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2016年12月29日

逃げ恥、校閲ガール、カインとアベル…「仕事モノ」ドラマ比較から見える価値観の変化

2016年10月期のテレビドラマは、「働く」をテーマにしたドラマが目立った。TBSは「逃げるは恥だが役に立つ」、フジテレビは「カインとアベル」、日本テレビは「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」と、各社各様の切り口でそれぞれが日本社会の今を切り取って描くという構図となった。今回は、2016年の世相を映し出す鏡として民放3局のドラマを比較してみたい。

執筆:人材・組織コラムニスト 後藤洋平

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ドラマが描く「働き方」に関する価値観の転換

(© pololia – Fotolia)


今季の「仕事モノドラマ」三つ巴の戦いは「逃げ恥」に軍配

 超話題作として、社会現象的な展開を見せたTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ(以下、逃げ恥)」。最高視聴率20%超えという記録を残してラストを迎えたあとも、「あの人が恋ダンスを踊った」「YouTubeの再生回数がすごい」といった話題で持ち切りである。

 2016年10〜12月期のテレビドラマは、TBS、フジテレビ、日本テレビの3局がそれぞれの切り口で「働く」をテーマにした作品を発表した形となった。TBSは「逃げるは恥だが役に立つ」、フジテレビは「カインとアベル」、日本テレビは「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」の中で、最も高い視聴率を記録したのは逃げ恥であったわけだが、その理由は、可愛らしい外見とは裏腹に、極めてシビアな、「目の前にある現実」が描かれていたことであったように思われる。

 本作を整理しておくと、文系学部の卒業時に就職活動に失敗し、消極的に大学院へ進学後、やはり就職活動に失敗した女性、みくり(新垣結衣)のその後を描いた話である。

 とりあえず働かなければと派遣会社に登録、いくつかの仕事を経験したが、これと思えるものではなく離職。無職暮らしをしているうちに、「プロ独身」を自認するシステムエンジニアを父から紹介される。その彼から、給与を受け取って家事代行サービスを提供するという、「契約結婚」生活を始めることになるという筋書きだ。

逃げ恥で描かれたのは「バリキャリ」の負け組感

 旧来の日本社会であれば、単純に「見合い結婚」として描かれるような話だが、「契約書」「コスト・パフォーマンス」という概念をもちこんで、「就職」になぞらえるあたり、いかにも昨今の社会を反映した話である。

 逃げ恥の主人公、みくりのやる気のなさは、諸先輩方からするとはがゆい以外の何物でもないのではないか、と不安になる。

 同作で描かれたキャラクターの一人、外資系化粧品会社に努める土屋百合(石田ゆり子)は、まさしくその「諸先輩方」を代表する人物である。しかし意外なことに、百合はみくり的な生き方、あるいは子を生み育てる女性の生き方について、あれやこれや否定する、ということはないのであった。

部下A「えっ また一人減るんですか」
百合「うん 産休に入るんだって」
部下A「最悪・・・」
部下B「ぶっちゃけ迷惑」
百合「そういうこと言わないの」
部下A「土屋さんだって仕事増えるでしょ」
部下B「むかつきませんか」
百合「悪いけど、もうそんな次元にない・・・感謝。わたしの分まで生んでくれて、ありがとう。この歳になると、もう嫉妬なんて通り越してる」
部下B「でも言われませんが、女に生まれたからには、どうのこうの」
百合「だってその分働いてるもの、税金納めてるもの」

 むしろ、自らの歩んできた過去について「全面的な肯定」をしていない。社会参画の権利を獲得し、社会的な力を発揮していることには意味も意義もあったが、それがすなわち幸福なことであったと言い切ることも難しいという気持ちが百合の中にある。「バリキャリ」という言葉に代表されるようなキャリア観の敗北とも取れるような描写だった。

「仕事モノドラマ」の比較で見える、働き方に対する価値観の変化

 2016年は「働き方」に対する価値観の「転換の始まり」の年であったのかもしれない。フジテレビ「カインとアベル」は、視聴率が奮わなかったという意味でも、その話の構造においても、「逃げ恥」と対照的であった。

 名門デベロッパー企業の創業一家の兄弟が、能力と名誉と女性を巡って葛藤するという話である。旧約聖書に題材をとった話の作りもクラシカルならテーマも保守的で、「働く」というテーマの男性的な側面にスポットライトをあてた作品となっていた。

 ヒロインの矢作梓(倉科カナ)は主人公兄弟の兄の方と恋人関係にあるが、会社のなかでは才女としてのポジションを確立している。実質的主人公である弟との三角関係に陥る中で「兄の方と結婚して家に入るのか」「弟を選択したら、仕事とプライベートの両立が可能となるのか」という二者択一に迫られる。ここで描かれているのは、「仕事か家庭か」という問題であり、社会批評性という観点ではひと昔前のテーマ、という感じである。

 これに対して、先月取り上げた校閲ガールはカインとアベルと比較すると、いくらか現代的であった。その職場には男性も女性も普通に共存していて、そこに「男性だから」「女性だから」という葛藤は、存在しない。男性も女性も、それぞれ普通に仕事をして、自己実現を目指している。男女雇用機会均等法が施行された1986年から実に30年、ようやく社会はここまで進化したのか、という記念碑的な作品でもある。


 しかし、校閲ガールでは主要登場人物のほぼ全員が独身であった。結婚、出産、育児の問題への言及を回避している。案の定、最終回において、主人公の河野悦子(石原さとみ)が恋愛ではなく仕事を選ぶという締め方だった。おいおい、そっちに行っても幸福が得られないことは、少し上の世代が証明してしまっているよ、という、若干、肩透かし観のある終わり方であった。

 折角、「与えられた仕事と自己実現」という現代的テーマを浮き彫りにすることに成功したにも関わらず、生活感やリアリティに欠ける、理想郷的な世界観となっていた。時代錯誤感のあるラストになってしまったのは、残念なことであった。

【次ページ】女性が働く権利を手にしたことで社会はより幸福になったか

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