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  • 2017/03/31 掲載

テスラ、BMWら海外自動車メーカーの「次世代EV開発戦略とリチウムイオン電池の未来」

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昨今、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)の話題に事欠かないが、これまで先行してきた日本の自動車メーカーを急追し、欧米の自動車メーカーも本格的な攻勢をかけ始めた。EVの航続距離を大幅にアップさせた「i3」「i8」を投入して市場にインパクトを与えたBMW、そして世界最大規模のバッテリー工場「ギガファクトリー」による生産を開始したテスラは、次世代EV(xEV)の「台風の目」となる可能性がある。

フリージャーナリスト 小山 健治

フリージャーナリスト 小山 健治

1961年生まれ。システムエンジニア、編集プロダクションでのディレクターを経て、1994年よりフリーランスのジャーナリスト、コピーライター。企業情報システム、BI、ビッグデータ、IT関連マーケティング、ストレージなどの分野を中心に活動中。著書に、「図解 情報・コンピュータ業界」(東洋経済新報社)、「One to One:インターネット時代の超マーケティング」(IDL)、「CRMからCREへ」(日本能率協会マジメントセンター)などがある。

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2016年9月に発表されたBMWの電気自動車 「新型BMW i3」
(出典:BMW プレスリリース)



航続距離の伸長が次世代EVシフトの原動力に

 欧州の自動車メーカーが近年EVやPHVに注力し始めた背景のひとつには、環境規制の強化という要因がある。欧州では2021年にCO2排出量を走行距離1kmあたり95グラム以下に規制される。2015年の同規制値は120グラムで、わずか6年間で20%を超える削減が求められるのだ。自動車メーカーにとって、もはやEVやPHVに向かう以外に打つ手はないといっても過言ではない。

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独BMW
リサーチ・バッテリー・
テクノロジー
荻原 秀樹 氏
 国際二次電池展(通称、バッテリージャパン)の専門技術セミナー「海外自動車メーカーが語る次世代EVと蓄電池技術 ~メーカー戦略と市場予測~」に登壇した独BMW リサーチ・バッテリー・テクノロジーの荻原 秀樹氏は、環境規制のほか社会の都市化や交通手段に対する人々の意識の変化なども要因に挙げつつ、「リチウムイオン電池の性能向上によって航続距離が実用レベルに伸びたことが、EVやPHVを中心としたxEVシフトの原動力となっている」と語った。

 実際、同社の「i3」はリチウムイオン電池技術の改良により2016年に航続距離390kmを達成。さらに2019年に販売開始を予定している「i5」では航続距離400km超への伸長を目指しており、「今後あらゆるセグメントでxEVのラインナップを強化していく」と、萩原氏は今後の市場を見据えた意気込みを示す。

エネルギー密度向上への戦略として全方位の研究開発を推進

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 もっとも、xEVが市場で販売台数を大きく伸ばせるかどうかは、いかに多くの消費者の支持を得られるかにかかっている。萩原氏はユーザーから見たxEV拡販のための条件を、「購買判断」「体験」「必須要件」の3つの観点から示した。

 まず購買判断において、先述の航続距離もさることながらコストが大きな比重を占めるのは言うまでもない。またユーザーに高品質の体験を提供するためには、低温域も含めた幅広いレンジでの高出力、急速充電、快適な運転環境などを実現する必要がある。そして必須要件となるのが安全性である。

 さらに、そこから見えてくるのがリチウムイオン電池の性能向上に向けた課題である。萩原氏は、「リチウムイオン電池のエネルギー密度向上への戦略として、活物質からバッテリーパック設計まで全方位で研究開発を進めている」と言う。

 たとえばリチウムイオン電池の正極用材料の改良を進めることで、段階的にエネルギー密度を現状から85%向上させることを目指している。そのほか低温域における30%以上の出力性能向上、「10分間で0-80%チャージ」というユーザーのリクエストに応えられる急速充電の実現、電子・機械・化学・機能のあらゆる側面からのバッテリーシステムとしての安全性の確保、エネルギーあたりの価格の低減なども大きなテーマだ。

 将来的なステップとしては全固体電池も選択肢に入ってくることが予想されるが、量産化にいたるまでの道程はまだまだ険しいのが現実だ。それだけに「少なくとも今後10年は、リチウムイオン電池がxEVの中心技術であり続ける」と萩原氏は見ており、「材料開発が成功の鍵を握っている」と語った。

【次ページ】テスラのギガファクトリーの狙い

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