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2017年01月24日

ガートナー 青山 浩子氏が解説

勢い増すオープンソース、企業が知るべき「トレンドのトップ5」とデメリット克服法

オープンソースソフトウェア(OSS)の勢いが増してきている。それを如実に物語るのがGitHubのデータで、現在世界で数千万人のコントリビュータが活動しており、リポジトリ数は2800万以上、コードの提供数は今や1億4500万以上にのぼる。こうしたコミュニティ活動の中心は、今やITベンダーだけではない。ゼネラル・エレクトリック(GE)やウォルマートといったユーザー企業もプロジェクトを進めている。企業がOSSを活用するにあたって押さえておくべきポイントとは何か?OSSにはどのようなデメリットやリスクがあり、それをどう克服するべきか。ガートナー リサーチ部門 主席アナリスト 青山 浩子氏が解説する。

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オープンソースの勢いが増している

(© ar130405 – Fotolia)


オープンソース(OSS)とは
オープンソースとは、独自の方法でソフトウェアなどの開発、展開、サポートに対処する、モデル、仕組み。OSI(Open Source Initiative)のライセンス条項に基づく。
(※ガートナーの定義)


なぜOSSがこれほど重要になってきているのか

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 なぜ今、OSSがこれほど重要になってきているのか。その理由としてまず挙げられるのが、ビジネス環境の変化だ。ビジネスの規模が拡大し、多様化し、さらに変化のスピードも非常に速くなっている。企業はこうした変化に素早く対応していくことが求められている。

 次に、テクノロジーのトレンドが変化していることも挙げられる。ガートナーでは、デジタルビジネスにおいて注目すべき投資分野として、「すべて」のインフォーメーション、SDE(Software-Defined Everything)、統合システム、高度なアナリティクス、スマートマシンと自動化、の5つを提唱しているが、これらに紐付くテクノロジーを見てみると、OSSが深く関連していることが分かる。

 たとえばクラウドコンピューティングやマイクロサービスアーキテクチャ、コンテナ、マイクロOSなどのテクノロジーはOSSなしでは語れない。

 そして3つ目に、ベンダーのOSSへの取り組み方にも変化が出てきていることが挙げられる。

 大手ベンダーがOSSのベンチャー企業を買収したり、自社のクローズドなコードを活発にOSS化したり、あるいはOSSプロジェクトに積極的に投資をしている。たとえばIBMでは、自社のコードをOSS化するdeveloperWorks Openというプロジェクトを立ち上げた。

 また、これまでベンダーは作る側、ユーザー企業は使う側という区切りが明確だったが、今ではこの境界線が曖昧になってきている。新興領域にはユーザー企業も参入しやすく、従来のベンダーにとっては手強い新たな競合が生まれやすい状況だ。

 そこで自社のソースコードをOSS化して開発コストを減らすとともに、開発スピードを上げていかなければ、新しい市場での競争に負けてしまう恐れがある。ユーザー企業からの圧力によって、OSS化に向かわざるを得ない状況になっているのである。

OSSのメリットとは?トップはコスト低減ではない

 実際、2016年1月にガートナーが国内のユーザー企業を対象に実施した調査の結果によれば、OSSが必要かという問いに対して、76.5%の企業が必要だと答えている。しかし、注目して欲しいのはその理由だ。今までトップだったのは「コスト抑制/低減のため」だったが、今回は「システムの柔軟性や要件に応じて機能変更ができるため」に代わっている。

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(クリックで拡大)

オープンソースを必要とする理由のトップは「コスト低減」ではない

(出典:ガートナー)


 このようにOSSは、ビジネス環境やテクノロジートレンドの変化、さらにはベンダーの関わり方、ユーザー企業の意識の変化によってどんどん発展していく。しかし変わらない本質がある。それは、OSSは新陳代謝を促し、新たな価値を生み出すイノベーションモデルの1つだということだ。

 国や企業、あるいはベンダーとユーザーの枠組みを破壊して、社会的に大きな変化を起こしているもの、それがOSSだといえる。

これだけは押さえておくべきOSSのトップ5

 ガートナーでは2018年までに、グローバルな中堅企業/大企業の50〜60%が、自社のアプリケーション開発要件を満たすためにOSSを用いるようになると予測している。たったの1年後だ。

 ただしOSSといってもさまざまなものがある。ユーザー企業が1つ1つ、気になるものを使って検証してみることは、現実的に難しい。そこで、これだけは押さえておいておきたいOSSのトレンドトップ5をご紹介したい。

