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2016年11月04日

森山和道の「ロボット」基礎講座

物流ロボットまとめ、「圧倒的な人手不足」による逆境克服から学ぶべきこと

今回は物流ロボットについて語りたい。これまでにも述べてきたが、今後、どの分野でロボットのさらなる活用が増えそうかと聞かれたら、まず第一に物流分野での伸びが期待されるからである。縁の下の力持ち的な業界で、業界外の人たちからは縁遠いかもしれないが、物流業界でのロボット活用のあり方には、今後の他の業界でのロボット導入にも参考になる点が多い。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

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マキテック ロボットパレタイザー


省人化は待ったなしの課題

 なぜ物流分野での伸びが期待できるのか。まず背景を簡単に述べる。どの分野でも同じだが、生産年齢人口の減少問題がある。ネット通販一つとってもわかるとおり、「経済の動脈」たる物流の需要はどんどん伸びている。だが人手は集まりにくくなっている。何しろ物理的に人の数が減っているのだから全産業で人で不足になるのは当然なのだが、物流分野で人が集まりにくい理由はそれだけではない。

 物流センターには大きなスペースが必要だ。だから、郊外にあることが多い。今は街中のお店が24時間開店しており、ネット通販で注文すると夜中であっても倉庫から出荷される時代だ。ということは、倉庫は夜中にも動いていなければならない。夜間に、街中から離れた倉庫で働く人が必要になるわけだ。

 また、物流センターが置かれるような場所は大きな国道があり、交通の便はいい。というわけで、その近隣には大規模なショッピングモールなどが建設されることも、しばしばだ。そうなると、ここでもパートなどの人手の奪い合いが起こる。夜間に身体的にきつい仕事をしたがる人は少ない。そして物流業界では人手が足らなくなるという次第である。

 どこの業界でも共通の課題なので、もう少し話を続ける。人手を集められないと、急に発注が増えても対応できないし、いくら景気が良くても業務を拡大できない。だがもはやそういうレベルの話ではなく、今や死活問題だという声も、各業界・各社の人たちから本当によく聞く。コストカットだけが省人化の理由ではない。求人を出しても、時給を上げても人がこない。しかし顧客の要望は増すばかり。対応しきれない。これは日本が抱える普遍的な問題なのだ。

 いま現在はまだギリギリ人手を確保することができて仕事が回っていても、安穏とはしていられない。人口動態を見れば明らかだが、今後、人手不足が解消の方向に向かう理由は全くない。

 今後は要介護者のさらなる急増により、介護に人手が取られるという問題もある。むしろ事態は悪化していくことが容易に予想される。なにしろ日本では2020年に65歳以上人口が3割になり、2050年には総人口が1億人を割り、そして2060年には65歳以上人口が4割に達するのである。これが現実だ。

 他人事ではない。いまこの記事を読んでいるような方ならば、通販で本や衣料品、食品などを購入することに何のためらいもないだろう。時が経ち、高齢になり、出歩くのが不便になってくると、さらに通販への依存度は増す。今後、物流のニーズがさらに増大するのは自明である。

 だから、まだなんとかなっている今、いったん止めてでも業務全体を見直して、省人化できないと、今後非常にまずいことになるというのが大方の経営層の見立てだ。

倉庫内を自走するオットーのAGV


業務の単位化と分割化がシステム化への道

 だが、物流分野でのロボット活用が期待できる理由はこれだけではない。物流分野では、すでに多くの工程が自動化・機械化されていることこそが、その理由である。

 まず何よりも、多種多様な荷物をあつかっている一方で、それらがコンテナやパレット、ケースといったかたちで、規定の単位にまとめられている。どんな仕事でもそうだが、規定の単位にまとめることで機械が扱いやすくなるだけでなく、システム化が容易になる。

 大事なことなので強調しておきたい。機械が仕事をこなせるのは、全体の仕事の流れがシステム化・構造化されており、一つ一つの業務が自動機械で置き換え可能な単位まで分割されている環境だ。

 多種多様なものを多種多様なままで扱おうとするのは愚の骨頂だが、実情としてはそのままの業界も多い。それは既に物流業界では終わりつつあり、先へと進んでいるのだ。モノは規定のサイズ、規定の単位にまとめられて、規定された場所から場所へと決められた方法で動く。もちろんそれに関する情報も一緒に動いていく。

