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  • 2017/02/09 掲載

「データアグリゲーション(DA)」とは何か?GEが実践するIoTプラットフォームの価値協創

IDC Japanが解説

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来たるべきデジタルトランスフォーメーションに向け、IDCの鳥巣悠太氏は「2017年、このIoTプラットフォーム上でIoTデータと非IoTのデータが組み合わさる『データアグリゲーション(DA)』が注目される」と語る。IoTのキーワードとなるであろう「データアグリゲーション」を、GEやアクセンチュア、コマツ、東京電力といった企業の事例を交えて紹介しよう。

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子

主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。

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IoTの重要キーワード「データアグリゲーション(DA)」とは何か
(© chombosan – Fotolia)


IoTプラットフォーム同士の連携が進んだ2016年

 今、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(注1)は、業種・分野に関わらず、企業活動のさまざまな部分で進んでいる。社内のIT部門だけでなく、商品の製品開発、製造工程、流通、販売、顧客と企業の関係にまでおよぶ。

(注1)企業が第3のプラットフォーム技術(モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、クラウド、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

 その背景となる技術にIoT、AIシステム、コグニティブコンピューティングなどが上げられるが、まずは直近で最大の武器となるのが「IoTプラットフォーム」だ。

 ここでいうIoTプラットフォームとは、IoTで必要となる汎用的な機能をクラウド基盤上で実現するものだ。

 たとえばIoTのエッジとなるデバイスの認証管理、センサーデータのストリーミング処理、上位レイヤーのアプリケーション開発環境など、さまざまな機能をクラウドで提供することで、ユーザー企業の初期導入コストやサードパーティの開発コストを抑え、簡単かつ迅速な導入を可能にする。

 こうした流れを受けて大手のITベンダー、OT(Operational Technology:運用技術)ベンダーがIoTプラットフォーム市場に参入したのが2015年。続いて2016年に起こったのは、IoTプラットフォーム同士の連携、相互乗り入れである。

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2016年のIoTプラットフォームへの支出額は前年比で約35%増。他のセグメントと比較して群を抜いて非常に高い成長率を見せた

2017年のIoTの重要キーワード「データアグリゲーション」とは

 プラットフォーム同士の連携は、ユーザー企業の視点から見ると便利な一方で、IoTプラットフォーム単体の特徴が見えにくく、どのIoTプラットフォームを使えばよいか選別できないということになる。

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2017年に向け、ベンダーはIoTプラットフォーム単体での差別化が困難に

 今後も注目を集めることは必須のIoTプラットフォームだが、こうした状況を受けてベンダーはこれからどういった取り組みをしていけばよいのだろうか? 

 「2017年、IoTベンダーの競争軸は『IoTプラットフォーム』から『データアグリゲーションプラットフォーム』にシフトする」と語るのは、2017年のIT市場を分析するカンファレンス「Japan Predictions 2017」に登壇した、IDC Japanのコミュニケーションズ シニアマーケット アナリストの鳥巣悠太 氏だ。

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IDC Japan
コミュニケーションズ シニアマーケット アナリスト
鳥巣悠太 氏

 ここでキーになる「データアグリゲーション」とはIDCが用いる造語で、さまざまな分野から収集されるデータを集約・統合し、再利用することを指す。

 IoTでデジタルトランスフォーメーションが促進するということは、企業活動の中で大量のIoTデータ(IoTのクラウドプラットフォームが収集・蓄積・分析するデータ)が発生することになる。

 数多くのセンサーから大量のデータを収集して、そのデータを高度なコグニティブコンピューティング、あるいはAIシステムと組み合わせることで、より精度の高いデータが抽出できる。これは確実にビジネスにおける新たな種であり、現状、各社が参入しつつある。

 しかし、その先だ。その先にはIoTデータとIoT以外の部分で生じるデータを統合し、ときには加工・フィルタリングすることでさらなる付加価値を生む、データアグリゲーションによるビジネスが展開されるはずだ。

 そのノウハウ、ツールをソリューションとして提供することこそが、次なるIoTベンダーの武器になる、ということだ。

GEが取り組む産業別「データアグリゲーション」の事例

 ここでデータアグリゲーションという概念が重要なのは、(もちろん今後2020年に向けてIoTデータは非IoTデータと比べて年間の生成量が2倍のスピードで増えていくと考えられるが)2020年時点ではIoTデータに比べて非IoTデータのほうが2020年時点で10倍多く生成されると推測できるからだ。

 IoTでエッジ側のセンサー類が収集するデータばかり注目されるが、それに加えて、人間が生成する非IoTデータを含めてアグリゲーションすることは新しい価値がつながる。以下では、先行するデータアグリゲーションの事例を見ていこう。

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データアグリゲーションの事例。すでにさまざまな分野でデータアグリゲーションが進んでいる

 まず運輸業の分野では、GEとアクセンチュア、大手航空会社が航空オペレーションの最適化で連携した事例がある。IoTデータとしてさまざまな航空機、センサーが収集するデータに加え、航空機の離発着の時間や空港の混雑状況、天気予報といった、非IoTのさまざまなデータをアグリゲーションすることによって、航空サービス全体を最適化しようという取り組みだ。

 次に資源業では、GEとコマツが鉱山オペレーションで連携する事例がある。GEが持つ鉱山におけるいろいろな発電設備、物流設備から吸い上げたデータに、同様にコマツの持つ鉱山機械から収集したユーザーデータをアグリゲーションすることで鉱山全体をひとまとめにして最適化していくという取り組みだ。昨年頃から急速に進められている。

 そして公共の分野では、GEと東京電力が火力発電設備の発電設備の発電効率化に向けて連携している。ここで扱うのは、当面は東京電力の発電設備のデータだが、将来的にはこのサービスを外販することによって、さまざまな発電事業者のデータをGEのクラウド上にアグリゲーションすることを視野に入れている。それによって、より精度の高い発電設備向けのソリューションを提供しようものだ。

【次ページ】産業特化型/横断型のIoTソリューションがそれぞれ強化される

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