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  • 2016/11/28 掲載

人工知能とロボットの関係、「自動運転」で考えれば分かりやすい

森山和道の「ロボット」基礎講座

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最近、ロボット以上にブームになっているのが人工知能(AI)だ。ロボットと人工知能はいわば一体。まとめて「ロボティクスと人工知能が未来を変える」的なキャッチフレーズで語られることも多い。だが一方で、「人工知能」と「ロボット」とが頭のなかでまったくくっつかないという人も少なくないようだ。今回は、このへんの話をしておきたい。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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人工知能とロボットは密接に関係している

人工知能とロボットは技術的には重なる部分が多い

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 いわゆる人工知能は、知的な処理をするプログラムである。定式化された問題処理を実行する。ここのところ、ビッグデータの整備と統計処理技術の発展、そしてかつて考え出されたニューラルネットワーク技術の再興と計算資源自体の潤沢化によって、画像認識や分類などにブレイクスルーが起きた。

 いまや完全にブームとなっており、多くのメディアもこのブームにのっている。最近はさすがに加熱しすぎだとして、多くの研究者たちは、むしろ熱を冷ますほうに回っているようにすら見える。

 一方、ロボットは決められた作業をこなす機械だ。センサーを使って環境変動にある程度対応し、プログラムを入れ替えることで、異なる作業ができる。なかには人と会話するコミュニケーションロボットもあるし、アニメーションや特撮映画の影響もあってか、少なくない人たちが、知的な機械としての役割を「ロボット」という言葉に見出している。

 この二つの分野の研究成果は互いに影響を与えあっていて、特に現実世界の情報を処理するアプリケーションの技術を研究している専門家の人たちは、特に何の区別もしていない、と思う。

 だが一般の方のなかには、人工知能とロボットの間に関連があるとはまったく思ってない人たちが、しかも少なからずいる。筆者などが打ち合わせの折に「人工知能とロボットは技術的には重なってるところが多いですよ」というと、「えっ?」とキョトンとされることがあるのだ。

 筆者は、人工知能もロボットも普遍機械である計算機の活用例の一つだし、人工知能とロボットが、いわば「頭と身体」の関係にあることは誰にとっても自明だと思っていた。だが実際にはそうでもないらしい。

 率直にいうと未だに、なぜ両者の間に深いつながりがないと思ってしまう人が少なくないのか、その辺の思考の道筋が筆者には今ひとつ飲み込めていない。だからニーズに応えられているのかどうか自分でもよくわかっていないのだが、今回は、そういうときにしている説明を、ここで改めてテキスト化しておきたい。

人工知能の用途例としての自動運転技術

 筆者が人工知能分野の研究と、ロボット研究との間の関係を理解してもらうために、最近よく例に出しているのは自動運転である。

NVIDIAによる自動運転車のデモ


 自動運転とは、自動車が自分で周囲の状況を判断しながら、目的地までの経路を作り、適切なルートを選択して移動し、障害物があったら避けたり、信号や道路標識・制限速度表記などを認識して、交通法規を守り、止まるべきところできちんと止まることが要求される技術である。

 屋外では光一つとっても朝、昼、夕方、そして夜とまったく変わってしまう。だがどんな状況であっても、歩行者を安定して認識できないといけない。道路もきちんと整備された高速道路だけではなく、レーンをキープするための中央の白線どころか路側帯もろくにないような道路までいろいろな状況がありえる。路面状況も異なるし、信号の有無や交差点の混雑具合も異なる。

 自動運転車には外界の状況を捉えるためのカメラやレーザーセンサーなどがつけられて、随時、リアルタイムで処理されている。そのための処理技術は、最近、人工知能技術の応用としてデモンストレーションされている画像認識などと同じで、それぞれの分野での研究成果が相互に使われている。

 反射神経的な反応だけでは十分ではない。外界センサーの情報だけではではなく、それまでに蓄積された他の車の走行時の履歴から判断せざるをえないような状況もありえる。物体の影になっているものは、車につけられたセンサーだけからは、どんなに見ようとしても見えないからだ。

 たとえば運転中は「飛び出し」などの危険性に頻繁に直面する。統計的な情報から、たとえば「この時間帯の、そこの交差点は、歩行者や自転車が多いから徐行しよう」といった上位の判断が必要になる状況も多い。こういう場合は、まさにビッグデータによる統計処理、機械学習などの出番である。

 自分で運転するかしないかを問わず、以上のような難しさや状況が容易に想像できるせいか、自動運転は、人工知能技術の応用の一つとして認識してもらいやすい。「賢い車」とはどういうものなのか、ちょっと考えれば誰でもピンとくるからなのだろう。

 つまり、動き回ること自体が、知能なのだ。知能とは何か適当な会話をこなすことだけではない。動くこと自体に知能、知的な情報処理が必要なのである。

【次ページ】ロボットとAIのブームは自動運転車から始まった

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