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2017年05月22日

SHIRASAGI(シラサギ) 野原 直一氏に聞く「オープンソースビジネスの王道」とは

野原 直一氏がウェブチップスを創業したのは、2013年のこと。その後、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)として、Ruby on Railsで開発されたWebアプリケーション開発プラットフォーム「SHIRASAGI(シラサギ)」を開発する。その野原氏の胸にあったのは、「OSSビジネスの王道と呼べるモデルを徳島に根付かせたい」という思いだ。野原氏が考える「OSSビジネスの王道」とはどういうものなのか。オープンソースにかける思いを聞いた。

執筆:フリーライター 重森 大

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ウェブチップス 代表取締役社長CEO 野原 直一氏

初めてのOSS開発で経験した「ライセンス感染」という問題

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──まず、野原さんとOSSとの出会いについてお聞かせください。

野原氏:本格的にOSSの開発に携わりはじめたのは、前職の時代です。アイ・ディ・エス(現・サイトブリッジ)で開発した「Joruri」が初めての本格的なOSSでした。Joruriは徳島県庁の依頼を受けて開発した業務システムで、グループウェアやWebメールなど多様で十分な機能を備えていました。

──「OSSビジネスの王道」と呼べるモデルを構築するためにウェブチップスを起業したということは、Joruriでは達成できなかった部分があったということだと思います。どの辺りが足りないとお考えだったのでしょうか。

野原氏:Joruriの開発自体が失敗だったとは思っていません。機能はしっかりしていますし、今も徳島県庁をはじめ全国の自治体で使われています。しかし運用を続けるうちにいくつかの課題を感じたのは確かです。そのひとつが、ライセンス選択の問題でした。JoruriはGPLで公開したのですが、後から振り返るとこれはあまりいい選択ではありませんでした。

 GPLは非常に多くのOSSで採用されているライセンスですが、改良や改変後のプログラムにもGPLが引き継がれるという制約があります。GPLで公開されているプログラムをユーザーが改良、改変した場合や、それらを組み込んで新たなプログラムを開発した場合、それらにもGPLが適用され、誰でも自由に複製、改変、頒布することを許可されます。

 「ライセンス感染」と呼ばれていて、GPLは強制的に制約された自由なライセンスである一方、さまざまなビジネスに利用してもらうには制約が強すぎるとも言われています。そのためGPLがJoruriを担いでビジネスに参入してもらう際のハードルになっていると感じていました。

──ライセンスの違いがそこまでの影響力を持つものなのでしょうか。

野原氏:利用するベンダーにもそれぞれの都合があります。OS、ミドルウェアにOSSを使うだけではなく、用途の限定されるアプリケーションにOSSを採用してビジネスをしている企業はまだまだ少数派。より多くの企業に利用してもらうには、ライセンスによる制約を緩めハードルが低くければ低いほどよいというのが今の状況だと思います。実際のところ、Joruriを一緒に開発してくれるベンダーは皆無でした。

──そうした思いを抱いて起ち上げたウェブチップスでは、開発したソフトウェアにどのようなライセンスを採用しているのでしょうか。

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(クリックで拡大)

シラサギのホームページ

野原氏:ウェブチップスの主力製品は、「SHIRASAGI(シラサギ)」というOSSです。

 CMS、グループウェア、Webメールといったアプリケーションを利用できるだけでなく、Webアプリケーション開発プラットフォームとしても活用できます。これにはMITライセンスを採用しました。

 MITライセンスはGPLとは違い、制約といえるようなものがほとんどありません。誰でも無償で利用できるだけではなく、利用者自身がより気軽に、自由に、改変し、さまざまなビジネスに活用できるのです。

自社製品をOSSとして公開することで認知度向上と連携ベンダー拡大を目指す

──そもそも、なぜ自社で労力をかけて開発した製品を、OSSにして公開するのでしょうか。しかもGPLよりも利用者の自由度が高いMITライセンスを選んだことでウェブチップスにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

野原氏:シラサギはMITライセンスで公開されているので、興味を持った人がダウンロードして勝手に使うことができるうえに、自分の目的に合わせて自由に改変も可能です。そうすると私たち以外のエンジニアもシラサギの開発に参加しやすくなります。ユーザーやエンジニアのコミュニティが形成されやすくなるのです。

 ユーザーの輪が広がれば、シラサギ自体が広告の役割も果たしてくれるようになります。オープンソースで公開していること自体が営業行為につながると言っていいでしょう。シラサギをベースにしたシステムが納品されるだけでシラサギの導入事例になりますし、導入に当たったベンダーがシラサギを改良したり運用したりするうえで弊社との連携が生まれます。

──ユーザーが増えて行くだけではなく、連携するベンダーが増えていくことも重視されているのですね。

野原氏:オープンソースは薄利多売ビジネスです。多くの方に広がり、多くのベンダーと連携していかなければビジネスを拡大していけません。ですから、多くのベンダーと連携していくことはとても重要です。連携したベンダーとの関係性を次第に深めていって、最終的にはシラサギの開発に参加してもらいたいと考えています。アプリケーションの寿命は10年くらいだと思っていますので、5年目までにできるだけ多くの都道府県に連携するベンダーの輪を広げていきたいですね。

【次ページ】初期導入コストの削減だけではないOSS採用のメリット

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