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  • 2017/03/28 掲載

日本の保険業界、6割が「顧客体験をきちんと定義できていない」危険性

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日本の消費者は保険に複数の不満があり、その一方で保険会社の大半は業務変革に消極的――。最近PwCが行ったサーベイではこのような結果が導き出された。このままでは、日本の保険業界はデジタル化時代の競争に取り残されてしまいかねない。デジタルを活用して消費者の課題を解決し、優れた顧客体験を提供するためには何をすべきなのか。PwCコンサルティング 金融サービスチームがデジタル変革の重要性を説いた。

執筆:フリーランスライター 吉田育代

執筆:フリーランスライター 吉田育代

企業情報システムや学生プログラミングコンテストなど、主にIT分野で活動を行っているライター。著書に「日本オラクル伝」(ソフトバンクパブリッシング)、「バックヤードの戦士たち―ソニーe調達プロジェクト激動の一一〇〇日 」(ソフトバンクパブリッシング)、「まるごと図解 最新ASPがわかる」(技術評論社)、「データベース 新たな選択肢―リレーショナルがすべてじゃない」(共著、英治出版)がある。全国高等専門学校プログラミングコンテスト審査員。趣味は語学。英語と韓国語に加えて、今はカンボジア語を学習中。

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日本の保険業界動向をPwCが解説
(© aza – Fotolia)


情報収集から保険金請求まで…消費者が保険に感じる不満

 「日本の消費者は、保険に関してさまざまなフラストレーションを抱いている。最近、PwCが行った消費者調査の結果をまとめるとこのような結論になる」と語るのが、PwC Japan主催セミナーに登壇したPwCコンサルティング 金融サービス部門 ディレクター 森誠一郎 氏だ。

 日本の消費者は、保険に対して具体的にどのような不満を抱いているというのだろうか。

 まずは、保険商品に関する情報収集に関する不満である。インターネット時代においては、消費者は情報過多の状態に陥ってしまい、「どの保険会社を信じていいかわからない」「どの情報を信じていいかわからない」と感じているようだ。

 森氏は「ここには、保険会社が顧客と信頼関係を構築する上での難しさがある」と語る。顧客と接する営業担当者や募集人には、売り上げのプレッシャーがかかる。

 まったく中立の立場から情報を提供できているか。これは保険会社が単独でコントロールできる問題ではないというわけだ。

 2つめは、加入段階の不満である。すすめられて保険に加入したものの、実際に自分に合った保険だったのかという点に関して、消費者はいまひとつ納得しきれていないという。

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PwCコンサルティング
金融サービス部門
ディレクター
森誠一郎 氏

「保険会社には『お客さまは正しい商品を選択されました』とはっきり言えるような、保険選択の透明性が求められています。また、保険加入の手続きが面倒であることも、消費者が不満に思っていることの一つです」(森氏)

 そして3つめは、保険金請求時の不満だ。このプロセスでは何よりも、「速やかなオペレーション」が要求されていることは想像に難くないが、これに不満を感じているという。

消費者が保険に求めるニーズは確実にシフトしている

 また、保険に求められる要件も確実にシフトしている。消費者は、何か起こったあとの金銭的な補償から、リスクを予防するソリューションやリスクを回避するための処方せんを保険に求めるようになっている。

 個別に見ていくと、生命保険分野では自分に合ったサービスを受けたいという要望が高い。一方で損害保険分野では、センサーデバイスを使ったソリューションが注目を集めている。事故が起きないようにするのはもちろん、起きたとしてもそれを最小化するというニーズにいち早く応えられる保険会社が選ばれると言えるだろう。

「顧客が興味を持っているのはリスクを回避可能なソリューションです。また、カスタマーサービスはシンプル、かつ透明性が重要です」(森氏)

 まとめると、現代の消費者は「今の保険は複雑すぎる。ほんとうに自分にぴったりの保険をかけられるのであれば、生活習慣や健康状態といった情報を提供してもかまわない」と感じている状況なのだ。

フィンテック、インシュアテックを様子見する保険業界

 こうした課題を解決し、デジタル化時代の競争に勝っていくために何が重要なのか。森氏は「FinTech(フィンテック)、InsurTech(インシュアテック)を活用しながら新しい能力を獲得していく必要がある」と警鐘を鳴らす。

 日本の保険会社は、こうしたテクノロジー活用、いわゆるフィンテック、インシュアテックをどのようにとらえているのか。最近PwCが行ったDigital FinTech活用調査の結果を発表したのは、PwCコンサルティング 金融サービス部門 シニアマネージャー 久保康 氏だ。

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PwCコンサルティング
金融サービス部門
シニアマネージャー
久保康 氏

 まずフィンテック、インシュアテックについての印象だが、この領域で出現したベンチャーについて、「競争上脅威である」という回答が1/3、「ビジネスモデルに破壊的な影響を与える」という回答が1/3を記録した。それを久保氏は「若干警戒心を抱かれているようです」と分析する。

【次ページ】顧客体験を定義できていない保険会社が6割

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