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2017年03月30日

日本キャタピラーに聞く、建設業界のICT化に「IoTデータ」だけでは不十分なワケ

土木、建設業界は、長らく技術革新のなかった業界と言われてきた。さらに、技能労働者の高齢化と人手不足も深刻化している。そこで国土交通省は建設現場の生産性向上を目指す「i-Construction」を提唱し、これによって建設業界は大きな変革を迎えている。こうした中、建設機械(建機)の世界シェアトップを誇る米キャタピラーが発表したのが「CAT CONNECT SOLUTION」である。これは、IoTを活用して建機の故障を事前に予知したり、建設現場で効率的なオペレーションを実行したりすることを支援するサービスだ。日本国内で米キャタピラー製品の販売・管理といった役割を担う日本キャタピラーに、同社が推進する建設現場におけるIoT、ICT化の取り組みについて話を聞いた。

執筆:フリーライター 井上健語

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世界トップシェアの建機メーカー、キャタピラーが描く「IoT戦略」とは



建設業界が抱えるさまざまな課題

 日本の建設投資額は1992年のピーク時に約84兆円だったのが、2015年には約48兆円と約半分に落ち込んだ。

 また、これまで大きな技術革新もなく、現場の作業員一人あたりの生産性も大きく向上しているわけでもない。一方で、技能労働者の高齢化と人手不足は深刻だ。

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(クリックで拡大)

建設投資の状況

(出典:国土交通省)


 近年、あらゆる製造業で「ICT」や「IoT」といったキーワードがさかんに叫ばれている。建機業界においても2015年11月、国土交通省が主導する「i-Construction(注1)」という取り組みが発表された。

 その背景には、ICTやIoTを活用して作業員一人一人の生産性を上げていかなければならないという、建設業界の深刻な状況があることは言うまでもない。

(注1)建設現場の生産性向上を目指して、建設工事における測量、設計・施工計画、施工、検査の一連の工程において、3次元データなどを活用する取り組み

日本キャタピラーが取り組む「建設現場のICT化」

 こうしたキーワードが注目される以前から「建設現場のICT化」に取り組んできたのが、世界トップシェアの建設機械メーカーとして知られる米キャタピラーだ。

 同社が製造した製品は、世界各国に存在するディーラーが各地域にフィットするようにローカライズした上で販売されている。

 日本国内においてこの役割を担っているのが、日本キャタピラーだ。同社では、米キャタピラーが立案した戦略を国内で展開するとともに、同社が開発・提供するツールやサービスを活用して販売・保守サポートを行っている。

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 建機のモニタリングサービスとして、同社は「機械管理」「施工管理」「生産管理」「安全管理」の4つを提供している。日本キャタピラー プロダクトサポート事業部 カスタマーソリューショングループ グループマネージャー 羽鳥永之助 氏は、4つのサービスについて次のように説明する。

「『機械管理』は、建設機械の情報を収集・分析してメンテナンスや修理に活かすもので、『生産管理』は燃料消費や稼働時間などを管理して現場の生産効率を向上させるものです。

 そして、国土交通省が発表したi-Constructionに則った施工を実現するのが『施工管理』であり、機械や現場の安全性をITで支援する取り組みが『安全管理』です」(羽鳥氏)

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日本キャタピラー
プロダクトサポート事業部
カスタマーソリューショングループ
グループマネージャー
羽鳥永之助 氏


 これらは以前までは個別で顧客に提供されていたが、日本では2016年4月から「CAT CONNECT SOLUTIONS」として、ワンストップでの提供が開始された。ワンストップでの提供を実現するために欠かせないのが、「Product Link」と「VisionLink」という2つの仕組みだ。

「Product Linkは、車両のセンサーから情報を収集する仕組みです。車両の稼働情報、位置情報などの基本的な情報はProduct Linkによって集約され、クラウドサービスであるVisionLinkに渡されます。VisionLinkは米Trimbleと米キャタピラーで共同開発されたもので、ダッシュボードや施工管理などの機能を持ち、集約された情報を分析してビジュアルに表示する仕組みを提供します」(羽鳥氏)

建機の状態をモニタリングするための「5つの重要情報」

 4つのサービスを提供するために日本キャタピラーが2015年11月に開設したのが、建機業界では日本初となる新施設 「コンディション・モニタリング・センター」(以下、CMセンター)である。

 このCMセンターの主な役割は、全国で稼働している約3万台の建機に関する次の5つの情報を集約し、監視することだ。

(1)電子データ:建機のセンサーから収集されたさまざまな電子データ
(2)S・O・S分析:オイル分析のデータ
(3)インスペクション:点検データ
(4)修理歴データ:すべての修理データ
(5)サイトコンディション:機械が使われている現場・環境のデータ

 CMセンターは、これらの5つの情報を総合的に分析し、機械の故障につながる情報を検知することで、故障する前に部品交換などの対策を同社の顧客に対して提案していくのだ。

「一般的な話ですが、壊れる前と壊れた後の建設機械を比較したとき、壊れた後の修理コストは2、3倍高くなります。また、機械を止めておく時間は約8倍も長くなると言われています。壊れる前であれば計画的に止められますが、壊れたあとではそこから修理が必要になるためです。機械が壊れればお客さまの業務が止まり損失が生じてしまいますので、壊れる前に修理できるというメリットは非常に大きいのです」(羽鳥氏)

【次ページ】IoTデータは「重要だが全てではない」

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