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  • 2017/01/23 掲載

スポーツ用品メーカーの世界ランキング:アシックス代理店だったナイキが世界一のワケ

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2020年の東京オリンピック開催で、スポーツウェアをはじめとするスポーツ用品業界も注目度が高まっている。ナイキやアディダスなどの世界の大手スポーツ用品メーカーは、スポーツの世界的な普及に足並みを合わせて、ブランドの浸透やタウンユースの拡大を図り、事業を伸ばしてきた。しかし、先進国を拠点とする各社は自国市場の頭打ちに伴い、「アスレジャー」と呼ばれるようなファッション性の追求、新しい顧客層の開拓、新興国への進出、M&Aによる事業拡大など、成長戦略の練り直しを迫られている。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

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スポーツブランドはとっくに「スポーツのためのもの」だけではなくなっている
(© imacoconut – Fotolia)


スポーツ用品市場はどのように生まれたのか

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 スポーツ用品とは、サッカーや野球といった競技別のユニフォーム、スイミングウェア、トレーニングウェア、ジャージ、ソックスなどの衣料品(スポーツウェア)のほか、スポーツシューズ、キャップなど身につけるアクセサリー、野球のバットやサッカーボールといったスポーツギアも含まれる。

 スポーツウェアは、スポーツの発祥とともに存在したわけだから、極めて古い歴史がある。たとえば、日本の狩衣(かりぎぬ)。もともと古代の貴族の狩猟服だったのが、平安時代には貴族の日常着になった。

 欧米の例では、ポロシャツもポロ(馬に乗って行うフィールドホッケーのようなスポーツ)用の競技服だったのが、日常着としても使われるようになったものだ。

 とはいえ、スポーツ用品産業が本格的に成立したのは近代になってから。とりわけ、グローバル化したのは戦後、1960年代以降のことである。

 スポーツ用品産業の発展は言うまでもなく、スポーツの振興と軌を一にしている。産業そのものがグローバル化したのは、オリンピックやサッカーのワールドカップなどの商業化によって、スポーツビジネスが巨大化し、さらにグローバルに広まったからだ。

スポーツ用品ビジネスを巨大化させたのはテレビ

 その背景にあるのはメディア、中でもテレビの普及である。テレビの中継があれば、自宅に居ながらにして、世界各地で行われるスポーツの試合をリアルタイムで視聴できる。

 テレビ観戦する人が増えることで、スポーツの認知度が高まり、やがてテレビに触発され、自分でもスポーツを始める人が増えるという構図である。たとえば、戦後の日本の子どもたちは、テレビでプロ野球や高校野球を見て野球選手に憧れ、草野球に興じた。その結果、野球の競技人口が拡大し、同時に野球を観戦する愛好者も激増したのである。

 ここで注意すべきなのは、必ずしも競技者ではない「スポーツ愛好者」の増加がスポーツ用品ビジネスの発展に深くかかわっていることだ。たとえば、プロ野球の球場の観客席では、贔屓のチームのユニフォームを着て応援している女性や小さな子どもも少なくない。つまり、多数の観客を動員できる人気スポーツは、競技人口をはるかに超えたスポーツ用品の“市場”を有しているわけだ。

 さらに、スポーツ愛好者は、スポーツを観戦するときだけでなく、日常着としてもスポーツウェアを愛用するようになる。いわゆる「タウンユース(シティユース)」である。

 スポーツウェアは、「吸湿速乾」のように基本的に機能性が高い。着心地がよく、体を動かすのがらくなものも多い。加えて、デザインも洗練されている。つまり、“かっこいい”のである。

 なぜなら、スポーツウェアはその性質上、視認性を高める必要があるし、興業上かっこよくなければ、競技者の士気にかかわり、観客にも競技のファンになってもらえないからである。

 そうしてスポーツ用品が日常のライフシーンに進出すると、スポーツとはまったく関係ないが、流行に敏感な若者などがそれを取り入れ、ファッションブランドとして定着していく(スポーツ用品メーカーもビジネス上、ファッション性をより追求するようになる)。日本でも、老若男女が「アディダス」や「ナイキ」の服や靴で街を闊歩している。それが、巨大化したスポーツ用品市場の今日の姿である。

世界ランキング1位はもちろんナイキ、アンダーアーマーも台頭

 スポーツ用品メーカーのグローバルランキングは、以下のとおりだ。

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スポーツ用品メーカーの売上世界ランキング

 一見してわかるように、すべて日米欧の先進国企業に占められている。なぜなら、先進国は「スポーツ大国」でもあるからだ。国民の所得水準が高く、生活に余裕がなければ、スポーツ産業の振興は難しい。

 とりわけ、目につくのが米国勢だ。米国は、オリンピックのメダル数でも常に上位を争っているように、名実ともに世界最大のスポーツ王国、スポーツビジネス王国である。それに前回のフィットネスクラブのランキングでも紹介したように、国民の健康志向が高く、スポーツ人口の裾野が広いといったバックボーンもある。

 世界第1位は米国のナイキである。日本で知らない人はまずいないだろう。1964年、フィル・ナイトとビル・バウワーマンによって設立された。ナイトは中距離走選手で、経営を担当した。

 バウワーマンは陸上競技の指導者で商品の研究開発を担当、ナイトの大学時代のコーチでもあり、ジョギングを世に広めた立役者でもあった。そうした関係で、当初の主力商品はランニングシューズ。意外に知られていないが、実は前身のBRS(ブルーリボンスポーツ)社はアシックス(当時はオニツカタイガー)の輸入代理店だった。

【次ページ】アシックスの輸入代理店だったナイキが世界一になった理由

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