米NVIDIA
共同創業者 社長
兼 CEO
ジェンスン・ファン氏


ブレークスルーを起こすAI革命の舞台が整った

 「1995年頃からインターネット時代がスタートし、10億人のPCユーザーを生んだ。その10年後にはモバイル時代が始まり、25億人のユーザーを生んだ。そして現在、GPUディープラーニングにより、ソフトウェアやマシン自身が学習する、インテリジェントデバイスのAI時代が始まった」と語るのは、米NVIDIAの共同創業者 社長 兼 CEOを務めるジェンスン・ファン氏だ。

 AIはこれまで何度もブームが訪れたが、当時は巨大な能力を要する計算機のパワーや、学習のためのデータが足りなかった。「ところが、インターネットの普及により、ビッグデータが蓄積され、研究者たちが『NVIDIA CUDA GPU』を試し始めると、その様相も変わってきた」(ファン氏)。

 ファン氏は「いよいよブレークスルーを起こすAI革命の舞台が整った。我々が発明したGPUコンピューティングは、いまや最もエキサイティングな進化の核になった。GPUはAIにパワーを与える。そしてAIによって、すべてのものがアシストされ、加速される。もはやSFの世界は夢物語ではない。我々はインテリジェンスを加速する『AIコンピューティングカンパニー』として知られるようになった」と胸を張る。

なぜAI研究者はGPUをディープラーニングに使うのか

 それを裏付けるように、GPUを採用したディープラーニングの開発者も急増中だ。NVDIA GPUを利用するAI開発者はこの2年間で25倍の約5万5000人にまで増えている。では、なぜAI研究者はGPUをディープラーニングに利用するのだろうか? この点について、ファン氏は「脳はGPUのごとし、GPUは脳のごとし」という例を挙げる。

「人間が何かを考えるとき、脳はメンタル・イメージを想起する。これはGPU内にある大量のプロセッサーが、CGなどを生成するときと同じだ。そこで脳はGPUのごとしだ。一方、GPUが大きな問題を並列に実行するのは、脳のシナプスに接続されたニューロンが並列処理を実行することに似ている。そのためGPUは脳のごとしなのだ」(ファン氏)

 ディープラーニングは、ソフトウェアの開発方法と実行環境を変えていく。ファン氏は、「例えば、サーバ、データセンター、インテリジェント・デバイスのアーキテクチャとデザインを本質的に変容させる。コンピューターは自ら学び、意味づけを行い、ますます自律的になるだろう」と予測する。

 実際にマイクロソフトの「ResNet」(注1)は、2015年までの3年間でモデルサイズが16倍になった。一方、バイドゥ(百度)の「DeepSpeech2」も、わずか1年でモデルサイズが4倍になり、学習能力は10倍に増加しているという。

(注1)「ResNet(Deep Residual Learning)」:Microsoft Researchが発表したディープラーニング(特に畳み込みニューラルネットワーク)の構造。154層で画像を学習することにより、人間を超える精度が得られた。

 ファン氏は「我々は、世界中のAI開発者と協力し、この5年間で多くのことを学んだ。GPUはディープラーニング・アルゴリズムの処理に適している。『Pascal』は、ディープラーニング用に設計された最初のGPUアーキテクチャだ。我々は『NVIDIA DGX‐1』を開発し、学習速度を4年で65倍に向上した。TensorFlow、Chainer、Caffe、CNTKといった主要なディープラーニング・フレームワークの高速化にも寄与している」とし、GPUエコシステムの広がりもアピールした。

 会場では、GPUアーキテクチャや推論処理チップを活用した具体的なデモを紹介された。NVIDIAがデータセンターでの推論用に開発したアクセラレータ「TESLA P4」と「TESLA P40」を採用したマシンでカメラで聴衆の映像を取り込み、あらゆる芸術家の画風を学習し、リアルタイムで画像処理を施したストリームを流した。その場のスクリーンで、ピカソ風に変換された自身の姿が映し出されると、会場が大きな拍手で沸いた。

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ディープラーニングで描いたピカソ風の画に会場が大盛り上がり


ファナックの未来工場に採用されたAIプラットフォーム

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 検索・認識・レコメンデーション・翻訳など、ディープラーニングはヘルスケア、自動車、Fintech、Webサービスなど、世界中の1500以上のスタートアップが導入している。この動きは日本国内でも同様だ。

「例えば、PFN(Preferred Networks)はIoTアプリケーション向けのAIソリューションやディープラーニング・フレームワーク『Chainer』を開発している。楽天はディープラーニングによって、自社のオンライン・フリーマーケットで、商品分類を自動化した。みずほ証券は株式取引の予測精度を向上している」(ファン氏)

 さらにIoTの普及によって、AIを搭載したインテリジェントマシンが何十億台にも膨れ上がるものと予測されている。家庭ではクラウドに接続されたAIカメラが訪問者を認識する。AIマイクもクラウドにつながり、自然な対話を実現する。AIドローンは人の近づけない場所を飛行する。AI配送ロボットも的確なナビゲーションを提供するようになる。

 特にロボット分野では、すでに200万台近い産業用ロボットが世界中で稼働中だ。GPUディープラーニングは、AIロボティクス・マニファクチャリングにとって不可欠なものだ。ロボットはAIにより反復学習を行い、人の近くで安全に作業し、複雑な動作を実現する。スマートフォンからジェットエンジンに至るまで、さまざまな製品を組み立てられる。

 ファン氏は「今回、ロボティクス分野で世界的にリードするファナックとパートナーシップを結んだ。AIロボティクス・マニファクチャリングのビジョンに向け、我々の製品を提供できることを光栄に思う」と語った。

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自社のロボット制御プラットフォーム「FANUC Intelligent Edge Link and Drive System」へAIを実装したファナック。機械学習により、柔軟な生産体制が可能になる


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ファナック
取締役専務執行役員
ロボット事業本部長
稲葉清典 氏

 ファナックは、自社のロボット制御プラットフォーム「FANUC Intelligent Edge Link and Drive System」(FIELD System)へAIを実装し、エンド・ツー・エンドで知能ロボットを実現する意向だ。

 この発表では、ファナックの取締役専務執行役員ロボット事業本部長の稲葉清典 氏も登場。同氏は「ロボットが機械学習によって柔軟性をもつことにより、変化の激しい顧客の要求にも迅速に対応できるようになる」と、AIロボティクス・マニファクチャリングの優位性を示した。

【次ページ】NVIDIAが開発している自動運転の要素技術とは

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