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2016年11月17日

ほぼ日とハブスポットが語る、新時代「カルチャーとコンテキスト」のマーケティング

情報、メディアといったものの捉え方自体が常に変動している今、マーケティングにも大きな波が起きている。「ほぼ日」の愛称で知られるWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する東京糸井重里事務所のCFO 篠田真貴子 氏と、マーケティングオートメーション(MA)市場でトップシェアを誇る米HubSpot社の経営陣が、ライフスタイルに合わせて変わる新しい時代のマーケティングのあり方について語り合った。

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子

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米HubSpot社 CEO ブライアン・ハリガン氏(中央)、共同創設者デイヴィッド・ミーアマン・スコット氏(左)、東京糸井重里事務所 篠田真貴子氏(右)が今起きている変化、インバウンドマーケティングの可能性や課題を語る


「巨漢の小錦に細身の寺尾が勝つ」が、小さな企業が勝つヒントだ

 大企業は大きなエンジンでマーケットをけん引していく力がある。しかし、ベンチャーやスタートアップといった小さな企業が同じやり方ができるかというとそれは難しい。PRにかけられる予算や人材、規模が違いすぎる。では、小さなエンジンしか積んでいない小さな企業はマーケットでシェアを得ることができないのだろうか。

 以前、東京に住んでいたことがあるハリガン氏は、当時テレビで初めて見た相撲の取り組みが、新しいカスタマーサービス、マーケティング手法について考えるキッカケにつながったという。同氏は小さな企業がマーケットで勝つための考え方について相撲を例に挙げた。

「巨漢の小錦に細身の寺尾が向かっていき、小さな身体を逆手にとった技で勝利する。(私にとって)刺激的だった。企業も同じなのだ。積んでいるエンジンの大きさが違うのだから、大企業と同じやり方をしていては勝ち目はない」(ハリガン氏)

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当時の様子を再現するハリガン氏。以前東京に住んでいた同氏を奮起させたのは、大相撲の小錦と寺尾の取り組みだった


 商品やそれで得られる新しい体験を魅力的に提示し、人々の歓心を得るための情報を発信するという従来のアウトバウンドの手法。これはマーケティングにお金がかけられる企業であればよいだろう。しかし、規模の小さな企業では成果が出るまで体力が持たない。そもそも強引に人の興味を何かに向かせるのは難しいことで、十分な成果を出すには大きなプロモーションが必要だし、それには莫大な予算がかかる。

 2000年代中ごろ、Web2.0と言われ、ソーシャルメディアの流れが起きていた。ソーシャルメディアを活用することで、消費者自身が発見し、向こうからアクセスしてくれるような、インバウンドなマーケティング手法なら小さな企業でもできる。ハリガン氏は「小さな寺尾が大きな小錦に勝つ」という体験にインスパイヤされたのだ。

企業の「カルチャー」はカスタマーサービスにどう影響するのか?

 篠田氏は2010年、糸井重里氏ら「ほぼ日」の愛称で知られるWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」のメンバーでボストンの米HubSpot社を訪れている。ちなみに、糸井重里氏はハリガン氏とスコット氏の共著『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』日本語版(2011年、日経BP社)の刊行に際して、監修をしている。

 急成長を続ける米HubSpot社は、ボストン・ビジネスジャーナル誌の「ボストンで最も働きたい会社」第1位に選ばれるほど、その企業文化が注目されている企業でもある。例えば、公休なし(誰の許可を得ることなく、自分の判断で休暇をとったり働いたりできる)、オフィスにドアがない、など独特のカルチャーコードがあることで知られている。

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東京糸井重里事務所
CFO
篠田真貴子 氏


 篠田氏は「働きやすい、魅力的な職場は自然に社員となる人を引きつけるし、社員の個性を潰さない職場はより個々の力を引き出すことができる。それが結果としてユニークなものを作り出すことになり、そうした製品を通して、よりカスタマーに近づくことができるのではないか、こうした企業のカルチャーがサービスを生み出しているのではないか」と指摘する。

 企業内部のカルチャーがカスタマーサービスにどう関係するのか? 企業にとって、資金や時間は非常に重要な要素だとしながらも、我々はカルチャーを重要なものだと考えているとスコット氏は語る。さらにカルチャーはマーケットにも重要なのだという。カルチャーを作っているのは中の人、社員だ。彼らがカルチャーを体現するものとして表に出てカスタマーと密接な関係を気づくことで、マーケットに影響を与える。

 今、ソーシャルメディアを通して企業やブランドに接するようになって感じている人も多いのではないか。実際、ツイッターやフェイスブックなどの企業アカウントの投稿からは、広告のようなマスメディアから受け取る以上の、企業やブランドの佇まいというものが見えてくる。

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米HubSpot社
共同創設者
デイヴィッド・ミーアマン・スコット氏


 また、スコット氏は生き方を変える「シーチェンジ(sea-change)」が必要だと述べる。10年前と比較して、製品もそうだが情報も飛躍的に高度化している。そうした急激な変化に合わせてライフスタイルを変えていくことが重要、とする。

 生まれたときからネットがインフラとして機能していた「デジタルネイティブ」の世代と、後から出てきたネットというインフラに合わせてきた「デジタル移民」の世代。チームや消費者にも両者は入り混じっている。より混沌とした、ダイナミックな変化が起きているといえるだろう。

 デジタル移民と呼ばれる人たちがソーシャルでのコミュニケーションがうまくできるようにすること。これは、これからのインバウンドマーケティングにとって課題といえる。デジタルネイティブの層はどちらかというとインバウンドマーケティングとの親和性は高い(そもそもデジタルネイティブは何も教わらなくともネットや新しいデバイスを使いこなし、自分に必要な情報にアクセスできる)。しかし、そうではない層(いわゆるデジタル移民)にリーチしないことには、マーケットは広がっていかないのだから。

【次ページ】糸井重里氏が「今日のダーリン」をアーカイブしない理由

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