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2017年05月09日

連載:「攻めのIT」を成功させる術理

システムインテグレーター(SIer)・ITコンサル・ソリューションベンダーの違いは何か

彼を知り己を知れば百戦殆うからず──敵と味方の情勢をしっかりと把握してさえいれば、何度戦っても敗れることはないということを意味する孫子の兵法書(謀攻篇)の有名な故事ですが、IT導入を外部に委託せざるを得ないユーザー企業にも同じことが言えます。ITベンダーは敵ではありませんが、発注相手について理解を深めることは、システム発注の失敗を回避する上で不可欠な取り組みです。そこで今回はITベンダーの種類やそれぞれの得意分野/苦手分野などについて解説します。

執筆:ウルシステムズ 植田 淳

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同じシステムインテグレータでも得意領域、不得意領域が異なるため「目利き」が必要になる

(© Rawf8 – Fotolia)


実戦で成長するIT技術者

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 システム開発の成否は、プロジェクトを遂行する技術者の能力や資質に大きく左右されます。では、IT技術者の能力や資質は、どのようにして形作られるのでしょうか?

 技術革新が急速に進むIT業界においては、絶えず新しい技術や方法論を学ぶことは不可欠な取り組みです。しかし、実際の開発現場ではマニュアル通りに物事は進むことばかりではありません。

 これは、どのよう業種や職種も同じだと思いますが、筆者は、IT技術者の能力開発には、実務経験を通じて知り得た学びや気づきが、大きな影響を与えていると考えています。

 たとえば、派遣契約で参画しているIT技術者は、元請けの指示・監督のもとに実装作業を中心に行っており、良質なコードを効率的に実装するための技術を修得する機会に恵まれますが、元請けが行っている顧客折衝や計画立案、プロジェクトマネジメント業務などの実務経験や知識を身につける機会は限られます。

 つまり、ITベンダーには企業ごとに実務内容や役割の傾向があり、そこに属するIT技術者が身につける能力や習熟度に大きな影響を及ぼしているのです。したがって、ITベンダーが中心的に行っている作業内容や役割を知ることは、そこに属するIT技術者の得意な作業内容や苦手な役割を知る手がかりになります。

 なお、本稿では、システム発注の相手先企業をITベンダー(ITの提供者)と総称していますが、主な業務内容やサービスの提供形態によって、ITベンダーを分類できます。

売上規模で異なるシステムインテグレータ

 年間売上規模が約11兆円と言われる情報サービス産業は、受託ソフトウェア開発やソフトウェアプロダクト、アウトソーシング型のITサービスなど、業務内容や提供形態によって分類されます。

 中でも最も大きい4割の売上規模を占めるのが、情報システムの受託開発や運用保守を主業務とするシステムインテグレータ(SIer)です。システムインテグレータは成り立ちによって分類でき、それぞれに特徴があると言われています。

 しかし、システムインテグレータの立場からすると過度にその独自性に固執すれば、顧客ニーズや技術トレンドに取り残される恐れがあるため、オープンソースや他社の技術も積極的に取り入れていく必要があり、限られた市場の中で事業拡大を図るには、競合他社が得意とする事業領域に参入する必要があります。

 したがって、成り立ちが異なるシステムインテグレータであっても、同様な実装技術や方法論を採用した提案が行われることも珍しくなく、その独自性は失われつつあると感じています。

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同じシステムインテグレータでもその成り立ちには大きな違いがある


■サービスメニューが充実した大手システムインテグレータ

 その一方で、違いが明らかになるポイントもあります。売上規模による違いです。売上規模が大きければ、技術開発やサービス開発に多くの予算を投資できるでしょう。従業員数が多ければ、大型案件に必要な人材を確保しやすくなります。また、ソフトウェア資源をライブラリやフレームワークとして共通利用することにより、生産性の向上を図ることも可能になります。このようにシステムインテグレーション事業には、スケールメリットが享受できる領域があり、大型M&Aが相次いだ時期もありました。

 中でも大手システムインテグレータに共通しているのは、サービスメニューが非常に充実していることです。広域ネットワーク接続サービス(WAN回線)やデータセンター、自社開発のパッケージソフトウェアや開発ツールなど、豊富な資金力をもとにユーザー企業のシステム構築に必要なさまざまなサービスを提供しています。また、従業員数が多いだけでなく、多数のパートナー企業と取引関係を持ち、大規模開発案件に必要な人材調達力があります。

 しかし、大型プロジェクトの場合は年間売上規模が数千億円を越える大手システムインテグレータでさえ、単独1社で推進することは非常にまれです。大抵は、パートナーと呼ばれる中小規模のシステムインテグレータが傘下に加わります。なお、このときのパートナー企業との発注形態は、主に再委託と派遣契約があります。

■実務経験が豊富な中堅システムインテグレータ

 再委託の場合は、元請けのシステムインテグレータが顧客折衝やプロジェクトマネジメントを担当し、上流工程からパートナー企業に業務委託します。再委託先には、上流工程やプロジェクトマネジメントの実務経験が必要とされるだけでなく、企業として信頼が求められるため、従業員数が数百人規模の事業基盤が安定したシステムインテグレータが選ばれる傾向があります。

 このような中堅システムインテグレータは、大手の下請先として、システム開発全般のノウハウを持つ企業が多く、数億規模のシステム開発であれば、元請けとして案件を遂行することができます。なお、これは筆者の経験則ですが、中堅クラスのシステムインテグレータに属するIT技術者は、特にフルスクラッチ系のシステム開発において、大手と比べて柔軟性が高いと感じる機会が多くあります。

 大手システムインテグレータは従業員数も多いため、部署ごとに特定の業種やソフトウェア(パッケージや開発フレームワーク、開発言語など)に専門化することで、生産性向上やナレッジの蓄積を図ることがよく行われます。