 「繰り返し同じことを正確に行う」ことだけが求められる状況にまでタスクを分割することができれば、つまり要求された仕様が適切であれば、機械は性能を存分に発揮できる。プログラムを入れ替えることで別の作業ができるロボットであっても、それは同じだ。

 これは物流だけではなく、他分野でも言えることである。ロボット化、自動化のための必要条件と言ってもいい。逆にいうと、これができてないからこそ、他の業界でのロボット活用がうまく進んでいないのである。ロボット化の前に、まずシステム化が必要なのだ。

 そして物流現場では、現在は人が行っている仕事も、よく分割されているのである。現状、人がやっている仕事は主にピックアップや工程間の搬送である。それはまだ機械の能力が足らないがために人がやらざるを得ないから人がやっているだけで、すでに出庫や包装など多くの仕事が十分に、これ以上ないくらい構造化・分割化されているのだ。

 事前にそれだけ環境側が準備されているわけだ。一つ一つのステップで、やるべきことを絞りきっている。ここに新技術が加わると、これまでできなかったことが徐々にできるようになる。これが、物流分野で今後のロボット化・自動化が期待できる最大の理由である。

 物流とロボットというと、アマゾンが「フルフィルメントセンター」で導入している倉庫内を動き回る移動棚ロボットや、最近だとアスクルの「ASKUL Logi PARK首都圏」へのピッキング用ロボットの例を思い浮かべる人も多いと思う。搬送ロボットも多い。だが、それらが導入されるためには、そのための下準備、あるいは考え方の転換が必要なのだである。

Amazonのフルフィルメントセンター


 もう一度強調しておくが、逆にいうとこのような業態の業界であれば、あるいは今はまだ実現できなくてもこのように構造化できる業界であれば、今後もロボット化・自動化が期待できるということでもある。今後、ロボット業界参入を狙う人たちにとって、物流業界は良いお手本となると思う。

ダイフクによる物流センター紹介ビデオの一つ


物流業界の自動化システム

アスクルとロハコの物流プラットフォーム


 たとえば一般人にも馴染みの深い通販だと、顧客からの商品発注・システムによる受注のあとは、在庫・入庫(棚入れ)、ピッキング、梱包、仕分け、配送といった手順を取る。このそれぞれの過程がシステム管理設計されている。

 このうち後ろのほう、段ボール箱を自動で作る製函機やテープやフィルムを使った自動梱包、自動ソーターによる仕分けの様子などは、しばしばネットで話題になったり、テレビのバラエティなどでもよく紹介されているので、どこかで見たことがあるのではないだろうか。動画を見ているだけでも、とても気持ちがいい。いつまでも見ていられる。

Intralox社のソーター


 このような機械のなかには、全方向移動ロボットでよく用いられている「オムニホイール」と呼ばれる特殊な車輪を使った仕組みを採用しているものもある。いわば、全方向移動ロボットを逆向きにつけて、その上を荷物が運搬されているわけだ。

Cellular Conveyor社の全方向移動セルコンベア


 おろらく、ロボット技術のなかにはこのようなかたちで使えるものが、まだまだあると思う。そのためにはロボット技術者と様々な現場の人たちがもっと互いに交流しあう必要がある。

ダンボールを組み立てる全自動製函機

 なお、最後の最後、いわゆる「ラストワンマイル」と言われている部分、トラックから荷下ろしして各家庭まで物品を届ける部分については、自動化は難しい。

 一部マンションなどであれば、物流側よりもむしろ建物側の設備として自動宅配受けつけボックスのような装置を開発・設置して対応することは可能かもしれないが、どの家庭の玄関までも機械で届けるということは人同様の機械ができないと無理だ。多少の手伝いが機械化される部分はあるだろうが、おそらく最後まで自動化されない業務として残るだろう。

 メディアではロボットが玄関まで届けに来るといった絵面が面白いため、ここの部分が強調されすぎて伝えられることが多いが、本当の革新はあまり見えてない部分で進んでいる。

段ボール封筒に商品を自動で梱包するメール便自動梱包機


【次ページ】ロボットを使って倉庫の無人化を目指す物流業界

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