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2017年02月02日

デンソー 若林宏之専務が語る、AI活用の画像分析と自動運転への取り組み

クルマの安全性確保、あるいは自動運転を目的に、さまざまなセンサー技術を活用する取り組みが始まっている。デンソー 取締役・専務役員 若林宏之氏は、画像センサー、ミリ波レーダ、LIDAR(Laser Detection and Ranging)、V2Xを組み合わせた「センサーフュージョンが重要になる」と指摘する。このうち、画像センサーについては、DNN(Deep Neural Network)によるAI(人工知能)技術の開発体制も推進しているという。2020年に向けて、デンソーの自動運転への取り組みと開発状況はどの程度進捗しているのか。

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自動車部品メーカーは自動運転時代の台風の目となるか


デンソーが開発中の「運転支援システム」の現状

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 先ごろ開催された「第9回 オートモーティブ ワールド カンファレンス」に登場したデンソー 取締役・専務役員 若林宏之氏は「先進安全技術から新しいモビリティ社会の実現をめざして」をテーマに、同社の関連技術と自動運転の開発状況について解説した。

 世界の交通事故者数は年々増え続けているが、その原因を見ると、たとえばドイツでは路外逸脱による事故が半数以上を占めている。これはアウトバーンといった高速道路を運転することが多く、逸脱事故を起こすと死亡する確率が高いからだ。米国のフリーウェイでも同様に状況だ。ところが日本では、歩行者の死亡が32%と最も高くなっている。

 若林氏は「国内では市街地の歩行者事故や郊外での高齢者事故が多いのが現状だ。そこで我々は、重大事故や軽い事故を回避する“もしもの安全”と、その事故リスクを運転支援によって排除する“いつもの安心”を実現するシステムを開発している。別の言い方をすれば、事故が発生したときの被害を最小限にするのが“もしもの安全”であり、そもそも危険な状況に近づかせないのが“いつもの安心”ということだ」と説明する。

 デンソーでは、人間を対象とした基礎研究から、「人」(HMI: Human Machine Interface)、「クルマ」(走行環境認識・車両運転制御)、「社会・インフラ」(情報通信)につながる総合的な開発を実践している。

 具体的な要素技術として、クルマ前方の100メートル程度では走行環境認識の製品が担当し、さらにその先1キロメートルら10キロメートルついては情報通信の製品が担当することになる。また車内では、HMI製品がドライバーとクルマをつなぐ。

 画像センサー、ミリ波レーダ、LIDAR(Laser Detection and Ranging)、V2Xへのデンソーの取り組みについて若林氏は「これらの要素技術は長所と短所があるため、信頼性を高めるために、それぞれを組み合わせて使う“センサーフュージョン”が重要になる」と説明する。

 たとえば、カメラは物体の認識は可能だが、逆光や見通しの悪い場所では精度が下がる。ミリ波レーダは電波なので天候に左右されないが、分解能(※測定器が判別できる最小の読み取り可能な単位)が低く、物体の種類を見分けにくい。また電波が跳ね返らないものは見えない。一方、LAIDARは分解能が高くて、電波が反射しないものも見える。ただしカメラと同様に、見通しが悪いと性能は落ちる。

 V2Xは、V2VやV2Iなどでクルマと通信するため、見えない情報を先読みできるが、物漂を直接検知しているわけでなく、情報伝達のみだ。そのため、センサーフュージョンが大きなポイントになるわけだ。

画像センサー技術とAIによる認識技術はどこまで進んだのか

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(クリックで拡大)

デンソー
取締役・専務役員
若林 宏之 氏

 では、デンソーの画像センサー技術は現在、どこまで進んでいるのか。まず画像センサー(カメラ)は前方を画像で処理して認識し、クルマや歩行者を検出する。「ハードウェアとして、夜間性能を向上する工夫を凝らしている。それに加えてソフトウェアで実現する画像処理に最先端のAI技術を導入した」(若林氏)。

 たとえば、ハード面では、画像センサーに高感度イメージセンサーを採用し、夜間歩行者の認識を可能にしているという。このセンサーは光量の少ない夜間でも正確に被写体をとらえて撮影できるため、民生品の監視カメラでも使われている。「我々の場合は、クルマに搭載するセンサーなので、耐振動・耐熱性など、車載用としての品質を向上させている」(若林氏)。

 一方、次世代の画像認識システムとしてDNN(Deep Neural Network)の開発体制も推進中だ。「これには、人間の脳の神経回路をモデルとしたアルゴリズムと、大量の学習データ、その学習を行うための計算環境という3つの柱が求められる。そのため自社のみならず、グループ企業や大学などの研究機関とも積極的に連携している。画像センサーにDNNを実装するために、半導体メーカーとハードIPの開発も推進中だ」(若林氏)。

 従来のパターン認識や機械学習では、認識が必要な対象物を人為的に特徴づけ、あらかじめ個々の人やクルマを学習させていた。これに対し、DNNを用いた画像認識では、自ら対象物の特徴を抽出して学習することで、多様な認識と検知精度の向上が可能になる。

「従来までは、道路上の白線認識に留まっていたが、DNNにより走行可能なフリースペースと、走行できないスペースを認識できるようになった。またクルマの後方など、特定の向きの認識だけでなく、どんな角度でもクルマとして対象物をとらえている。さらに歩行者、クルマなどの動きを、形状まで含めて運転シーン全体で予測できるようになったことが大きな成果だ」(若林氏)

【次ページ】ミリ波レーダや画像センサーを使えない環境での対応方法

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