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2017年04月20日

残骨灰に含まれる有価金属を自治体が「換金」、どう扱うのが適切なのか

金歯など火葬場で出る残骨灰に含まれる有価金属を、東京都や名古屋市など一部の地方自治体が換金し、雑収入として予算に繰り入れていることが分かった。遺族の収骨後、残骨灰の所有権が自治体に移るため、有価金属の換金は法的に問題ないとされている。しかし、遺族の中に複雑な感情を抱く人が少なくなく、遺体の一部を換金するのは不遜との声があるのも事実。社会福祉士で葬儀コンサルタントの吉川美津子さんは「個人の尊厳や遺族感情への配慮を念頭に慎重に対応してほしい」と指摘する。

執筆:政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

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残骨灰に含まれる有価金属はどう扱うべきか

(© ayaka_photo – Fotolia)



残骨灰に埋葬された有価金属の扱い

 残骨灰は遺族が収骨後に残った焼骨や灰を指す。東日本は全収骨が多く、遺族がほとんどの遺骨を骨壺に入れて持ち帰るため、火葬場に残る残骨灰が少ない。これに対し、西日本はのど仏など一部の遺骨だけを持ち帰る部分収骨が中心で、多くの残骨灰が残される。

 処理方法は各自治体によってさまざまだが、一部の自治体では有価金属やひつぎに入れられた硬貨が取り出されている。残骨灰に一切、手を触れず、そのまま丁重に供養しているわけではない。

 有価金属が換金されるのは、収骨が終わった段階で残骨灰の所有権が放棄されたと考えられているからだ。1939年の大審院(現在の最高裁判所)判決では、収骨前は遺族に所有権があるとしたものの、収骨後は市町村に所有権が移るとしている。

 残骨灰の中には、故人がつけていた金歯、銀歯、指輪などが粉末状になって含まれている。金、銀、プラチナ、パラジウムで、金塊などに再生されて地金商らに販売される。換金している自治体は大審院の判例を拠り所に自らの所有物とみなしているわけだ。

 有価金属の買取価格は4月15日現在、三菱マテリアル調べで金が1グラム当たり約4,800円、銀が約70円、プラチナが約3,600円。年間の火葬件数が多い自治体だと、相当な量が集まることから、自治体には宝の山と見えるのかもしれない。

名古屋市は有価金属売却でざっと2,000万円の収入

 自治体の中には残骨灰の分別を業者に委託し、いったんすべてを引き取ったあと、有価金属を換金しているところもある。名古屋市がその1つで、毎年、金、銀、プラチナ、パラジウムを合わせて12キロ前後を回収している。

 有価金属の売却で年間に上げる収益は、平均してざっと2,000万円。収益は雑収入として市の予算に組み込んでいる。名古屋市環境薬務課は「業者任せにせず、市自身が処理する今のやり方が最も明瞭ではないか。有価金属を市の収入とすることにも理解を得られると思う」と述べた。

 東京都も同じやり方をしている。残骨灰を引き取った処理業者がその中から有価金属と硬貨を分別し、都に返納している。その有価金属などを都が買取業者に売却している。関東は全収骨で拾い残した分しか残骨灰にならないため、回収量が名古屋市より少ないが、2016年度は640万円余りを都の収入にした。

 東京都公園緑地部は「収骨後の残骨灰は都の財産。遺族の気持ちを考えれば、業者の利益にするより、都の収入に組み込む方が良いのではないか」としている。だが、換金していることは遺族に積極的に公表されていない。質問があれば答える程度だという。

 福岡市は業者が回収した有価金属の売却益を市に納めさせている。福岡市生活衛生課は「年間の収益はここ数年、1,000万〜2,000万円程度で推移している」と語った。

 しかし、自治体による有価金属換金が不遜だとして、売却を取りやめた例もある。北九州市は市民から指摘の声が上がり、1991年度以降換金していない。市の要綱でも「残骨灰は遺体の延長で、敬虔に処理する」と定めている。北九州市保健衛生課は「故人の遺体を金に換えるのは、遺族感情を考えると問題と判断した」と振り返る。

【次ページ】「0円入札」や「1円入札」も常態化

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