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2017年01月17日

STEMとは何か? アートを加えたSTEAMとは?成毛眞 氏に聞くAI時代の必須スキル

「STEM」とは、サイエンス(科学)の「S」、テクノロジー(技術)の「T」、エンジニアリング(工学)の「E」、マセマティックス(数学)の「M」を並べた造語だ。アメリカの教育現場から生まれた言葉で、最近ではこれにアート(芸術)の「A」を加えた「STEAM」といった言い方もする。元日本マイクロソフト社長で、現在はHONZ代表をつとめる成毛眞 氏に、いまSTEMやSTEAMに注目すべき理由について話を聞いた。

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HONZ代表 成毛眞 氏


STEMとは何か、なぜ生まれたのか

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成毛氏は近著『AI時代の人生戦略』でSTEM/STEAMの重要性を説いている

 STEMとは、サイエンス(科学)の「S」、テクノロジー(技術)の「T」、エンジニアリング(工学)の「E」、マセマティックス(数学)の「M」を並べた造語です。日本では技術と工学の区別は明確ではないですが、技術はツールをつくること、工学はそのツールを活かす方法だと考えるといいでしょう。

 もともとアメリカの子供向け教育の概念で、アメリカ国立科学財団(NSF)が使い始めました(言葉が生まれた当時はSTMEだった)。これには理由があって、OECD加盟国の15歳の生徒を対象にした学習到達調査(Programme for International Student Assessment, PISA)でのアメリカのランキングが「読解力」24位、「数学的リテラシー」36位、「科学的リテラシー28位とあまりに悪かったので、何とかしなければ、ということで始まったのです。そのため「STEM教育」という言葉で使われることが多いです。

 ただし、日本の子供のPISAの成績はトップクラスですから、実は日本にSTEM教育は必要ありません。一昨年、ある雑誌の企画で、日比谷高校で使っているすべての教科書を買って取材したのですが、驚きました。たとえば、生物Bでは遺伝子組み替えの実験をやっている。物理も超ひも理論が出てきて、量子力学と相対性理論の統合をどうすすめるかといった内容をやっている。

 いま、サイエンスはどんどん変化しています。数学は以前の論理学のようになってきました。同様に物理学は数学のように、化学は物理学のように、医学は化学のようになってます。量子論を応用しないと新しい物質を作ることはできませんし、医学は化学の知識と遺伝子工学なしでは成立しなくなっている。

 もともと教育の概念なので、「教育しなければ」「学ばなければ」と考えがちですが、そうではありません。たとえば、一般のビジネスパーソンが量子物理学やプログラミングを知る必要はまったくないと思いますが、ブロックチェーンは知らないとまずいことになります。おそらく、3年以内にブロックチェーンを使ってビットコインで給料を支払う会社が出てきます。

 Amazon Go(注)が話題ですが、その決済が最終的にビットコインにならない理由は、どこにもありません。コンビニ、ATMやレジを製造している会社、給与振り込みのサービスを提供している会社……など、あらゆる業界が変わります。

注:米アマゾンが今後オープンする予定の小売店。スマホとセンサー、画像認識技術などを駆使して、レジ(決済)なしで買い物ができる

STEMを知らない人は周りで起きていることが魔法に見える

 人工知能、ドローン、VRなど、テクノロジーの進展は著しく、STEMに興味のない人は、自分の周りで起きていることが魔法に見えると思います。未来を生きる3割と残りの7割に分かれるのではないでしょうか。

 たとえば、テレビCMで非常にクオリティの高い空撮映像が流れるようになりました。あれはドローンで撮影しているわけですが、深センのドローンメーカー DJIがプロ用のモデルを出したのは、今からわずか2年前です。

 では、これからの2年後はどうなっているでしょうか。かつて、小泉首相が乗って話題になったセグウェイは、当時、100万くらいしましたが、2015年に中国企業のシャオミ傘下のNinebot社に買収され、いまはビックカメラ7万円くらいで売られています。

 iPhone 3Gが発売されたのは、今から8年前の2008年です。いまや、スマホのない生活は考えられません。これだけ急激に変化しているのです。今から数年後、どうなっているでしょうか、ということです。

 ただし、STEMをゼロから学べといっているのではありません。簡単にいえば「最新の製品に触れなさい」ということなのです。

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撮影者を取り囲む全天球イメージが撮影できる「RICOH THETA」

 たとえば、私はリコーが開発した360度撮影できる全天球カメラ「THETA」を初代から持っていますが、来年には4Kの製品が出ます。4Kで360度の動画を撮れるのです。また、通信業界では5Gの研究開発が進んでいます。5Gを使えば、THETAの360度の動画をリアルタイムで配信できます。そして、ソニーはPlayStation VRをすでに出しています。

 これらを組み合わせると何が起きるでしょうか。たとえば、パリのエッフェル塔にTHETAを設置すれば、世界のどこからでも現在のパリの様子をVRのヘッドセットを付けてリアルタイムに体験できます。セキュリティ会社の警備の方法も変わります。2020年の東京オリンピックの見方も大きく変わります。これは予想ではありません。数年後に訪れる確約された未来の話です。

「STEAM+SF」とは何か、どうやって身につければよいのか

 最近では「STEM」に加えて、アート(芸術)やSFにも触れるべきだという意味で、「STEAM+SF」という言い方をしています。アートを強調するのは、やはりアップルの存在です。アップル製品は、パッケージも含めてどれもきれいですね。ドローンのDJIにしても、通信機器のファーウェイやシャオミにしても、中国企業のデザインは、ここ2年くらいで急激によくなっています。一方、日本企業はどうでしょうか。

 ただ、STEAMの知識が増えれば明るい未来が待っているかというと必ずしもそうではありません。STEAMの知識はあくまでパーツです。それぞれの関連性を見いだして、組み合わせて活用する能力が必要になる。それには「想像」と「創造」の2つの力が欠かせない。それを養うにはSFを読むのがいちばんです。だから「+SF」なのです。

 こうした知識を養うには、まずはアキバに行くことです。家電店に入って、上から下まであらゆる新製品を手にとってみる。いろいろラボで体験するのもいいと思います。

 ただし、体験できないものは本やネットで知るしかない。たとえば、ブロックチェーンの概念は本を読まないとわかりません。セルロースナノカーボンもそうです。あらゆる企業が大金をつぎ込んで取り組んでいるのに、一般の人はほとんど知らないのがセルロースナノカーボンです。知っているのと知らないのとでは、数年後、大きな違いになるでしょう。

【次ページ】AIに代替されない人材になるには

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