■OSコンテナ:再注目されるのには理由がある

 1つめが、OSコンテナだ。OSからアプリケーションを分離する共有OS仮想化技術である。今となっては目新しいものではないが、ただ従来のOSコンテナ技術は標準性を欠いており、開発者にとって便利な周辺ツールもあまりなかった。

 OSコンテナといえば、イコールDockerのように捉えられているが、Dockerコンテナというのは、OSのコンテナ内でアプリケーションを抽象化する仮想化の一手法に過ぎない。

 最近、このOSコンテナがDockerを含めて再注目されている理由は、開発やプロビジョニングのスケーラビリティを高めることができること、さらにはマイクロサービスアーキテクチャやクラウドコンピューティングに求められるアジリティへの要求が高まっていることなどが挙げられる。

 企業に与えるインパクトは大きく2つで、まず開発ライフサイクルを非常に迅速に回すことができるようになること、そして変更要件へのリアルタイム性を向上させることが期待されることだ。

 ただガートナーのハイプサイクル上では、まだ黎明期にあるので、テクノロジーの検証期だといえる。情報収集はもちろん必要だが、情報を集めつつ、ちょっと試してみる、というやり方を採っていただきたい。

■Open Compute:データセンターの高効率化を追求

 2つめのトレンドがOpen Compute(あるいはOpen Compute Project)で、データセンターにおける仕様や設計をOSS化するプロジェクトのことだ。Facebookが2011年に立ち上げた。

 データセンターにあるインフラの高効率化を追求する取り組みであり、これもまだ黎明期にあるが、ただ遅くとも5年以内には成熟し、生産性の安定期へと向かうと考えられる。

 ハードウェアのコモディティ化を推し進めることはもちろん、テクノロジーの革新や、新しいアーキテクチャの担い手を変えるポテンシャルを持っていることを企業は十分に認識しておく必要がある。ここからのアウトプットを、特にスケールアウト型のデータセンターの参照モデルとして使うことをお薦めする。

■OpenStack:クラウド管理プラットフォームの標準になる

 3つめが、ガートナーが「クラウド管理プラットフォームのOSS版」と定義しているOpenStackだ。

 OpenStack Foundationには300社以上が参画しており、リリースのスピードも半年に一度と非常に速く、2016年10月には14番めのバージョンとなるNewtonがリリースされた。

 クラウドサービスの仕組みという観点では、このOpenStackがデファクトスタンダードになる可能性が大きい。ベンダー、ユーザー企業を合わせて300社以上がOpenStackに投資を行っている。これがいきなり衰退することはまずない。

 ただ現在は幻滅期に移ってきており、今後は淘汰のフェーズに向かうと我々は予想している。企業はフォーキング(プロジェクトの分岐)や大幅な機能変更、突然のプロジェクトの停止などに気を付けておく必要がある。

■サーバ自動化:サーバなどの変更頻度や変更件数が多い場面で有効

 4つめが、サーバ(ライフサイクル)自動化で、これは物理/仮想のサーバ環境やクラウド環境において、ソフトウェアを中心とする構成の変更や管理を自動化するテクノロジーやツールを指すものだ。

 有名なツールとしては、ChefやPuppet、レッドハットに買収されたAnsible、Itamaeなどが挙げられるが、これらも今は幻滅期で、今後さらに改良が進んでいくものと見られる。

 企業へのインパクトとしては、特にサーバの運用管理において、自動化によるスピードの向上と人的ミスの低減が一番大きい。特にサーバやアプリケーションの変更頻度や変更件数が多い場面で、ぜひ検証をスタートさせていただきたい。

■Linux:開発の方向性が2極化、分けて考える必要がある

 そして5つめのトレンドが、Linuxだ。今さらLinuxと思われるかもしれないが、実は今、Linuxの開発の方向性は2極化している。

 これまでLinuxはUNIXの代替品として発展してきた。代表的な製品としては、Red HatやSUSEなどが挙げられる。これが従来のLinuxの方向性で、いわばコスト低減のためのOS選択、つまりはモード1型のLinuxだ。

 しかしここに来て、マイクロサービスアーキテクチャやビジネスニーズ、多様性、スケール、スピードに応えるための軽量版のOSが登場してきた。これをガートナーではマイクロOSと呼んでいるが、このマイクロOSを実装することで、企業はシステムの柔軟性やスピードを高めることが可能となる。これがLinuxの新たな方向性で、次世代ワークロードを担うOSとしてのモード2型のLinuxだ。

 ユーザーニーズに応じてLinuxも新たな発展段階へと向かっている。一口にLinuxと言っても、これからは分けて考えていく必要がある。

【次ページ】使えるOSSと使ってはいけないOSSをどう見分ければよいのか

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