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2017年02月07日

IHI村野氏「AIは必須」、自動倉庫やスマートファクトリーにどう取り組むのか

製品の稼働状況を監視するグループ共通のリモートメンテナンスプラットフォーム「ILIPS(IHI group Lifecycle Partner System)」により「製品・サービスの高度化」「ものづくり高度化」に取り組むIHI。前編に続き、後編ではIHI 高度情報マネジメント統括本部長 執行役員の村野 幸哉氏に、同社のIoTの取り組みを通じて得られた価値を、今後のビジネスにどのように生かしていくのかについて聞いた。

(聞き手はビジネス+IT編集部 松尾慎司)

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IHI
高度情報マネジメント統括本部長 執行役員
村野 幸哉 氏


汎用ボイラや真空浸炭炉、自動倉庫における3つのIoT活用事例

──ILIPSを活用した「製品・サービスの高度化」について、他にも事例があれば教えてください。

村野氏:3つのケースをご紹介します。1つ目は汎用ボイラの稼働データを活用した保守サービスの高度化です。汎用ボイラはご利用いただいているお客さまが多く、サービスマンがきめ細かくお客さまのところを回りきれずにサービスが手薄になっている課題がありました。

 そこで、まずはお客さまとの関係強化を主眼に、装置から警報が発生すると自動でサービスマンの携帯電話に通知し、故障復旧への対応を早く行う。さらに、運転状況をレポートとして見える化して提出し、効率的な運転のポイントをアドバイスするサービスを試行しています。

 2つ目は、真空浸炭炉の保全です。真空浸炭炉とは、低炭素鋼の表面を熱処理し、硬さや耐摩耗性を向上させる装置で、自動車部品メーカーで多く使われています。

 炉そのものの稼働データを見ると、ほとんどトラブルや壊れることがないのですが、お客さまは「要求される品質を保って熱処理ができているか」という点を気にされています。特に、自動車産業は大きなサプライチェーンで動いているため、自社の品質がサプライチェーン全体に大きな影響を及ぼすのです。

 そこで、炉の稼働状況だけでなく、製品品質を可視化する仕組みをお客さまと一緒に開発し、試運用を通じて、炉の真空度が変わると品質に影響を及ぼすことが分かってきました。

 3つ目は自動倉庫の取り組みです。自動倉庫にはセンサーがついていて、異常があればアラームで知らせてくれますが、これまではどこかが故障しているという情報だけで、故障の真の原因が何かという特定は、サービスマンの経験に依存していました。

 そこで、センサーデータから過去の出動履歴やアラーム履歴を抽出し、傾向を分析することで、このアラームが出たときはこの故障がこれくらいの確率で起きるという故障予測に役立てています。

 この仕組みは、2015年12月から自動倉庫システム向け保守サービス「IULINK」としてサービス化しており、故障の予兆を把握するとともに、倉庫の稼働状況を可視化して、自動倉庫の運用を効率化する支援サービスとして提供しています。

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自動倉庫システム向け保守サービス(IULINK)

(出典:IHI提供資料)


──IoTでフィジカルな機械とサイバーなシステム要素が融合していきますが、こうした動きはIT企業とものづくり企業の境界が低くなってきていることを意味しているように見えます。

村野氏:IHIでは、今までのところITベンダーに支援をお願いしている部分もありますが、基本的に分析部分は自社でアルゴリズムを開発しています。

 一方、クラウド基盤は、ITベンダーの協力がなくてはならない領域ですし、また、AIの領域は自前だけでカバーすることが難しいので、これからはそれぞれに得意なコア技術のあるITベンダーと協業する機会は増えていくでしょう。

 ただ、大事なことは、技術が分からずに、全部ITベンダーに任せるというのは避けたいということです。協業するにしても、一緒に開発に取り組み、技術を理解してから進めていきたいと考えています。そうでないと、解析手法がブラックボックスになってしまいますし、我々がよくわからないものをお客さまに提供することになりかねないからです。

スマートファクトリーはどう進めるべきか

──海外メーカーを中心に、製造業がビジネスモデルそのものを転換する動きも活発です。

村野氏:我々はプラットフォームをオープン化して外販することは考えていません。あくまでも、自社製品とその周辺のビジネスについて付加価値を提供することを目指しています。

──工場全体のスマート化、スマートファクトリーについてはどのように考えていますか?

村野氏:工場内の人とモノと機械の位置、状態を見える化することで、今の製造プロセスがさらに改善され、リードタイムが短縮していき、最適なラインの配置、人員配置などが可能になっていくでしょう。

 こうした取り組みは、今までは自社工場にとどまってきましたが、最近、お客さまから「IHIの改善の仕組みを提供してもらいたい」というご要望をいただくようになりました。

 工場のスマート化については、お客さまの製造現場に我々の機械があることが前提ですが、我々のプラットフォームを使って工場全体の見える化や、その先の改善までは踏み出せるのではないかと考えています。

 あるお客さまの言葉で心に残ったものがあります。それは、「IHIの機械の稼働状況が見える化するだけでは、我々の利益にはつながらない。どうせやるなら、工場全体の見える化をお願いしたい」というもので、こうしたありがたいお言葉をいただく中で、お客さまと一緒に、できるところから改善に取り組んでいきたいと考えています。

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(クリックで拡大)

IHIのスマートファクトリーへの取り組み

(出典:IHI提供資料)


──スマートファクトリーを実現する上で、IHIだけで完結できない部分を、他社とのパートナーシップでカバーしていくことも必要だということですね。

村野氏:当然ながら、他社とも手をつないでいく方向に進んでいくでしょう。

【次ページ】AIの活用は必須、ウェアラブルやVRにも注目

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