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  • 2017/03/30 掲載

3Dプリントされたクルマはいつ「空を飛ぶ」のか? 自動車業界を破壊する企業が登場

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3Dプリントがものづくりを変えると言われて久しいが、いよいよ本格化していくことになりそうだ。中でも変化の波にさらされそうなのが、今や日本の「お家芸」ともいえる自動車業界である。とはいえ、EV(電気自動車)はガソリン車両よりも部品数が少ないため市場に参入しやすいと言われていたものの、実際のところテスラ以外は死屍累々。ものづくりの難しさを見せつけた。しかし、ここにきてある企業が自動車業界の常識を完全に破壊する動きを見せている。

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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空飛ぶクルマがそろそろ登場するかもしれない
(出典:エアバス)


3Dプリントカーから自動運転、さらに空飛ぶクルマへ

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ローカル・モーターズ
CEO
ジェイ・ロジャーズ氏
(写真:筆者撮影)

 世界初の3Dプリントによるクルマを製作した、米アリゾナ州のローカル・モーターズ社。2014年に3Dプリントカーが発表された当時は世間の反応も微妙だったが、その後同社は急成長を遂げ、現在米国内に2箇所、ドイツに1箇所の拠点を持ち、3Dプリントカーから自動運転車両、そして空飛ぶクルマ「フライングカー」へと次々にビジネスを広げている。

 ローカル・モーターズの特徴は、何と言っても「クラウド・ソーシング」にある。最初に会社を設立する際にもクラウド・ファンディングが使われ、広くインターネットを通した資金集めが行われた。その後のクルマの設計、デザインでは同様にオープンソースで世界中からの知恵を集め、形作られていった。

 同社CEOジェイ・ロジャーズ氏はこの手法について「他の自動車メーカーと比較して、最初のコンセプト立ち上げから実際のクルマの製作までの日数が圧倒的に短く、コストは大幅に少なく、それでいて3万人以上という世界中の優秀な頭脳が集積している」と語る。

 また3Dプリンターを使うことにより、ローカル・モーターズは大規模な工場を必要としない。同社では「マイクロ・ファクトリー」と呼ぶ小さな工場内でデザインからプリントまでを行う。

クルマ1台が44時間で「プリントアウト」される

 必要なものは工業用3Dプリンターとモーターその他の部品を組み合わせる作業スペースのみ。このマイクロ・ファクトリーは工場とショールームを兼ねており、顧客は注文した自分のクルマが3Dプリンターによりプリントアウトされていく様子をファクトリー内で見ることができる。同社は全米の各地にこうしたファクトリーを設置し、顧客への直接販売を目指す。

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3Dプリンタで作られた最初のクルマ「Strati」
(出典:ローカル・モーターズ)

 同社が販売している3Dプリントカー「ストラティ(Strati)」は44時間でプリントアウトされる。その後EV用のコンポーネントなどを組み込んで完成する。

 EVコンポーネントはルノー社の「Twizy」のものが使用されており、全重量1800ポンド(約816キログラム)のうち1100ポンド(約500キログラム)が3Dプリントによるものだ。

 2シーターでオープントップ、時速は最高で40マイル程度、と高速道路の走行などには向かないが、日常生活には十分なスペック。価格も現時点では3万ドル(334万円)程度かかるが、ロジャーズ氏は「多くのマイクロファクトリーができてスケールメリットが生まれれば、7000ドル(78万円)程度での販売も可能になる」と語る。

IBMのAI、Watsonと連携した自動運転バス

 しかしローカル・モーターズが現在注目を集めているのは、このストラティのためばかりではない。昨年同社は3Dプリントによる自動運転バス、「オリー(olli)」を発表。今年中にもワシントンDC、ラスベガスでの実用が目指されている。

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3Dプリントによる自動運転バス「オリー」
(写真:筆者撮影)


連載一覧
 オリーは少人数向けの乗合バスで、最高時速は20マイル(32キロメートル)。ネバダ大学工学部との共同開発が行われ、同大学構内での巡回バスとしての導入が予定されている。

 オリーにはIBM社のAI、ワトソンのコグニティブ・コンピュータが搭載され、「乗員とコミュニケーションの取れる乗り物」としても注目される。オリーに乗り込み、たとえば「今日の天気はこれからどうなる?」といった会話をバスと乗客が交わすことも可能だ。行き先を告げるとオリーが自動的に目的地に向かう。

 現在米国、そして世界中で自動運転車両の路上実験が行われているが、オリーの場合最高速度が20マイルと低速であること、大学構内など利用場所が限られていることから、すぐにでも導入が可能となる。

 またワシントンDCでの導入実験でも、市街地の特定の場所での巡回バスのような目的の限られた利用法であれば、一般の自動運転とは異なり数年内に実用認可が下りる可能性が高い。

 もちろん将来的にはスマホアプリで呼び出し、希望地点まで顧客を運ぶ自動運転タクシー的な利用法も視野に入っている。現時点ではオリーはドイツ、ベルリンのEUREFビジネスパークで試用運転中だ。

【次ページ】有人飛行に耐えるドローン「空飛ぶクルマ」を開発

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