 たとえば、特定の業種やパッケージ導入の専門部署では、特定分野の実務経験や知識が深まりますが、偏りが生じます。中堅システムインテグレータは、特定技術や業種に合わせて、役割を細分化するほどの人数的な余裕がありません。そのため、一人の技術者がさまざまなタイプの案件に携わる機会が多くなることが関係していると考えられます。

■SI産業を支える小規模システムインテグレータ

 派遣契約の場合は、元請けのシステムインテグレータが要件定義や基本設計などの上流工程を中心に行い、下流工程の作業を派遣契約でプロジェクトに参画しているパートナー企業に割り振ります。

 上流工程からパートナーが参画している場合もありますが、あくまで監督責任は元請けのシステムイングレータ主体で行われます。派遣契約で参画している企業は、従業員数が数十人規模の小規模システムインテグレータが多く、中堅システムインテグレータを仲介した三次請けも珍しくありません。

 なお、小規模システムインテグレータは、数千万円以下の比較的小規模なシステム開発をユーザー企業と直接取引で行うことがあります。ただし、億単位のシステム開発案件を元請けで行う機会が限られるため、大規模システムの開発実務やマネジメント経験は少ない傾向があります。

 このようなシステムインテグレーション産業の多重請負構造は、大手ゼネコンを頂点とした建設産業の業界ピラミッドによく例えられますが、「平成27年 情報通信基業基本調査」からも、その実状を読み取ることができます。同上調査からは、売上規模が10億円以下の企業数が6割近くを占めており、システムインテグレーション産業を支える存在であることがよく解ります。

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システムインテグレータの業界ピラミッド

(出典:総務省及び経産省、平成27年情報通信業基本調査(平成27年11月19日発表) 図表5−4 売上高規模別企業数の構成比(主業格付けベース)の受託開発ソフトウェア企業の構成比を参考に作成)


 システムインテグレータに共通しているのは、システム開発を中心とした実務内容が多く、所属するIT技術者もソフトウェア開発やハードウェアに関する知識や実務経験が豊富にあります。システム開発においては、高い品質と生産性が期待できます。その反面、業務改善やITガバナンスの制度設計といった、システム開発と異なる知識や方法論を必要とする作業は苦手とする傾向があります。

 ユーザー企業のシステム開発を担うITベンダーは、システムインテグレータだけではありません。次にあげる企業は、受託開発が主業務ではありませんが、ユーザー企業との直接取引でシステム導入を担っているITベンダーです。

上流に長けたITコンサルティング会社

 ITコンサルティング会社は、IT戦略立案やIT関連ルール整備(ITガバナンス)、システムグランドデザイン策定、システム企画やシステム化計画立案、業務改善設計(BRP)、RFP作成支援、プロジェクトマネジメント支援(PMO)など、システム開発以外のサービスを多く提供しています。

 ITコンサルティング会社には、経営戦略コンサルティングファームからIT業界に参入した企業とシステムインテグレーション事業からコンサルティング事業に事業領域を拡大・シフトした企業の2種類があります。

 どちらにも共通しているのが、IT導入・活用に関する幅広い知見や論理思考力を持ち、さまざまな分析フレームワーク(SWOT、BSCなど)や標準化された知識体系(COBIT、ITIL、XXBOKなど)を駆使した、問題分析や方策立案を得意とする点です。また、他のITベンダーと比べて要員単価は高くなる傾向にあるのも共通しているポイントと言えるでしょう。

 これは筆者の印象ですが、経営戦略コンサルファームが母体となった企業は、業界動向を踏まえた事業戦略などのビジネス指向の分析を得意とし、システムインテグレータが母体となった企業は、豊富なIT導入・活用の知見を活かした提案を得意とする傾向があります。

 いずれにしても、抽象度の高いコンサルティング業務の遂行には、幅広いビジネスとITの知識や論理的な分析・立案能力を必要とし、個人の能力に強く依存するため、担当者によって習熟レベルや修得範囲の差が大きい傾向にあります。

 なお、ITコンサルティング会社は、必ずしも受託開発を行わないという訳ではありません。自社内で開発リソースを抱えていたり、自社の資本が入ったシステムインテグレータやオフショア、ニアショアの開発拠点と業務提携したりすることで、コンサルティングサービスからシステムインテグレーションまでをワンストップで提供している企業も多数存在します。

専門分野に特化したソリューションベンダー

 システムインテグレータやITコンサルティング会社のほか、自社が保有するソフトウェア資産や専門性の高い技術力によって、ユーザー企業の問題解決やユーザーニーズの実現手段を提供するITベンダーがあります。

 標準的な業務プロセスや特定ユースケースに合わせて作られた汎用パッケージソフトウェアを提供するパッケージベンダー、ソフトウェア(SaaS)やシステム基盤(PaaS、IaaS)をサービスとして提供するサービスプロバイダー、先端テクノロジーやニッチ技術を提供する専門性の高いITベンダー、自社では製品開発は行わず、開発元から仕入れたソフトウェア製品を販売する商社のようなITベンダーもあります。本稿では、これらをソリューションベンダーと総称します。

 これらソリューションベンダーに共通しているのは、業務ニーズや特定技術に専門特化している点です。たとえば、パッケージベンダーやサービスプロバイダーは、自社の製品・サービスの活用方法や対象業務に関して、非常に高いノウハウを持っています。会社の規模も大小さまざまですが、売上規模の大きな企業もあります。

 また、先端テクノロジーを提供するITベンダーには、独自技術で差別化を狙った企業があり、最近ではディープラーニングやIoT関連に特化したスタートアップ企業も多く見られます。

【次ページ】それぞれのメリットとデメリット

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