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  • 2017/01/10 掲載

中国電脳街で「VR製品」が毎月3000万台も売れている理由(2/2)

「知らない間に」世界市場を席捲

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オンラインよりも先にオフラインのVR体験ゾーンが続々

 上海のShanghai Famikuは、他の3社とは少し毛色が異なる企業だ。同社のファウンダー&CEOであるFredrick氏は、2003年にオンラインゲーム会社、2009年にアーケードゲーム会社を設立。その後、2014年にVR化したオフラインのアーケードゲーム会社、Shanghai Famikuを設立した。

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FamikuのCEOであるFrederick 氏

 実は、この社名は日本にゆかりがあるものだという。Famikuは、日本のファミコン雑誌の草分け「週刊ファミ通」から取った。同氏の世代では日本のゲームの影響を強く受けているわけだ。「中国でアーケードゲームを楽しむ人は、日本のゲームをよく知っている。ファミコン世代が大人になっても親しみをもっていると思った」(Fredrick氏)。

 同社は、上海でVR化したアーケードゲームを楽しめるにように、1000平方メートルの広さの「VRパーク」を作っている。アリババなどのEC市場が成長したため、リアルなショッピングモールは買い物をする場所というよりも、カラオケや映画、ゲームセンターなど娯楽の場所に変わりつつある。

「こういった娯楽施設は陳腐化してる。そこで新しいVRのエクスペリエンスが必要だと感じた。アーケードゲームは、ブレースルーが生まれるOutputの分野が重要だが、VRが登場してからは体感的なInputもいっそう重要になった」(Fredrick氏)。

 中国では、すでに3000以上ものオフラインのVR体験ゾーンがあるそうだ。同社のアーケードは、どのように差別化を図るのだろう?

「かつてゲームセンターは大面積でないと許可が下りなかった。しかし小面積でも運営できるようになり、VR体験ゾーンも小規模な場所に進出している。我々は大規模なゲームセンター市場でもシェアを取っていきたい」(Fredrick氏)

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Famikuが中国で展開するVR体験ゾーン。利用料金は2時間で150元

 Famikuの筐体とコンテンツの80%が自社開発だ。自社でハードウェアとソフトウェアを開発し、OEMでも提供している。VR体験ゾーンは有料で、2時間で150元ほど。その料金は映画と比べて同じぐらいで、ゲームセンターで使う金額とほぼ同じだという。

深センの電脳街・華僑北路では、VR出荷量が毎月3000万台を超える

 続いて、4名のキープレイヤーによるディスカッションが行われた。まずモデレーターの田中氏は、あらためて中国のVRに関する認知度について尋ねた。

 Pico社のZu氏は、個人的な意見と前置きしたうえで「この半年で一般コンシューマーの認知度は高まった。CCTV(中国国営放送)も盛んにVRについて報道しているが、地域によって差があるようだ。中国はチャンスが多いと思われているがギャップもある。3大VRメーカーのほかにも海賊版メーカーがあり、1000万台ぐらい出回り、正規メーカーよりも存在感が大きい。またCardboardのような普及型VR機器はあるが、十分なエクスペリエンスを得られてはいない」と問題点を指摘した。

 それに対して田中氏は「海賊版が出ても、正規メーカーは収益を上げられるのか?」と質問した。

 3GlassesのLin氏は「我々は粗利をあげているが、VRは始まったばかりで赤字状態だ。とはいえ、市場は大きい。深センの電脳街・華僑北路では、VR出荷量が毎月3000万台を超える。VRの場合はPC用/モバイル用/Cardboard用で分類したほうがよいだろう。最も価格が安いCard board用は20元ぐらいで、出荷量は多いが使い捨ての低品質な製品だ。これらは未来のエクスペリエンスを提供する製品ではなく、区別して考えるべき」と説明する。

 田中氏は「華僑北路でVR機器の出荷量が毎月3000万台もあるのは、世界中からバイヤーが買い付けにくるからだ。ローエンドのCardboard用が最も売れており、底辺からVRの渦が回り始めた」と補足する。

 中国のVR企業は、ハードウェアから、ソフトウェア、プラットフォームまでを有する垂直統合型企業が多い。田中氏は、垂直統合型企業のメリットについても尋ねた。

 Baofeng MojinのXianzhong氏は「我々もソフトウェアを出荷しているが、中国企業はハードウェアもやらないと生き残れない。なぜならハードウェアはネットの入口になるものだからだ。シャオミのような新企業はソフトウェアもつくっている。いまはコアで競争が激しく、垂直統合型ですべてのモノが必要だ。VR市場は、他国との協力の余地も大きいと思う」と現状を分析した。

日本は優れたコンテンツでビジネスチャンスを狙え!

 中国は現在、スマホなどで世界最大のサプライヤーになっている。ではVR市場でも同じ状況になるのだろうか。田中氏は「VRの普及はいつ実現しそうか?」と問いかけた。

 Zu氏は「VRが本当にコンシューマーの生活の一部になるには、あと3年から5年ぐらいはかかると思う。そのときエクスペリエンスだけでなく、価格もスマホと同じようになっていくだろう」と予測する。

 一方、VRアーケード市場で戦うFredrick氏も「技術面は成熟しつつある。アーリーステージでは、スマホは海外製品が強かったが、技術が成熟すると中国にもチャンスが出てきた。いまやAndroidは中国製品もハイエンドになった。VR機器もハードウェアで同様の状況になるだろう」と推測する。

 最後に田中氏は「日本企業と今後どのように手を組んでいくのか?ビジネスチャンスはあるのか?あるいは淘汰されてしまうのか?」と問うた。

「日本企業には独自の優位性がある。特にコンテンツには創造性があり、高精細なハイエンドな作品や、エクスペリエンスでも優れていると思う」(Zu氏)

「我々は日本の技術レベルに見合うハードウェアをつくり、VR市場を開拓していきたい。いま自身のコンテンツも半数が海外で開発されてるため、ぜひ日本企業も我々のプラットフォームを活用してほしい」(Lin氏)

「我々は日本企業と協力している。コンテンツは人気があり、中国の作品より10倍もダウンロード数が多い。ローカライズせず、日本語でもニーズがある。中国にはプラットフォームはあるが、優秀なコンテンツが欠けているので、協力してほしい」(Xianzhong氏)

「中国ではアーケードとVRが合体したオフラインでビジネスチャンスがある。しかし優れたVRコンテンツは少ない。海外コンテンツの場合は、ローカライズの問題だけでなく、中国化したコンテンツが重要だ。中国のスタイルに合わせることで、初めて収益化が可能になるだろう。我々の市場にマッチするように協力してほしい」(Frederick氏)

 最後に田中氏は「中国のモバイルVRは、今後あっという間に世界を席捲するかもしれない。逆に日本から見たビジネスチャンスは、お金を落としてくれる数億人のVRユーザーがいることだ。日本のコンテンツは中国でヒットする可能性があるため、パートナーシップを進めてほしい」と討論をまとめた。

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