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  • 2016/11/30 掲載

Cybozu青野氏と田中俊之氏対談、異なる価値観を見下して自尊心を満たすのはやめよう

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人口が増えない。人口が増えないから労働人口も増えず経済成長も見込めない。子どもを産めるのは女性だけ。男性だけでは足りない労働人口を補うのも女性。「男性は今まで通り必死に働いて、女性は子供を産んで、働いて、税金を納めて(男性のように)社会に進出して活躍して…」。そんな全員に全力を求める社会には、女性だけでなく、男性も疲れている。「働き方改革」に必要な、本当の変革は何なのか。サイボウズ 代表取締役社長の青野 慶久氏は、少子化ジャーナリストであり相模女子大学客員教授でもある白川 桃子氏と、男性学で知られる武蔵大学 社会学部 助教 田中 俊之氏と対談を行った。

フリーライター 重森 大

フリーライター 重森 大

メインの活動フィールドはエンタープライズ向けITだが、ケータイからADCまでネットワークにつながるものならなんでも好きなITライター。現場を見ることにこだわり、毎年100件近い導入事例取材を行ってきた。地方創生の機運とともにITを使って地方を元気にするための活動を実践、これまでの人脈をたどって各地への取材を敢行中。モットーは、自分のアシで現場に行き、相手のフィールドで話を聞くこと。相棒はアメリカンなキャンピングカー。

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左から少子化ジャーナリスト・相模女子大学客員教授 白川 桃子氏、サイボウズ 代表取締役社長の青野 慶久氏、武蔵大学 社会学部 助教 田中 俊之氏



相対的貧困率は50%超え、一度貧困に陥ったら抜け出す術はない

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サイボウズ 代表取締役社長
青野 慶久氏
 2016年11月9日と10日の2日間に渡り、Cybozu Days 2016が開催された。そこで、サイボウズ 代表取締役社長である青野 慶久氏は、共に生きることのできる社会を目指すことの重要性を訴えた。

「働き方改革はなかなか進んでいないように見えます。昨年のcybozu.com カンファレンス 2015 では、参加してくださった人たちからまず働き方を改革していこうと、『変える覚悟、変わる覚悟』をテーマに開催しました。その後、少しずつですが社会が動き出したような気がします。しかし、改革はまだ始まったばかりです。新しい価値観と古い価値観が葛藤する中で進めなければならないでしょう。ここに集まった人から、一緒に改革を進めて行きたい。その想いから、今年のCybozu Days 2016のテーマを『共に生きる』にしました」(青野氏)

 そう語ったうえで青野氏は、働き方改革のその先にある未来にも目を向けなければならないと述べた。多様化が進むことで何が起きるのか、それにどう対応していかねばならないのか。青野氏は「経済格差」というテーマを挙げた。

 非正規雇用が拡大しているうえに、正社員と非正規社員の給与格差も大きくなっている。40代から50代では正社員と非正規雇用との間で2倍近い給与格差が生じている。これは月間の所得ではなく、同一時間、同一労働に対する給与格差だ。また、GDPが横ばいにも関わらず、相対的貧困率は上昇を続けている。

 相対的貧困率とは、特定の地域において所得が中央値の半分以下の人が占める割合を指し、2016年の日本においては年収122万円以下で暮らす人が占める割合となる。青野氏は、ひとり親世帯の貧困率を国際比較したグラフを示した。OECDのデータ(2005年)によると、北欧の国々では10%を切っているところもあるが、日本では57.3%と高い数値を示している。ひとり親世帯の半数以上が相対的貧困を強いられており、これは国際的に非常に高い割合であることがここから読み取れる。

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ひとり親世帯の貧困率を国際比較したグラフ

「よく、私だって若い頃は貧乏だったよ、という話を聞きます。しかし貧乏と貧困は違います。貧乏とは、お金はないけれど、親や知人の助けやつながりがあってなんとかやっていける状況を言います。貧困は、お金もなければ助けてもらえる当てもない状況です。たとえばシングルマザーの方は、お子さんが病気になったら休まなければならないので、出勤が不安定で正社員になるのが難しい。低い給料のパートで、しかも子供を預けて働かなければならないので、貧困から抜け出す術もありません」(青野氏)

女性の雇用で増えるのは「非正規雇用」ばかり

 もっと助け合って共に生きられる社会を作れないか。それを考えるにあたり、青野氏は少子化ジャーナリストであり相模女子大学客員教授でもある、白川 桃子氏と意見を交換した。白川氏は、一億総活躍会議や働き方改革実現会議にも参画している。

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少子化ジャーナリスト
相模女子大学客員教授
白川 桃子氏
 青野氏はまず、「国が発展していけば貧困層は減っていくと思いがちだが、そうなっていないのはなぜなのでしょうか」と問うた。

 これに対して白川氏は、まず再分配の問題を挙げた。

「貧困率を低く抑えられている国では、富の再分配がうまく機能しています。がんばった人がまずお金持ちになり、税金として集めたお金がきちんと再分配されることで格差も少なくしているのです」(白川氏)

 格差が広がれば、社会が不安定になり、結果的に生活コストが高くなり不利になると、白川氏は自身の経験を振り返って語った。

「夫の仕事の関係で、まだ経済格差が大きかった頃のインドネシアに住んでいたことがあります。経済格差が大きな国では、お金がある家は有刺鉄線を張り巡らせてガードマンを雇い、生活コストが高くなることを知りました。格差が大きいと、みんなが余計なコストを負担しながら生活しないといけないのです」(白川氏)

 では日本ではどのようなことが起こっているのか。白川氏は国内の雇用全体に占める非正規雇用の割合を示すグラフを提示した。

「非正規雇用は全体の37.5%をを占めています。そして、女性労働者の6割は非正規雇用だというデータもあります。そのうえ、日本では正規雇用と非正規雇用の賃金格差が大きいのです。これらが重なり、シングルマザーが貧困に陥っています」(白川氏)

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非正規の賃金水準

 つまり、正規雇用と非正規雇用の賃金格差が、非正規雇用の多い女性の収入の少なさにつながり、さらにシグルマザーの貧困率にもつながっている。シングルマザーの2人に1人が相対的貧困状態にあるというだけではなく、子供の6人に1人は貧困という、先進国の中では突出した数値もここから生み出されている。次に白川氏は、雇用形態や年収別に見た女性雇用者数の変化を示すグラフを取り出した。そこから読み取れるのは、女性雇用者は増えているが、増えているのは非正規雇用ばかりだということだった。

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雇用形態・年収別に見た女性雇用者数の変化

【次ページ】「女性」は輝かないと働けないのか? 「男性」は輝かなくても働けるのか?

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