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2017年02月21日

千葉大 野波健蔵教授が語る「空の産業革命」 ドローン物流は実現するか?

小型無人航空機(UAV)は、いまや劇的な変貌を遂げようとしている。ドローンの出現によって「空の産業革命」と言われる時代を迎えたからだ。東京オリンピックを迎える2020年までに、ドローンはどこまで進展するのだろうか。ラスト10マイルをドローンで集荷したり、宅配する新たな時代がついに到来するのか? 千葉大学の野波 健蔵教授が、その道筋と最新ドローン技術について語った。

執筆:フリーライター 井上 猛雄


ドローンが“空の産業革命”と呼ばれる所以

「我々は都市部でドローンを飛行させよう考えている。先進国では少子高齢化が進み、測量・点検・物流といった厳しいフィールドワークで人手が不足する。そこでドローンを活用し、労働力を補おうという社会な背景がある」

 そう語るのは、千葉大学 特別教授 兼 自律制御システム研究所(ACSL) 代表取締役 最高経営責任者の野波 健蔵氏だ。

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千葉大学 特別教授 兼
自律制御システム研究所(ACSL) 代表取締役 最高経営責任者
野波 健蔵氏


 野波氏は、20年以上前から自律飛行の研究を進めてきたドローンのパイオニア的な存在だ。2012年にマルチコプターの研究と普及を促す「ミニサーベイヤーコンソーシアム」の会長に就任し、2013年に千葉大学発ベンチャーとして自律制御システム研究所(以下、ACSL)を立ち上げ、代表取締役 CEOに就任した。

 地上を走る自動車はT型フォードの時代から100年を迎え、もうすぐ自動運転という新しいフェーズに入ろうとしている。一方、空に目を向けると、ライトフライヤーが飛行に成功してから100年が経ち、航空機が当たり前のように飛ぶ時代になった。

「しかし地上から300m以下(実際には干渉空域があるので150m前後)の領域は、まだ手つかずの空白状態になっており、この空間で現在さまざまな分野の利活用が検討されている。それがドローンが“空の産業革命”と呼ばれる所以であり、多くのビジネスが離陸前夜の様相を呈している」(野波氏)

都会の上空を飛ぶドローン、5年〜10年後に実現

 ドローンの主な応用分野には、インフラ点検、空中測量、警備、災害対応などが挙げられるが、数年後に大きな市場に成長すると予想される分野に、物流と宅配がある。昨年、ACSLは産業用プラットフォームを量産化し、年間で百数十機ペースで機体を出荷できるようになった。今年に入って同社は、楽天とUTEC(東京大学エッジキャピタル)から7.2億円の出資を受け、ドローン配送サービスの実験も開始した。

 野波氏は「ドローンの中で最も重要な心臓部がIMU(Inertial Measurement Unit)とオートパイロットだ。これらが発展することで、ドローンがようやく都会の上空を飛べるようになる。安全性や信頼性の確立が求められるため、もう少し時間がかかるが、5年〜10年後に実現するだろう」と自信を見せる。

 2015年ごろまでは、中国のDJI社やフランスのParrot社に代表されるドローンが世界シェアの95%を占め、市場をけん引していった。2016年は、エンターテインメント分野から、産業用途へのターニングポイントになった年だった。

「国交省では測量や橋梁などの点検分野で活用されると考え、『i-Construction』を推進中だ。また農業分野でも産業化される可能性がある。情報を取る、モノを取る(作業する)、物流という流れが進み、やがて2019年頃から、安全地帯に限定し、物流への適用が始まるだろう。さらに法整備後には、人がいる場所で運送・宅配用としてドローンが飛べるようになると思う」(野波氏)

100時間連続駆動やパラシュート…最新ドローンの性能とは?

 ドローン産業の成長分野は多岐にわたる。最も大きく伸びそうなところは、機体製造メーカーよりも、ドローンを利用したソリューション関係の産業だ。バッテリなどの消耗品、定期的なメンテナンス、パイロットなどの人材育成、ドローン保険などが挙げられる。

 そのような中で、2016年11月にACSLは新しい純国産ミニサーべイヤー「ACSL‐06PF1」をリリースした。この機体の特徴は、まず圧倒的な飛行性能を実現するオリジナルの新しい「オートパイロット2」を搭載している点だ。

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楽天と共同の配送サービスで使われた新型機「天空」(てんくう)。最新のミニサーべイヤー「ACSL‐06PF1」をベースにしてるという

(出典:東京圏国家戦略特別区域会議 千葉市ドローン宅配等分科会第2回資料)


「ドローンは機体が小さいので、どうしても風の影響を受けてしまう。そこで独自のモデルベース理論を確立し、非線形制御を行って、安定飛行を実現している。最高速度30m/sに耐えるモノコックフレーム構造で、信頼性と使い勝手を重視した設計を行った。また方位誤差自動修正、ゴーホーム機能に加え、完全自律飛行をサポートする基地局側のグラウンドステーションもしっかりと構築している」(野波氏)

 有線給電で100時間の連続駆動が行え、国産リチウムイオンバッテリも開発。都会の空を飛ぶために、センサで加速度を検知し、パラシュートが自動的に開く。落下速度は5m/sほどで、ソフトランディングで機体も壊れない。さらにACSLでは安全性と信頼性を高めていく方針だ。

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安全性を考慮し、万が一墜落してもセンサで加速度を検知し、パラシュートが自動的に開く仕組み。ソフトランディングで機体も壊れない

(出典:東京圏国家戦略特別区域会議 千葉市ドローン宅配等分科会第2回資料)


 地上局で使われるグラウンドステーションも、ウェイポイント、高度・飛行速度・カーブのスムーズな連続的飛行などを設定し、フライトの軌道計画をつくれる。

「それらのデータをドローンに転送する。飛行時には自動離陸が可能で、プログラム飛行を行うため、手元の操縦用プロポはバックアップ用に持っている。今後はプロポはなくなり、すべてスマホなどのモバイルで動くようになるだろう」(野波氏)

【次ページ】 いよいよ見えてきた「ドローン物流」、最新の実証実験の成果とは?

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