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  • 2017/02/03 掲載

東芝が「解体」、あとにはいったい何が残るのか

次に売却される子会社は?

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経営再建中の東芝が、原子力事業の見直しとメモリー事業の分社化を行う方針を明らかにした。会計問題が表面化して以来、同社は部分的に事業を売却することで何とか持ちこたえてきた。だが、メモリー事業を切り出し、原子力部門を縮小してしまうと、中核に据える事業がなくなってしまう。同社のこれまでのポートフォリオの変遷と今後の見通しについて考えてみたい。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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東芝は今後、何を中核に据える企業となるのか

中核事業のうち一つで問題が発生し、もう一つは分社化が不可避

 東芝は現在、米国の原子力事業で多額の損失を抱えた状況にある。買収した米ウェスチングハウス(WH)社が数千億円の損失を計上する見通しとなっており、場合によっては金額が7,000億円に達するとの報道もある。正確な数字は2月14日までに確定する見込みだが、場合によっては債務超過に陥る可能性も否定できない。

 こうした事態を受けて同社は2017年1月、メモリー事業を会社分割によって分社化する方針を明らかにした。同事業は、社内カンパニーであるストレージ&デバイスソリューション社の一部門となっており、同社の稼ぎ頭である。外部からの資本導入を前提に分社化を進めることで再建資金を捻出する。

 米国の原子力事業については、現在の社内カンパニーであるエネルギーシステムソリューション社から分離し、社長直轄にする方針を明らかにしているが、仮に財務的なメドが付いたとしても事業の大幅な縮小は免れないだろう。

 東芝は2015年に会計上の問題が発覚したことから、社内に第三者委員会を設置した上で検証を進めてきた。その結果、会計処理に「不適切」な部分があったとして経営陣を刷新、2015年12月には「新生東芝アクションプラン」を公表し、会計問題は収束するかに見えた。

 アクションプランでは、システムLSIや映像機器、白物家電、パソコンなどの部門を縮小し、医療機器部門を売却した上で、原子力事業とメモリー事業の2つを中核事業に据える戦略を描いていた。ところが原子力部門で巨額の損失を抱えていることが明らかとなり、その規模が「数千億円」に達する可能性が出てきた。

 会計問題をきっかけに中核事業の見直しを行ったものの、肝心の中核事業において巨額損失が発生し、その穴埋めのためにもうひとつの中核事業を売却せざるを得なくなっているというのが現実だ。

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東芝の事業構造の変遷(後ほど詳解)

分社化されるメモリー事業は東芝最大の収益事業

 今回、分社化の対象となるのは、NAND型フラッシュメモリーと、これを用いたSSD(ソリッドステートドライブ)の事業である。NAND型フラッシュメモリーは、東芝が独自に開発したデータの書き込みと消去が可能な半導体。電源を切ってもデータが消失しないという特徴があり、スマホの記憶媒体やパソコン用のUSBメモリなどに多用されている。

 またフラッシュメモリーを搭載したSSDは、現行のハードディスクドライブよりも高速に読み出しができることから、パソコンやサーバの記憶装置としての需要も高まっている。

 メモリー事業の2015年度における売上高は約8,500億円で、約1,100億円の部門利益を上げている。2015年度における東芝全体の営業利益はマイナスだったことを考えると、唯一の収益事業といっても過言ではない。

 クラウド化の進展でSSDに対する需要は堅調に推移すると予想されており、新会社に出資を希望する企業やファンドは多いだろう。東芝は出資比率を20%以下に抑えたいとしており、この部分がネックになる可能性はあるが、分社化と外部資本の導入は容易に進む可能性が高い。

 だが、虎の子ともいえるメモリー事業を分社化してしまうと、東芝には巨額の損失を抱えた原子力事業が残されることになる。米国原子力事業は、社内カンパニーからは分離し、社長直轄にする方針が示されたが、事業の大幅な縮小は避けられないだろう。仮にメモリー事業の分離と金融機関からの支援によって債務超過を免れたとしても、次に問題となるのは、今後の事業ポートフォリオである。

 同社はこれまで財務状況が悪化するたびに事業を切り売りしてきており、今回の事業売却とリストラが完了すると中核事業が消滅してしまう。場合によっては東芝という企業そのものの存在価値すら問われかねない状況である。

【次ページ】「東芝解体」のあとはいったい何が残るのか

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