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2016年11月28日

『寺院消滅』『無葬社会』著者

鵜飼秀徳氏に聞く、変わる都会の葬儀のかたち――巨大納骨堂、遺骨アクセサリー

2015年に刊行された『寺院消滅――失われる「地方」と「宗教」』(日経BP社)は、檀家離れや住職の高齢化により、地方の寺院が失われていく様子を描き話題を呼んだ。著者の鵜飼 秀徳氏が新刊『無葬社会――彷徨う遺体 変わる仏教』(日経BP社)で取り上げるのは、都会を中心にした葬送の変化である。前作につづき、センシティブな現場で綿密な取材を重ねており、僧侶の資格をもちながら記者でもある鵜飼氏だからこそ書けるルポルタージュだ。葬儀は無宗教、お墓も必要ない、散骨でいい……寺院の存在が遠ざかっている都会の葬儀の現場で何が起こっているのだろうか?


火葬するのに10日待ち!?

──『無葬社会』では、都市における葬送の変化について多くの事例を紹介していますが、もっとも象徴的なものはどれでしょうか。

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鵜飼秀徳氏

鵜飼秀徳氏(以下、鵜飼氏):待機児童ならぬ「待機遺体」の問題です。現在、高齢化にともない死者数が増えていますが、都会では火葬場のインフラが足りていません。火葬するのに10日待機することも。なかには「友を呼ぶ」と言って避けられていた「友引」の日でも稼働しているところもあります。

 数を増やそうにも、火葬場は多くの場所で迷惑施設と見なされています。近隣住民の反対があり、新たに建てるのも簡単ではありません。葬式をせずに火葬だけをする「直葬」が都市では増加しており、火葬場で故人とのお別れをするため、時間がかかってしまいます。そのことも、火葬場の混雑に拍車をかけています。

 火葬まで日数がかかるわけですから、遺体をその間に保管する必要があります。ですが、都会のマンションでは管理組合の規約によって遺体を運び込めないところもあります。移住空間の中に「死」を迎え入れることが難しくなっているのです。

 火葬場に設置されている遺体保管庫を利用することも可能ですが、無機質な場所ですし、面会時間も限られています。10日も故人を置いておくことに心理的な抵抗をもつ遺族も多いでしょう。都市圏では、遺体ホテルと呼ばれる民間の死体安置所があります。私が取材したのは、まるでビジネスホテルのような施設でした。火葬場同様、迷惑施設として住民の反対運動も起こっているようです。

 でも、誰だって死ぬわけですから、そんなに死を遠ざけてどうするのでしょう。お墓の隣にある家に住むのも嫌がる人がいると聞きますが、お墓の側は確実に日当たりがいいのにもったいないですよね(笑)。

都会のビルに並ぶ1万の遺骨

──都会では永代供養に人気が集まっていると聞きました。なぜでしょうか?

鵜飼氏:檀家になる必要もなく、無宗教もOK。料金も明示しているので、お墓をもつ障壁が低いのです。地方の墓じまいを背景に、農村から集団就職で都会に出てきた団塊世代を中心にニーズがあります。よく誤解されるのは、「永代」といっても永久に供養されるわけではなく、だいたい13〜23回忌までに無縁仏同然になります。会費を払っている間だけ「永代」とも言えますね。

 象徴的なのは、都会にそびえるビルの中に5千から1万にも及ぶ遺骨が並ぶ巨大納骨堂です。ロッカータイプのものが主流ですが、ICカードをかざすと関係者の遺骨が自動で運ばれてくる自動搬送式納骨堂もこれから増えていくでしょう。

 東京23区では、一般の墓地はほとんど売れていません。鎌倉時代からつづいている日本の伝統的な宗派仏教のかたちは崩れ、江戸時代以降の檀家制度も崩壊しています。全日本仏教会が抗議したことで話題になった「お坊さん便」のように、Amazonを利用して3万5000円で知らないお坊さんを“買い”、お経をあげるビジネスも出てきました。地域にいる知り合いのお坊さんに弔ってもらうような、地縁型のお葬式の形式が失われつつあります。

──とはいえ、仏教そのものに対する関心はすごく高いと思います。般若心経の本や仏像ブーム、坊主バーなどもありますし、テレビでも『ぶっちゃけ寺』(テレビ朝日系)のようなバラエティ番組が……。

鵜飼氏:たしかに、最近は仏教に興味をもつ方も増えているかもしれません。ただ、それは信仰ではなく、文化として需要されている側面が強いといえます。仏像をみて美しいと思ったり、瞑想を取り入れて仕事を効率化したりはしますが、檀家との付き合いや菩提寺との関係となっていくと、とたんに冷めて、さーっと引いてしまうのが実情ではないでしょうか。

【次ページ】 ロマンチックな葬儀の実態

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